言語学

【認知言語学概論⑥】フレーム (メトニミー・フレーム意味論との関連性) について

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この『認知言語学⑥』では、〈フレーム〉について扱います。

〈フレーム〉とは認知言語学にとって非常に重要な考え方で、〈メトニミー〉や〈意味論〉など他の概念分野にも関連性をもっています。

この記事では、〈フレーム〉そのものの理解を深めるとともに、他の諸概念との関連性も取り上げていきたいと思います。

本記事の内容は以下の通りです。

  • フレームの定義
  • フレームの具体例
  • フレームとイメージスキーマの共通点・相違点
  • フレームの有用性
  • フレームに基づく意味分析
  • フレームとメトニミーの関連性

 

それでは本編に入っていきましょう。

今回のテーマ認知言語学における〈スキーマ〉について

 

〈認知言語学〉についての基本情報は、こちらから↓

【認知言語学概論①】認知言語学とは何か

 

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具体例で考えてみる

いきなりですが、以下のような言語表現があったとします。

認知言語学のフレームという概念について具体例で考えてみる

この言葉を聞いた時、私たちは当たり前のように以下のような「情景」を思い浮かべることができます。

「レストラン」という語から、このようなイメージが浮かび出てくるのは、何も特別なことではありません。

しかし、ここに〈フレーム〉という概念が絡んでいるのです。

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フレーム(frame)について

具体例を通して考えてみたところで、本題の〈フレーム〉について見てみましょう。

フレーム日常の経験を一般化することによって獲得した、複数の要素が統合された知識の型のこと

先ほどの「レストラン」の例に戻ると、私たちは「レストラン」という語に関して以下のような知識を日頃の経験から持ち合わせています。

  • レストランに行くと料理が食べられる
  • 料理を食べるためには注文をする
  • 注文したらコックさんが作ってくれる
  • 料理を運んでもらい、食べる
  • 食べたらお金を払う

このような「レストラン」という語に関する「総合的な知識」のことを、「レストランのフレーム」と呼びます。

これらの知識の「順序」も重要であり、〈フレーム〉を形成する1つの土台になっています。

この「レストラン」に関するフレームは、私たちの日頃の経験を通して形成されるものであり、このような知識体系(=フレーム)を有しているからこそ、『レストランに行った』という言語表現だけで、以下のような複合的で厚みのあるイメージを伝えることができるのです。

なんとなく〈フレーム〉に関して分かってもらえたでしょうか?

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フレームの具体例

「レストランのフレーム」を確認したので、他の〈フレーム〉の具体例を通して理解を深めましょう。

トイレのフレーム

「トイレ」に関するフレームは、以下のような行為とその順序で形成されています。

トイレのフレームトイレに入る→排出する→手を洗う→トイレを出る

このように、「トイレのフレーム」には「排出する」という行為が組み込まれているため、あまり想像したくない状況ですが、『トイレもらしちゃった…』と言った場合、「排出物をもらした」という意味で伝達されるわけです。

学校のフレーム

「学校」に関するフレームは、以下のような行為とその順序で形成されています。

学校のフレーム学校に行く→勉強(+その他の活動)をする→学校から帰る

「学校のフレーム」には、「勉強をする」という行為に関する知識が組み込まれています。

そのため、『太郎は、学校の内容を復習する』と言った場合、『学校で勉強した内容を復習する』という意味で伝達されます。

ここまでの具体例で気付いたこと

さて、ここまで「レストラン」「トイレ」「学校」に関するフレームを見てきましたが、いずれの場合も意味伝達において重要な役割を果たしていることが分かりました。

この「フレームと意味の関係性」については、「フレームフレームに基づく意味分析」の箇所で後述するので、頭の片隅に留めておいたください。

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フレームとイメージスキーマの共通点・相違点

ここまで〈フレーム〉について説明してきましたが、認知言語学の中にはこの〈フレーム〉とよく似た考え方があります。

それが〈イメージスキーマ〉というものです。

両者の共通点と相違点を確認する前に、〈イメージスキーマ〉について軽く触れておきます。

イメージスキーマとは

詳しくは『認知言語学⑤』を読んでいただきたいのですが、〈イメージスキーマ〉とは以下のようなものです。

認知言語学 イメージスキーマ

イメージスキーマ日常の経験から抽出される抽象的・一般的な認知図式

〈イメージスキーマ〉の中で有名なものが「容器のイメージスキーマ」です。

容器のイメージスキーマ『容器』のイメージスキーマ

この『容器』のイメージスキーマには、私たちが日常から得た『容器』の性質・特徴が抽象的に集約・反映されています。

『容器』の性質・特徴とは、具体的に以下のようなものです。

  • 容器によって「内側」と「外側」の境界ができる
  • 容器の内側にある内容物は、外側から加えられる力から保護される
  • 容器の内側にある内容物は、容器の境界を突き破って外側に出ることはできない
  • 容器が移動すると、内側の内容物も一緒に移動する
  • (容器の内側の内容物は、外側から目視不可能)

