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言語学

【言語学Ⅰ】言語学とはどんな学問か?定義と諸概念

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この記事では、「言語学」という学問の説明と諸概念について扱っていきます。

言語学とは、文字通り「言語を研究する学問」なのですが、今回はもう少し突き詰めたお話をしていきたいと思います。

具体的に今回取り上げるトピックは、以下のようなものです。

  • 言語学の定義と意義
  • 「言語」とは何か?
  • 言語学における諸概念
    ➤言語能力と言語運用
    ➤3つの種類の文法
    ➤書き言葉を
    ➤言語の恣意性
    ➤普遍文法

このようなテーマを通して、言語学の全体像を実感していただければ幸いです。

それではさっそく本編に入っていきましょう。

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言語学とはどんな学問か?

言語学を一言で説明するなら、「言語を科学的に研究する学問」です。

言語学に関するほとんどの書籍には、”Linguistics is the scientific  study of languages” という定義付けが書かれています。

具体的な言語学の研究事例として、次のようなトピックがあります。

  • 言語はどのように変化していくか? (歴史言語学)
  • 言語はどのように習得されるか? (言語習得論)
  • 言語はどのように使われているか? (コーパス言語学)

このようなテーマや問いに対して、言語学は科学的な手法を使って向き合います。

「科学的な手法」とは?

ここで「科学的手法」という言葉に注目したいと思いますが、応用編となるので興味がある方はクリックしてご覧ください。

_

言語学は、科学的手法に則ることを目指しています。ここでいう科学的手法とは、「実際に観察された客観的データを基に仮説を提起し、その仮説を検証するために更に多くの観察可能なデータを分析し、仮説の検証・評価・修正を行い、そこで獲得した仮説理論によってより多くの事象を記述・説明できるように目指していく方法(≒仮説演繹法)」のようなものです。言語学の長い歴史を遡ると、「言語学」と「(自然)科学」の関係性は切っても切り離せないものです。要約すると、「自然科学の一員として認められたい言語学と、言語学を自然科学として絶対認めたくないグループの対立」です。最終的には、ノーム・チョムスキーという現代言語学の大御所のような活躍により、(現代)言語学は自然科学の仲間入りをすることに成功します。

よくある言語学に対する誤解

「言語学に対する誤解」という視点を通して、言語学の理解を深めてみたいと思います。

  • 言語学は、たくさんの言語を学ぶ学問である
  • 言語学者は、たくさんの言語を話すことができる
  • 言語学は、「正しい文法」を知ることである

上述したものは、言語学に対する間違った説明・定義です。言語学とは、「たくさんの言語」を学ぶ学問でもなければ、「正しい言葉」を知る学問でもありません。

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そもそも「言語」とは何か?

ここで肝心な「言語」というものについて言及しておきます。

言語学とは、「言語を科学的に研究する学問」と定義付けしても、その中身の「言語」という目的語を明確にしなければ意味がありません。

この記事では言語の絶対的・妥当的な定義を求めることはしませんが、「言語とは何か?」という問に対して、次のような説明・定義を与えることがあります。

  • コミュニケーションのための手段
  • 思考のためのツール
  • 自己表現のためのツール
  • 自己(アイデンティティ)の要
  • 脳内で行われる計算に基づく出力
  • 形と意味による記号体系
  • 社会的制度
  • 歴史的産物
    などなど…

これらの定義・説明は、どの立場や視点から言語を捉えるかによって大きく異なります。繰り返しになりますが、この記事においては正しい定義付けには踏み入りません。

ノーム・チョムスキーの言語観

言語の絶対的な定義を求めることは避けますが、1つの参考としてノーム・チョムスキーという言語学者の言語観を紹介します。彼は現代言語学に「大きな影響」を与えた学者です(「良い影響」か「悪い影響」かは各々の学者の言語観によるので、ここでは「大きな影響」と呼んでおきます)。

そんなチョムスキーは、「言語の機能をコミュニケーションのための手段」という考えに批判的な立場をとっています。なんと彼は、おそらく多くの人が真っ先に思い浮かべるであろう「言語の機能=コミュニケーション」という考えに反対しているのです。

