言語学

【認知言語学概論①】認知言語学とは何か?定義と具体例をわかりやすく解説

〈認知言語学〉(Cognitive Linguistics)と聞いて、どんなイメージを思い浮かべるでしょうか?

一見小難しい響きを持っていますが、イラストでシンプルに示すと、次のようになります。

認知言語学とはわかりやすく【図解】

この記事では「認知言語学とは何か?」ということをイラストや具体例を交えながら分かりやすく解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。

今回のテーマ具体例を通して認知言語学を理解する
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定義:認知言語学とはどんな学問か?

最初に〈認知言語学〉の定義を見ておきます。

認知言語学言語の様々な側面を取り上げ、「認知」という角度から分析しようとする言語学のこと
以下ではこの定義を深掘りすることで、認知言語学の特徴を見ていきます。
更に本格的な〈認知言語学〉の概要はこの記事の最後の章で説明しています。まずは簡単な説明をご覧ください。
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認知言語学という用語を分解して考える

手始めに、〈認知言語学〉という用語を見てみましょう。この用語は2つに分解できそうです。

認知言語学 = 認知 + 言語学

つまり、〈認知言語学〉という用語を理解するには、「認知」と「言語学」という2つの用語を詳しく知る必要があることが分かります。

①「認知」とは

「認知」とは何か? 以下のように言われています。

認知五感を通して、人間が身の回りの世界を理解・把握する能力のこと

私たちが見たり聞いたり触ったりして、何かしらを感じたり、思ったする能力のことを「認知」と呼びます。

具体的な「認知」としては、「比較」や「関連付け」、「カテゴリー化」や「一般化」などが挙げられます。

②「言語学」とは

それでは次に『言語学』の定義を考えてみましょう。

【言語学Ⅰ】言語学とはどんな学問か?定義と諸概念をわかりやすく解説でも解説していますが、「言語学」という学問は主に2つの軸を持って成立しています。

言語学言語の様々な側面を、様々な角度(アプローチ)から分析する学問

2つの軸とは「側面」「角度」です。

「言語学」という学問をこのようにシンプルに捉えることが可能ですが、実際は「言語学」はそんなにシンプルではなく、で様々な領域・分野が存在します。

その理由として、

研究する言語の側面が複数あり、その対象へのアプローチも複数あるため、言語学の領域・分野も複数存在する
と言えるでしょう。
例えば、「言語の様々な側面」を「意味における問題」に絞ると、それは〈意味論〉という学問になります。また、「様々なアプローチ」を「時間軸にそって考える」という手法にすれば、それは〈歴史言語学〉という学問になります(有名な例をあげると、語源とか英語の変化の研究などです)。[参考記事]【言語学概論①】言語学のジャンル

極端に言うと、

言語学の分野の数 = 対象になる言語の側面 × アプローチの数

という公式が(理論上は)成り立つはずです。(アプローチを融合組み合わせることもあるので実際はもっと複雑です)

言語学についての詳しい説明はこちら
【言語学Ⅰ】言語学とはどんな学問か?定義と諸概念をわかりやすく解説

「認知」をアプローチとして選んだ「言語学」

ここで、①「認知」と②「言語学」を関連付けてみましょう

さきほど②で「言語学」を次のように定義しました。

言語学言語の様々な側面を、様々な角度(アプローチ)から分析する学問

ここに、①の「認知」を組み込んでみます。「認知」は角度(アプローチ)として機能します。

すなわち、

認知言語学言語の様々な側面を、認知という角度から分析する学問

このように表現することができるでしょう。

「認知」と「言語学」を別々に考えて、そしてそのあと組み合わせてあげれば〈認知言語学〉を理解することが可能です。

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「認知」と「言語学」が融合した理由

ここで、1つの疑問が出てきます。

なぜ「言語学」は1つのアプローチとして「認知」を選んだのか?

例えば言語を研究する時に、「歴史に沿って考える」という方法を選択するのは恐らく納得できると思います。

それでは、なぜ「認知」をアプローチとして選択したのか?

この問いに対して、〈認知言語学〉は次のような回答を与えます。

人間の言語使用は、認知能力と結びついているから

〈認知言語学〉では、私たち人間が言語を使う能力は、人間の認知能力に深く関わっているという立場を取っています。

言語能力と認知能力を一体化して捉える、これが〈認知言語学〉の特徴です。

このことをイラストにしてみました。

イラストの通り、②の「言語使用」は、①の「認知」と深く関わっているのです。

したがって、〈認知言語学〉にはこんな理念があります。

言語は、人間の認知や世界の捉え方を映し出す鏡である

これが〈認知言語学〉の根底に在る考え方です。

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「認知を映し出す」とは?

〈認知言語学〉の理念を説明しましたが、漠然とし過ぎてよく分からない方も多いかと思います。

そこで最後に「言語が認知を反映する」とはどういうことなのか?を具体例を出してご紹介したいと思います。

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具体例

シチュエーション:あなたはレストランでワインを飲んでいます

次のイラストを見てください。

wine

先ほどのワインのイラストです

そこで皆さんに質問です。ワインを飲んでいるというシチュエーションを踏まえてお考えください。

上のイラストを表す言葉は何でしょうか?

おそらく多くの方は次のように言うのではないでしょうか?

「ワインが半分ある」

これに間違いはありません。

しかし、次のようにも言えるはずです。

「ワインが半分しかない」

つまり、同じ状況に対して、少なくとも2つの言語表現が可能なのです。

(1)「ワインが半分ある」
(2)「ワインが半分しかない」

この(1)と(2)の言語の違いは何なのか?