これらの性質・特徴が、「容器のイメージスキーマ」に反映されています。

このように、日常の経験から抽出される抽象的・一般的な認知図式のことを〈イメージスキーマ〉と呼びます。

詳しくは、以下の記事をご覧ください。

➤➤ 【認知言語学概論⑤】イメージスキーマ

この記事の最後にもリンクを貼っておくので、お好きなタイミングでご覧いただけます。

以上で〈イメージスキーマ〉についての簡単な説明は終了です。

フレームとイメージスキーマの共通点・相違点

両者の共通点と相違点は以下の通りです。

○ 共通点

フレーム、イメージスキーマの両者とも、日常の経験を抽象化・一般化することによって獲得(形成)されるという点で共通しています。

そもそもを言えば、〈認知言語学〉という枠組みそのものが経験基盤の理論構築をしているため、そこで展開されるフレームもイメージスキーマも経験に基づくものになるのは当然と言えるでしょう。

話が少し脱線しますが、この認知言語学の経験基盤と逆を行くのが、生成文法の生得主義(言語の生得説)です(厳密には生成文法でも「経験」が一切必要ないと言っているわけではありません)。

相違点

相違点としては、「獲得の仕方」「抽象性(具体性)」が挙げられます。

まず「獲得の仕方」についてですが、

イメージスキーマは、主に外部環境に対する身体作用(五感、特に視覚)を通して形成されるものです。

その一方でフレームは、「レストランに行く」などの社会的活動を通して身につけるものだとされています(社会的活動でも五感は必須ですが、あくまで比重の問題です)。

次に「規模」についてです。

イメージスキーマは、非常に抽象的に一般化された認知図式であり、多くの事例に当てはまります(例えば、「容器のイメージスキーマ」は「財布」や「筆箱」などにも当てはまります)。

それに対してフレームは、より具体的・個別的な知識体系であるため、複数の事例に一般化して当てはめることはできません。

以上が「獲得の仕方」と「抽象性(具体性)」という2つの相違点でした。

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フレームに基づく意味分析

ここまで〈フレーム〉の定義や具体例を見てきましたが、この〈フレーム〉という考え方はどんな有用性を持っているのでしょうか?

〈フレーム〉が効果を発揮するのは、主に意味解釈の場面です。

  1. 言語表現の理解を支えている
  2. 単語の意味を柔軟に定義してくれる
  3. 言語表現を体系的に説明できる

上記の意味解釈に関する〈フレーム〉の有用性を3点を詳しく見てみましょう。

1. 言語表現の理解を支えている

仮に〈フレーム〉という知識が私たちに備わっていなかった場合を想定してみましょう。

その場合、『あそこのレストランは美味しい』というような言語表現の意味を理解することは難しくなります。

というのも、「レストラン」という単語は「食べ物を提供してくれる飲食店」のことであり、その飲食店そのものが「美味しい」ということはありえません。

『あそこのレストランは美味しい』という言語表現の意味を理解できるのは、「レストランに行けば食べ物が食べられる」というレストランのフレームを私たちが有しているからです。

これが〈フレーム〉の有用性の1つです。

2. 単語の意味を柔軟に定義してくれる

第2の有用性は、単語の意味の定義に関するものです。

言語の意味を扱う分野のことを〈意味論〉と言いますが、当然「言語の意味はなにか?どこにあるか?どうやって決まるのか?」といった類の問題が出てきます。

ところで、以下の例文をご覧ください。

例文1風呂が沸いた
例文2トイレを流した
これらの言語表現は〈メトニミー〉と関係があります。詳しくは後述します。

さて、上記の2つの例文における下線部の単語の意味は何でしょうか?