彼によると、言語の本質的な機能は、「内的思考」にあるとしています。この内的思考とは、思考・想像・計画など、頭の中で行われる営みのことです。実際に外在に表出される言語というのは本当に少なく、言語活動のほとんどが脳(もしくは心)という身体の内在で起こっているものと指摘しています。つまり、言語の本質的機能は、コミュニケーションという外在的なものではなく。内在的な思考だと考えています(チョムスキーも言語がコミュニケーションのために用いられることは認めています)。

この考え方は、彼の〈言語の内在主義〉や〈E言語/I言語〉という言語観と関係があります。

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言語学の意義は「人間本性」の解明にある

言語学という学問について一通り見たところで、言語学の意義を考えてみたいと思います。

これまた言語学の意義も1つではありませんが、言語学の意義の1つは「人間本性の解明」とされています。

私達(ヒト)が保有しているような言語を持っている動物は存在しません。私達(ヒト)と他の動物を明確に区別するのは言語であり、言語は人間のあらゆる営みには欠かすことができません。

この人間(ヒト)を人間足らしめている「言語」という観点から、「人間本性」を解明しようとしているのが、他でも無い言語学という学問なのです。

補足説明

もちろん言語学の意義は「人間本性の解明」という1つだけではありません。例えば、外国語教育を豊かにさせることや、自動翻訳の精度を向上させることも、言語学の意義の1つと言えるでしょう。このように言語の定義や言語学の意義が簡単に定まらないのは、言語が私たち人間のあらゆる営みに密接に関連しているからです。
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言語学にはどんな種類・分野があるのか?

言語学のジャンルについては別記事で取り上げています。

➤➤ 【言語学Ⅱ】言語学の分野・種類 (内的言語学~外的言語学)

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言語学における諸概念

ここからは、言語学における重要な諸概念(用語)などを取り上げていきます。具体的な諸概念は以下の通りです。

  • 〈言語能力〉と〈言語運用〉
  • 「文法」という用語
  • 〈規範文法〉と〈記述文法〉
  • 「書き言葉」と「話し言葉」
  • 言語の〈恣意性〉
  • 〈普遍文法〉

1つずつ見ていきましょう。

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言語能力(Linguistic Competence)と言語運用(Linguistic Performance)

この2つの概念は、言語学において非常に重要です。

〈言語能力〉(Linguistic Competence)とは、(母語において)言語表現を産出・理解することを可能とする能力のことを指します。この〈言語能力〉は、無意識的な知識であり、私たちの脳(もしくは心)に存在すると考えられ、同じ言語のネイティブスピーカーは同じ〈言語能力〉を保有しています。

その一方で、〈言語運用〉(Linguistic Performance)とは、言語能力に基づき実際に外在に表出した言語使用のことを指します。この〈言語運用〉とは、例えば話した言葉や書いた言葉などが含まれ、言うまでもありませんが、環境や発話者によって異なって外在化されることがあります。

言語学が対象とするのは言語能力

2つの区分された概念がありますが、言語学(特にチョムスキー言語学に代表される現代言語学)が解明しようとする対象は〈言語能力〉の方です。

「普遍性」というテーマに関心のある現代言語学が、同じ言語のネイティブスピーカー(全ての人間)に共有された〈言語能力〉に興味を持つのも当然です。

しかしながら、ネイティブスピーカーの頭の中に内在している〈言語能力〉を対象にしようとしても、実際に目で確認できるわけではありません。経験主義の影響を色濃く受けた〈アメリカ構造主義言語学〉が、チョムスキーの〈内在主義〉に基づいた言語理論を徹底的に批判した理由がここにあります。

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「文法」という用語

おそらく「文法」という用語を聞くと「学校で習う英語のルール」というようなイメージを思い浮かべるかもしれませんが、言語学における〈文法〉という用語には、少なくとも3つの意味があります。

「文法」という用語

  1. 〈心的文法〉 (Mental Grammar)
  2. 〈規範文法〉(Prescriptive Grammar)
  3. 〈記述文法〉(Descriptive Grammar)

これら3つの用語のうち、〈規範文法〉と〈記述文法〉については章を改めて説明するので、ここではまず「心的文法」を見ていきます。

「心的文法」(Mental Grammar)とは

「文法」という用語が持っている1つ目の意味は、私たち人間が母語に関して持っている言語知識や言語機能のことです。つまり、一般的にイメージする「ルール」や「決まり」といった意味は込められておりません。