これを分析する手段として、〈認知言語学〉が選んだのが「人間の認知の仕方」だったのです。つまり流れはこうです。

言語学言語の様々な問題を取り上げ、様々な方法を用いて分析する
認知言語学(1)と(2)の意味の違いを取り上げ、人間の認知の仕方を用いて分析する

この流れを踏まえて、以下の2つの意味の違いを考えてみましょう。

(1)「ワインが半分ある」
(2)「ワインが半分しかない」

(1)「ワインが半分ある」

「ワインが半分ある」という言語表現が為された時、人間の認知はどのようになっているのでしょうか?

(1) 「ワインが半分ある」という言葉をイラスト化してみます。

ワインが半分ある

ここで重要なのは、「認知の焦点」です。

イラストを見て分かる通り、(1)の言葉は、残っているワインに認知の焦点が当たっています。

このイメージを残したまま、(2)を見てみましょう。

(2) 「ワインが半分しかない」

(2) 「ワインが半分しかない」という言語表現をイラスト化してみましょう。

ワインが半分しかない

(2)における「認知の焦点」を考えてみると、無くなってしまったワインに認知の焦点が当たっています。

(1)と(2)の比較

以上のことをまとめます。

(1) 「ワインが半分ある」
(2) 「ワインが半分しかない」
ワインが半分ある
ワインが半分しかない

これが言語は人間の認知を映し出すということであり、〈認知言語学〉の根底にある理念です。

認知言語学の書籍紹介

名前の通り認知言語学の入門書として最高最適な1冊です。対象言語は日本語。解説・具体例が丁寧で、各章の最後には理解の定着を図るための確認テストも付随しています。本当に親切丁寧な書籍です。

Amazonレビューで高評価(4.7/5.0)を誇ってる有名・人気な認知言語学の参考書です。こちらも認知言語学の入門書としては外さない1冊としておすすめします。こちらは英語を対象にしています。

認知言語学に関する書籍についてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事を御覧ください。

➤➤ 【書籍紹介】認知言語学を学べる書籍

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全体のまとめ

さて、認知言語学の最も重要な理念をご紹介したところで、認知言語学概論①はこれにて終了です。

具体例を踏まえると、認知言語学がどんなものなのか少しは分かって頂けたでしょうか?

今回のポイントをまとめます。

  • 認知言語学とは、認知というアプローチを用いて言語の問題を分析する言語学
    認知言語学とはわかりやすく【図解】
  • 認知言語学では、言語能力と認知能力を一体化して捉える
  • 『言語は認知を映し出す』という理念を据えている

認知言語学概論はこれからも記事を作成していきます。

認知言語学についても知識を吸収していきたい方は、ぜひ今後もご覧ください。

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認知言語学の更に詳しい説明は以下をお読みください。

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認知言語学のもう少し詳しい説明

最後に〈認知言語学〉について、学問としての歴史や学者などの情報をまとめておきます。

〈認知言語学〉という言語学の分野は、1980年代に ジョージ・レイコフ  (George Lakoff)による Women, Fire, and Dangerous Thingsという書籍、そして ロナルド・ラネカー (Ronald Langacker)による Foundations of Cognitive Linguistics という書籍が出版されたことによって誕生したと言われています。

〈認知言語学〉の特徴は、『人間の言語能力と認知能力を関連付けて扱う』と説明しましたが、これは認知言語学以前の〈生成文法〉という言語学と対立しています。〈生成文法〉とは、1957年に ノーム・チョムスキー (Noam Chomsky) Syntactic Structuresを発表したことに由来すると言われていますが、そんな〈生成文法〉では、『人間には、言語能力だけを司る独立した機能が存在する』としています。 つまり、簡単に言うと、言語能力を認知能力から独立したものとして扱ってきた〈生成文法〉に対して、言語能力を認知能力と関連付けて扱おうとしたのが〈認知言語学〉になります。

厳密に言うと、認知言語学は言語専用の能力を全面的に否定しているわけではありません。そして、逆も然りで、生成文法が人間の言語に認知能力が一切関与しないとしているわけでもありません。あくまで「何を重視するか」の話です。

また、生成文法と認知言語学の立場の違いについて注目すると、得意とする分野(言語の側面)も異なります。

(生成文法や認知言語学の中にも様々な立場が存在するので一概には言えませんが)、生成文法は句や文の構造を扱う〈統辞論〉が得意で、認知言語学はメタファーなどが絡む言葉の意味を扱う〈意味論〉が得意です。

認知言語学は、もともと初代の生成文法に対して批判的だった生成文法の内部派閥(生成意味論)から派生した学問であるため、この点で生成文法と対照的なのは自然なことだと言えるでしょう。

繰り返しになりますが、今日では一口で「生成文法」と言っても無数の理論や考え方が存在するため、常にこの特徴が当てはまるわけではありません。

➤➤ 認知言語学概論シリーズ

参考文献

  • Radden & Dirven (2007), Cognitive English Grammar, John Benjamins.
  • 李在鎬 (2010) 『認知言語学への誘い -意味と文法の世界-』開拓社
  • 西村正樹・野矢茂樹 (2013)『言語学の教室』中公新書
  • 加藤重広 (2019)『言語学講義 -その起源と未来』筑摩書房
  • 李在鎬 (2010) 『認知言語学への誘い -意味と文法の世界-』開拓社
  • 籾山洋介 (2010)『認知言語学入門』研究社

➤➤ 認知言語学の書籍紹介

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コメント

  1. くまもん より:

    面白かったです。

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