【意味論】語彙的意味関係とは?同義・反義・上位下位を整理する

語が同義、反義、上位下位などでつながるイメージ

biglarge は、どちらも「大きい」と訳せます。それでも a big mistake は自然なのに、a large mistake は同じようには使われません。日本語訳が近いだけでは、二語がどこでも交換できる同義語だとは言えないのです。

認知言語学は、単語の意味を固定した札ではなく、カテゴリー化、経験、文脈との関係で捉えます。語彙的意味関係は、そこから語と語の間へ視野を広げ、似ている、反対である、含まれる、一部である、よく一緒に現れるという関係を区別する考え方です。

一つの単語から複数の語彙的意味関係が広がる図
語の意味は、同義・反義・包含・部分・共起という複数の関係から位置づけられます。
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語彙的意味関係は語を孤立させずに見る

関係を結ぶのは、綴りではなく文脈の中で選ばれた語義です。bank が「銀行」なのか「川岸」なのかで、近い語も反対の語も変わります。品詞や慣用的な組み合わせを外して、単語だけを線で結ぶことはできません。

関係を判断する前にそろえる条件

  • どの語義を比べているか
  • どの品詞・構文・文脈で使われているか
  • 置き換えたときに意味や自然さがどう変わるか

同義と反義にも種類がある

近似同義と三種類の反義関係を分類する図
近似同義と、段階的・相補的・関係的な反義を分けると、置換や対照の性質が見えます。

完全に同じ意味で、どの文脈でも交換できる語は多くありません。一般に同義語と呼ぶものの多くは、意味の一部が重なる近似同義語です。biglarge も、対象の物理的な大きさでは近くても、評価や慣用的な組み合わせでは差があります。詳しい置換条件は同義語の解説で扱っています。

反義語も、単に「正反対」の一種類ではありません。

関係 見分ける手がかり
段階的反義 hot / cold 中間のwarmなどを置ける
相補的反義 alive / dead 一方でなければ他方になりやすい
関係的反義 buy / sell 同じ出来事を逆の参加者から見る

実際には境界例があります。たとえば比喩的な用法や専門的な文脈では、相補的に見える対にも段階が生じます。分類は語の本質を固定する箱ではなく、関係の違いを観察するための道具です。

上位下位と部分全体は方向が違う

doganimal の一種です。このような is-a の関係で、animal を上位語、dog を下位語と呼びます。A dog is an animal. は成り立ちますが、An animal is a dog. は一般には成り立ちません。関係には方向があります。

上位下位関係と部分全体関係の方向性を比較する図
dogはanimalの一種ですが、wheelはcarの一種ではなく、carを構成する一部です。

これに対して、wheelcarpart-of の関係です。車輪は車の一部ですが、車の一種ではありません。上位下位はカテゴリーへの包含、部分全体は構成要素としての包含です。

この方向を意識すると、定義文を作りやすくなります。「スズメは鳥の一種」「タイヤは自動車の一部」のように、関係に合う言い方で確かめられます。

共起は意味の近さとは別の関係

makedo は、どちらも日本語で「する」と訳されます。しかし英語では make a decisiondo homework という組み合わせが慣習化しています。

make a decisionとdo homeworkでコロケーションを示す図
makeとdoはどちらも日本語で「する」と訳されえますが、名詞ごとに慣用的な組み合わせが定着しています。

このように、語がどの相手と一緒に現れやすいかを共起関係、定着した組み合わせをコロケーションとして考えます。二語がよく一緒に使われても、同義・反義・上位下位であるとは限りません。

共起は、語義を見分ける重要な証拠です。ただし、頻度が高いという事実だけで意味関係が決まるわけではありません。文法構造、ジャンル、地域や時代も分布に影響します。

意味場・成分分析・多義語との使い分け

意味場、成分分析、語彙的意味関係の分析対象を比較する図
語群を見る意味場、特徴へ分解する成分分析、語間の結びつきを見る意味関係を使い分けます。

意味場は、色、親族、移動など、同じ意味領域に属する語群を見ます。成分分析は、語義を「人間」「成人」「男性」のような特徴へ分けて比較します。語彙的意味関係は、二つ以上の語義がどのように結ばれているかを見ます。詳しくは意味場理論成分分析を参照してください。

また、一つの語の内部に複数の関連した意味がある場合は、多義の問題です。語と語の関係とは分析単位が違うため、多義語と放射状カテゴリーで意味ネットワークの作り方を分けて説明しています。

まとめ 類語を選ぶ前に関係を問う

語彙的意味関係の五つの関係をまとめとして示す図
同義・反義・上位下位・部分全体・共起を別々の関係として読みます。

語彙的意味関係を使うときは、まず語義と文脈を固定します。そのうえで、置換できるのか、関係に方向があるのか、慣用的な共起なのかを確かめます。

日本語訳が同じだから同義語、反対に見えるから反義語、と早く決めないことが大切です。単語は孤立した札ではなく、ほかの語との関係の中で位置づけられます。意味論全体の中で語彙の位置を確認したい場合は、意味論の全体像へ戻ると、文の意味や語用論との境界まで見渡せます。

参考文献

本文の英語例文は、引用を明記したものを除き、説明のために本記事用に作成したものです。
  • Murphy, M. L. Lexical Meaning. Cambridge University Press.
  • Murphy, M. L. Semantic Relations and the Lexicon. Cambridge University Press.
  • Riemer, N. Introducing Semantics. Cambridge University Press.
  • Cruse, D. A. Lexical Semantics. Cambridge University Press.
  • Croft, W. and Cruse, D. A. Cognitive Linguistics. Cambridge University Press.

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