例えば、日本語を母語とする人間は、日本語に関する〈心的文法〉を脳内に持っています。そして、ある人が持っている日本語に関する〈心的文法〉は、他の日本語のネイティブスピーカーが持っている心的文法と同一のものです。

というのも、仮に同じ日本語に関する〈心的文法〉が共有されていなければ、相手が話したことを理解できず、意思の疎通が成立しないはずだからです。

「意思の疎通が成立しなかったり、相手が変な間違いをすることだってある」と思う方もいるかもしれませんが、それは同一の〈心的文法〉が共有されていないからではなく、〈言語運用〉の方にエラーが生じたからだと考えます。さらには「難しい語彙を知っている人もいる」と思うかもしれませんが、〈心的文法〉に語彙が全てリストアップとして含まれているわけでもありません。〈心的文法〉に含まれるモノは、後述します。

以上のように、その言語の〈心的文法〉はその言語のネイティブスピーカーに共有されたシステムだと捉えることができます。

〈心的文法〉に含まれるのは3つの側面

〈心的文法〉の具体的な中身は、以下の通りです。

言語学の分類・種類「音声学・音韻論・形態論・統辞論・意味論・語用論」

例えば、

私は、その言語のネイティブスピーカーである
(=その言語の心的文法を持っている)

と言った時、私たちは、その言語の「音」「構造」「意味」に関する知識を有していることを意味します。

そしてそれら3つの側面(音・構造・意味)は、それぞれ2つに下位分類され、合計で6つの分野が存在しています。

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「規範文法」と「記述文法」

もう一度「文法」という用語が持つ3つの意味を確認してみましょう。

「文法」という用語

  1. 〈心的機能〉 (Mental Grammar)
  2. 〈規範文法〉(Prescriptive Grammar)
  3. 〈記述文法〉(Descriptive Grammar)

ここでは、〈規範文法〉と〈記述文法〉について見ていきます。

規範文法(Prescriptive Grammar)とは

〈規範文法〉とは、その話者が従うべき言語のルールを定めた文法のことを指します。

この〈規範文法〉という概念には、その言語の使い方が「正しい/正しくない」という評価が介入してきます。

学校の英語教育や英文法は、まさにこの〈規範文法〉に基づいたものであり、一般的な」「文法」という用語のイメージに最も近い意味を持っています。

記述文法(Descriptive Grammar)とは

その一方で〈記述文法〉とは、実際に使用された言語表現を記述したものを指します。

つまり、言語話者によって発せられた(もしくは記された)「ありのままの言語表現」を観察し、記述することが目標であり、そこには言語が適切に用いられているかどうか評価する余地はありません。

言語学が対象が対象にするのは記述文法

ここまで〈規範文法〉と〈記述文法〉の両方を見てきましたが、言語学ではこれら2つの文法に優先順位が存在します。

すなわち、言語学が対象とするのは〈記述文法〉の方です。

言語学の最大の目標は、人間言語に関する事実をありのままに記述し、そこに働く原理を説明することです。そのために言語学は〈記述文法〉を扱います。

別の言い方をすると、言語学は、「正しい/正しくない」という言語を評価することや、世の中で使われている言語を正しい方向に変えていくことには一切のの関心がありません(言語の文法的容認性を調査することはありますが、それはあくまで言語の事実や原理を解明するための手段です)。

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「書き言葉」と「話し言葉」の区別

〈規範文法〉と〈記述文法〉のように、言語学には他にも対立する概念があります。

それが「書き言葉」と「話し言葉」です。そして、言語学〈規範文法〉よりも〈記述文法〉を優先するように、「書き言葉」と「話し言葉」でも同様に優先順位が存在します。

すなわち、

言語学が重視するのは「話し言葉」の方である

こう考える根拠を見ていきます。

話し言葉は自然に習得される

全ての子供(言語機能や脳に障害をもった子供は除く)は、学校入学前に(少なくとも)1つの言語のネイティブスピーカーになります。彼らは、学校や両親から特別な指導を受けずとも、母語を思いのままに操れるようになるのです。

