この記事では、助動詞のwillについて扱います。
助動詞のwillには多くの用法がありますが、その中に『習慣』や『習性』を表すものがあります。
そこで浮かび上がってくるのが次のような疑問です。
今回は、この疑問に迫ってみたいと思います。
用語の定義について
はじめに、今回の記事で重要になる用語について確認しておきましょう。
それは、『習慣』と『習性』という用語です。
この記事ではそれぞれ以下のように定義します。
以降、この定義に従ってwillと現在形の『習慣』と『習性』の意味の違いや用法の区別を見ていきます。
will と現在時制の『習慣』の違い
will の表す『習慣』と現在形の表す『習慣』の違いを考えてみましょう。
will の『習慣』の場合
will の表す『習慣』は、主語の性質を記述するため、結果として人物が焦点化されます。
![willの習慣](https://spice-of-englishgrammar.com/wp-content/uploads/2020/08/willの習慣-e1597648208476.png)
現在形の『習慣』の場合
現在形が表す『習慣』では、willの場合と比較すると、動作・行為が焦点化されます。
![現在形の習慣](https://spice-of-englishgrammar.com/wp-content/uploads/2020/08/現在形の習慣-e1597648297478.png)
will と現在時制の『習慣』のまとめ
will と現在時制の『習性』の違い
次に『習性』について見ていきましょう。
![『習慣』と『習性』の定義](https://spice-of-englishgrammar.com/wp-content/uploads/2020/08/『習慣』と『習性』の定義-1-e1597638148802.png)
つまり考えるべきことは、無生物主語に対して用いられる will と現在形の比較になります。
分析に使う例文は以下の通りです。
結論としては
will と現在形のそれぞれが表す『習性』の違いについては、
介入しない場合は現在形が使われる(傾向がある)
と言われています。
もう少し詳しく説明していきます。
will の『習性』の場合
「油は水に浮かぶ」
will を使った場合だと、人間の存在が介入する科学実験などの結果として「油が水に浮く」という現象を示していると解釈が強くなります。
will の『習性』は、「いま試しに水に油を混ぜてみたら、油は水に浮くだろう」という「実験可能性」や「再現可能性」の意味が強調されます。
[参考] 中野 2014: 133
現在形の『習慣』の場合
先ほどのwillは人間の存在が関与することが強調されましたが、現在形では人間の存在が介入しないことになります。
![現在形 油は水に浮く](https://spice-of-englishgrammar.com/wp-content/uploads/2020/08/現在形 油は水に浮く-1.png)
will と現在時制の『習性』のまとめ
応用編
will と現在形の『習性』の区別を知っていると、
「太陽は東から登る」
(×The sun will rise in the east.)
関連記事
助動詞willも現在形も『習慣』を表すということをお話してきましたが、実際には『習慣』の意味を明確に示したい場合は以下のような表現を使います。
- Tom is in the habit of playing baseball on Sundays.
「トムは毎週日曜日に野球をする習慣がある」 - Tom makes it a rule to play baseball on Sundays.
「トムは毎週日曜日に野球をすることにしている」 - Tom makes a point of playing baseball on Sundays.
「トムは毎週日曜日に野球をすることにしている」 - It is custom with Tom to play baseball on Sundays.
「トムは毎週日曜日に野球をするのが習慣になっている」
will と現在時制の違いのまとめ
今回の記事では、will と現在形のそれぞれが表す『習慣』と『習性』の意味の違いや用法の区別について見てきました。
‣willは人物が焦点化、現在形は動作・行為が焦点化される
![『習慣』まとめ](https://spice-of-englishgrammar.com/wp-content/uploads/2020/08/『習慣』まとめ-e1597702705698.png)
‣willは人間の存在が関与し、現在形は人間の存在が関与しない
![](https://spice-of-englishgrammar.com/wp-content/uploads/2020/08/『習性』まとめ-3-e1597703010816.png)
今回の記事は、こちらの書籍を参考に作成しました。英語の助動詞は、この1冊があればかなり深い理解を得られるはずだと思います。
関連コンテンツ
最後に、今回の記事の内容と関連のある記事を紹介します。
この記事は「助動詞シリーズwill」の第3弾になります。
◆助動詞シリーズwill第1弾
【助動詞】法助動詞willの用法とコアイメージ
◆助動詞シリーズwill第2弾
【助動詞】will と be going to の違い
◆助動詞シリーズwill第4弾
【助動詞】will not → won’t になる理由
『そもそもなぜ現在形が習慣を表せるのか?』という記事も作成しています。
➤➤【時制】なぜ現在形は『習慣』を表すのか? -現在形の本質-
今回もご覧いただきありがとうございました。
また次の記事でお会いしましょう。
参考文献
今回の記事を作成するにあたって参考にした文献を載せておきます。
- 安井稔 (1983)『改訂版 英文法総覧』開拓社
- 吉波和彦 他 (2011)『ブレイクスルー総合英語(改訂二版)』美誠社
- 大西泰斗、ポール・マクベイ (2017)『総合英語 FACTBOOK これからの英文法』桐原書店
- 中野清治 (2014)『英語の法助動詞』開拓社
- 井上永幸 他 (2010)『ウィズダム英和辞典』三省堂
コメント
とてもわかりやすい説明ですね。PEUやGrammar in Useを読んでも良く分からない点を明解に、痒いところに手の届くような説明でありがたい限りです。英語を書く事が多いのですが、読んで意味が取れるレベルから一段上の文法知識がないとなかなか自信を持って作文できないので。