当たり前のことを言いますが、過去形というのは過去の内容を表すためのものです。これは英語を習い始めてすぐ習うことです。
それでは、次のことを知っていますか?
今日は、こんなチンプンカンプンに思える内容について見ていきましょう。
もしかして時制の一致や仮定法のこと?
こう思った方、するどいです。頭の中で英文法のネットワークが出来上がっていますね!
しかし今回のケースはこれらではありません。
確かに下記例文のように、時制の一致や仮定法を使うと、「未来のことなのに過去形を使っている」と言えなくはありません。
●時制の一致:
- I thought you were coming tomorrow.
(あなたは明日来ると思っていました。)
→「明日来る」という未来の内容がwere comingで表されている
●仮定法:
- If you came to the party, we would have fun.
(もしあなたがパーティーに来たら、楽しい時間を過ごせるのに。)
→「楽しい時間を過ごす」という未来の内容がwould have ~で表されている
今回ご紹介するのは、紛れもなく「今から見た未来なのに過去形を使っている」というケースです。
こんな場合に未来のことなのに過去形が使われる
結論から言うと、「未来から振り返った一歩手前の未来」の内容は過去形を用いて表します。
次のような場合を考えてみましょう。
想定シーン:
- 太郎と「私」が話をしている
- どうやら太郎は「昼寝」をしたいらしい(この時点で昼寝は未来のこと)
- 「私」は、もしこれから太郎が昼寝をしてしまったら、夜になって太郎は眠れなくなり、昼寝をしたことを後悔するだろうと予想している(この時点でもまだ昼寝はしていない=未来のこと)
ここまでシーンのイメージを掴めているでしょうか?既にこの中に「未来のことなのに過去形」を使って表現される内容が含まれています。
正解は、「昼寝をこれからしたらそれをしてしまったことを後悔するだろう」という部分です。
ここでのポイントは、
- それをしてしまった→実際にはまだ昼寝はしていない=未来のこと
- そのことを後悔するだろう→まだ後悔していない=未来のこと
という「2つの未来の内容」があることです。
それを踏まえて、「昼寝をこれからしたらそれをしてしまったことを後悔するだろう」というのを英語で表すと次のようになります。
- You will regret you did if you take a nap.
これが「未来から振り返った一歩手前の未来」の内容は過去形を用いる、ということです。
他の例分で「未来のことなのに過去形」を理解しよう
次の例文は、よく広告コピーや商品レビューで見かける表現です。
- You will be glad you bought it.
(買ってよかったと思うでしょう。)
→ buy ではなく bought(買うのはこれからなのがポイント)
他にもこんな例文があります。
- You will be proud you did if you work hard.
(一生懸命働けば、それをやったことを誇りに思うでしょう。)
→ did は work hard を受けている(これから一生懸命workする) - You will be happy you did if you start exercising.
(運動を始めたら、それをやってよかったと思うでしょう。)
→ did it は start exercising を指している
この表現の本質は何か?相対的な時間関係
ただ例文を眺めて終わりだとつまらないので、もう一歩踏み込んで考えてみましょう。
和訳を見て気付いたかと思いますが、日本語でも未来のことなのに過去形を使っていますね。
- You will be glad you bought it.
(買ったのをよかったと思うでしょう。)(※)
実は、英語と日本語では同じ「発想」が働いていると考えられます。
それは、「〈基準時〉を未来に置いて、そこから1つ前の時点(未来から見た過去)に過去形を使っている」ということです。
そもそも〈基準時〉とはその名の通り「時間の基準となるタイミング」のことです。
英語では通常は基準時は発話時(離しているその瞬間)となります。その基準時、つまり現在より手前の出来事であれば過去形で、それよりも後の出来事であれば未来の表現(※)を使うということです。
- You will be glad you bought it.
(買ったのをよかったと思うでしょう。)
今回のこの類の表現の場合は、その基準時が「そのイベントが発生した未来」に飛ばされるわけです。
この例文で具体的に言うと「よかったと思う」タイミングに飛ばされます。そしてポイントは、まだ現時点(発話のタイミング)では買っていない(これから買う)のに、飛ばされた未来のタイミングから見れば、それは相対的に手前のイベントとなるわけなので、過去形boughtが使われるということです。
これを踏まえて過去形の定義を再考する
今までの議論を踏まえて過去形を定義するとなると、次のようになるでしょう。
99%ほとんどの場合は、その基準時はこの瞬間現在になるのですが、今回見てきたようにたまに未来に基準時が置かれることがあるということを踏まえれば、このように定義してあげたほうがフレキシブルに説明が可能になりますね。
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