しかしながら、書き言葉は違います。直接的な書き言葉に関する指導を受けずして、書き言葉を習得できる子供はいません。

このような観点から、書き言葉より話し言葉の方が人間に生得的・生物的に備わった普遍的な能力であると考えられ、言語学では話し言葉を研究の対象に据えています。

世界中の全ての言語学が話し言葉を持っている

日本語を母語とする私たちには想像しにくいかもしれませんが、世界には書き言葉の体系を持たない言語コミュニティが存在します。

SIL International (Ethnologue, Lewis et al. 2015)によると、2015年時点で世界には7100の言語があり、その内の3535もの言語が書き言葉を保有していないと報告されています(すなわち話し言葉しか存在しない)。

言い換えると、この地球上には、「話し言葉は保有していないのに、書き言葉を保有している言語」というのは存在しないのです。

このことからも、我々人間にとって本質的なのは話し言葉であることがわかります。

神経言語学による成果

神経言語学とは、言語使用の際の脳の動きを研究する言語学のことです。

その研究によると、人間が書き言葉を用いるとき、脳の中では、話し言葉を生成するための神経部位が同時に機能していることがわかっています。一方で、一方で、話し言葉を用いるときは、脳の中で独自部位が機能しています。

すなわち、書き言葉は、話し言葉のために用いられる脳機能の一部を借りており、人間の言語能力にとって独自的・本質的なのは話し言葉であると言えます。

考古学による成果

最後の根拠はシンプルですが、考古学によると、歴史的に書き言葉は話し言葉よりも後に誕生し発展してきたことが報告されています。

つまり、昔から人間の言語能力は話し言葉として姿を表しており、本質的な言語能力は話し言葉にあることが分かります。

言語学が話し言葉を対象にする理由4つ

  • 話し言葉は自然に習得されるが、書き言葉は特別な指導が必要だから
  • 世界中の全ての言語学が話し言葉を持っているが、書き言葉を持っていない言語が数多く存在するから
  • 神経言語学によると、書き言葉は話し言葉のための機能の一部を借りていて、独自的・本質的な言語能力は話し言葉の方であるから
  • 考古学によると、書き言葉より話し言葉の方が先に誕生し発展してきたから
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言語の恣意性 (Arbitrainess)

言語の恣意性とは、「音と意味の結び付きは、絶対的かつ必然的なものではなく、社会的慣習によって定められている」という言語の性質のことを指します。

「音と意味の結び付き」という部分は、「ある『語』と、その『語』の指し示す対象物の間の結び付き」とも言い換えることができます。

子供が犬を指して「なんであれは『犬』って言うの?」と質問したとします。その質問に答えようとも、「日本ではあれは『犬』って呼ばれてるから」としか答えようがなく、この時私たちはまさに言語の恣意性に直面しているのです。

言語の恣意性の具体例

例えば、次のようなモノは、日本語では「いえ(ie)」という単語(形式/音)によって表現されます。

言語の恣意性の具体例

しかし、当然のことながら、言語が異なれば、単語(形式)も異なります。

言語語(形式)意味(概念)
English (英語)house言語の恣意性の具体例
French (フランス語)maison
Spanish (スペイン語)casa
German (ドイツ語)haus
Squamish (スコーミッシュ語)lam’
Blackfoot (ブラックフット語)moyís

もし仮に、言語に恣意性がない(=言語に有契性がある)ならば、日本語の「いえ」という単語で指示されるモノ/概念は、どの言語でも全く同じ単語で表現されているはずです。

しかし現実は、(全く同じとは言えないものの)同一の概念は、言語によって違う形式で表現されます。これは、意味概念と形式に絶対的・必然的な繋がりが存在しないからです。

言語に恣意性があるから、言語は変化する

言語は、時代が経つにつれて変化していきます。何も不思議なことではありませんが、これも言語の恣意性に原因があります。仮に、言語に恣意性が無かった場合、言葉は変化することはないでしょう。なぜなら、意味概念と形式(音)の間に絶対的・必然的な繋がりが存在するということは、いつの時代もその両者の結び付きは変わらないからです(絶対性・必然性というのは、揺るぎない不変的な性質です)。

言語の恣意性の反例?「オノマトペ」

言語の〈恣意性〉とセットで必ず話題にあがるのが〈オノマトペ〉(onomatopoeia)です。

例えば、日本語では「光り輝く状態」を「ギラギラ」といった言葉で表現します。

そして英語でも、「光り輝く状態」に関する単語には似た音が組み込まれています。

  • glare:ギラギラする光
  • gleam:かすかな光
  • glimmer:チラチラする光
  • glint:輝き,閃光
  • glisten:きらめく,輝く
  • glitter:輝き,きらめき
  • glitzy:きらびやかな,ギンギラの

このように、「光り輝く状態」という意味概念には「ギラギラ(gl-)」のような音と繋がりがあるのではないか?、「すなわち言語には恣意性がなく、有契性があるのではないか?」というのが〈オノマトペ〉です。

実際にオノマトペは言語の恣意性の反例なのか?