言うまでもなく字義通りに解釈したら、おかしな文になってしまいます。

つまり、「風呂」や「トイレ」という単語は、ここではその単語自体が持っている意味とはことなる意味を帯びています。

このことを踏まえて、〈フレーム〉を通した意味分析では、語の意味を次のように捉えます。

フレームに基づく意味分析単語の意味は絶対的・独立的ではなく、〈フレーム〉の中で与えられ、理解される

すなわち、「風呂」や「トイレ」という語の意味は、「風呂に行けばお湯につかれる」「トイレでは排出物が出る」というそれぞれのフレームにおいて柔軟に規定されると考えます。

この「単語の意味の柔軟性」に関しては、例文を少し工夫することからでも示されます。

例文1′風呂ですっ転んだ
例文2′トイレが混んでいる

上記の2つの例文における下線部の単語の意味は、最初に示した原文の意味と変わっていることがポイントです。

原文を再掲しておきます

例文1風呂が沸いた
例文2トイレを流した

このように、単語の柔軟的・流動的な意味を扱うことができるのが、〈フレーム〉の魅力です。

補足説明

実際にこのような〈フレーム〉に基づいて意味分析を行う立場のことを〈フレーム意味論〉と呼びます。

詳しくは、【意味論①】意味論とは何かをご参照ください。

3. 言語表現を体系的に説明できる

今回紹介する最後の〈フレーム〉の有用です。

言うまでもなく私たちが用いる言語表現は無数です。

しかし、〈フレーム〉を設定すると、それらの間に関係性を持たせ、体系的に括りあげることが可能になります。

ここで、再び「レストランのフレーム」を思い出してください。

レストランに関して我々が持っている知識の総体(フレーム)は以下のように表すことができます。

レストランという語に関するフレーム

ここで、次のような言語表現があったとします。

言語表現Aレストランで会計をしたら、3万円もした

この言語表現において、〈フレーム〉を通した意味分析(=フレーム意味論)では、「レストランフレーム」の一部分にフォーカスしたものだと考えます。

フレームに基づく意味分析1

一方で、次のような言語表現もあったとします。

言語表現Bレストランで3万円の料理を作った

お分かりの通り、この言語表現では、「レストランフレーム」の異なる一部分にフォーカスしています。

フレームに基づく意味分析2

このように、複数の言語表現を、「1つのフレーム内における取り上げる要素の違い」という点で体系的に捉えることが可能になります。

以上が〈フレーム〉の有用性の3つ目「言語表現を体系的に説明できる」でした。

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フレームとメトニミーの関係性

最後に〈フレーム〉について取り上げたいことがあります。

それは〈メトニミー〉との関係性です。

メトニミーとは、次のような言語表現のことを指します。

メトニミーの例文

  • ホワイトハウスは声明を発表した
  • 彼女はお手洗いに行った

上記の2つの例文は、字義通りに解釈するとおかしな意味になります。

「ホワイトハウス」とは「建築物」であり声明を出すことはできませんし、「お手洗い」とは「蛇口で手を洗う」という意味ではありません。

上の2つの例文は、次のような意味として解釈されます。

メトニミー意味解釈

  • アメリカ政権は声明を発表した
  • 彼女はトイレに行った

このようにメトニミーの解釈を、〈フレーム〉の観点から行うことが可能です。

 

すなわち、私たちは「ホワイトハウスに関するフレーム(ホワイトハウスにはアメリカ大統領が在住している)」や「トイレに関するフレーム(トイレに行ったら手を洗う)」を持ち合わせているからです。

このように、〈フレーム〉という考え方は、〈メトニミー〉などの他の概念との関係性を持っているなど、認知言語学の中心的な役割を担っています。

比喩表現について

認知言語学の中でも特に重要な役割を持つ「比喩表現(メタファー・メトニミー・シネクドキ)」については、個別の記事を作成しています。

【認知言語学概論③】比喩(メタファー・メトニミー・シネクドキ)

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全体のまとめ

これにて『認知言語学概論⑥』は終了です。

今回は認知言語学における〈フレーム〉という考え方について見てきました。

今回のポイントです。

  • フレームとは、日常の経験を一般化することによって獲得した、複数の要素が統合された知識の型のこと
  • フレームとイメージスキーマは、「日常の経験を抽象化・一般化する」という点では共通だが、「獲得の仕方」と「抽象性(or具体性)の度合い」の点では異なる。
  • フレームは、意味分析に効果的である(フレーム意味論)
  • フレームは、メトニミーの解釈の1つのアプローチになる

 

当サイトでは、認知言語学のシリーズ記事を作成しています。

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関連記事の再掲

今回の記事の中で紹介した関連記事のリンクをまとめておきます。

合わせてご覧いただけたら幸いです。

 

最後までご覧いただきありがとうございました。
また次の記事でお会いしましょう。

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