たしかに意味概念と音の繋がりを示しているように思われるオノマトペ(音象徴)ですが、実際のところ「言語には恣意性はない」と主張するには不十分という見解が一般的なようです。数的に見て、音と意味に無関係であるケースが圧倒に多いからです。また有名なものとしては、「音象徴は自然の音の模倣ではなく、文化的なパターンによるもの」というサピアの考えがあります。
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普遍文法 (Universal Grammar)

最後に取り上げるのが、〈普遍文法〉(Universal Grammar)という概念です。

〈普遍文法〉というのは、全ての人間言語に共有されている文法のことを指します(この場合の「文法」は「言語の特性」のようなものをイメージしてください)。

主にチョムスキー言語学(生成言語学・生物言語学)では、言語がどんなに異なって見えても、全ての人間言語には共通する一定の「特性・性質・原理」のようなものが存在すると考えられています。

なぜ普遍文法?普遍文法が唱えられた背景

〈普遍文法〉は「全ての言語に共通する特性」という非常に大きな概念ですが、その背景の1つには「人間の言語習得(成長)」があります。全ての子供は、学校や両親から特別な指導を受けることもなく、驚異的なスピードで言語を習得し使い始めていきます。全ての子供が質的にも量的にも乏しいデータ(一次言語資料)だけを頼りに短期間で母語を獲得することができるのは、生まれながらにして彼らの脳の中に「全ての言語に共通する基盤」がインプットされているから、と考えます。つまり、全ての人間には全ての言語に共通する基盤が生得的に組み込まれているため、ゼロから全てを覚える必要はなく、限られた言語データだけを頼りに短期間で母語を獲得(成長)することができるのです。(「成長」という言葉を使うのは、「既にあるもの(=普遍文法)を育てる」という意味合いだからです。「獲得」は「無いものを手に入れる」という意味を持つため、普遍文法を語る際は「言語成長」という用語を使うのが一般的です)

全ての言語に共通する特性とは?

〈普遍文法〉の中身-全ての言語に共通する特性-は何でしょうか?最も有名なものを1つ紹介すると、〈再帰性〉が挙げられます。〈再帰性〉とは、接続詞や形容詞などを使うことで永遠に文を続けることができる性質のことです。(これは理屈上の話で、時間、人間の調音器官、記憶力などは無視しています)。この〈再帰性〉というのはチョムスキーの言語理論には重要な概念です。(チョムスキーが主張する〈再帰性〉への反例としてピダハン語という言語(ピダハン語には再帰が存在しないという主張)が挙げられることがあり、更にそれに対するチョムスキーの反論もあるのですが、ここでは割愛します)
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全体のまとめ

今回の記事はこれにて終了です。

今回は、言語学という学問の定義や意義、そして重要な諸概念を見てきました。誰しもが知っていて毎日使っている言語ですが、それを対象とする言語学という学問の奥深さや面白さをお伝えできていたら嬉しい限りです。

今回のポイントです。

  • 言語学とは、「言語を科学的に研究する学問」である。
  • 言語学の意義の1つは、「人間本性の解明」にある
  • 「言語とは何か?」という問いには複数の答えが立てられる
  • 言語学では、〈言語能力〉と〈言語運用〉という2つの区別があり、言語学の対象は〈言語能力〉の方である。
  • 〈規範文法〉と〈記述文法〉という区別があり、言語学の対象は〈記述文法〉の方である。
    「規範文法」
    ➤その話者が従うべき言語のルールを定めた文法のこと
    「記述文法」
    ➤実際に使用された言語表現を記述したものを
  • 言語の〈恣意性〉とは、「音と意味の結び付きは、絶対的かつ必然的なものではなく、社会的慣習によって定められている」という言語の性質のこと
  • 〈普遍文法〉とは、全ての人間言語に共有されている文法のことである。

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➤➤ 【言語学Ⅱ】言語学の分野・種類 (内的言語学~外的言語学)

 

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