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【関係詞】「前置詞+関係代名詞」が省略不可能な理由

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英文法
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この記事では、〈関係代名詞〉を扱います。関係代名詞の理解の仕方や教え方を検討するシリーズの第3弾です。

その中でも今回は、

『目的格の関係代名詞は省略可能』

という説明を分析し、より良い考え方を検討していきます。

『目的格の関係代名詞は省略可能』という説明について
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「目的格は省略可能」とは何を指すのか?

はじめにそもそも、『目的格の関係代名詞は省略可能』

この説明が何を意味しているのか明らかにしておきましょう。この説明は

以下のようなことを指しています。

例文whomの省略
例文whichの省略

上の(b)と(d)では、「それぞれ目的格のwhomとwhichが省略されている」という説明が一般的です。

そんな「目的格は省略可能」という説明の「得意な点」「解決しきれない点」を考えていきましょう。

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得意な点

いきなりですが、この説明の極めて得意な点は存在しません。

というのも、ただ事実を述べているだけなので、この説明によって何か莫大なメリットが生まれるかと言われたら、特にそんなことはありません。

出落ち感がすごいですが、ご了承ください。

おわびとして「関係代名詞の省略など存在しない?」

あまりに出落ち感がすごいので、お詫びに1つ興味深いお話を書かせていただけます。それは何かと言うと、「目的格の省略など存在しない」と主張する研究者が数多く存在するということです。彼らの主張は、「目的格whomの省略」ではなく、「最初からそこには何も無かった」と言うのです。この意味不明な主張を以下で詳しく説明します⇩

「目的格の省略という文法現象など存在しない」という主張の根拠をカンタンにご説明します。「目的格の省略」というのは「そこに目的格があったから、省略できる」わけです。「既にあるものを、無くす」、これが省略です。「何を当たり前のことを…」と思うかもしれませんが、英語の歴史は逆の現象が起きているのです。つまり、「whomやwhichなどの目的格が記された文(先ほどの例文(a)(c)など)」よりも「whomやwhichなどの目的格がない文(先ほどの例文(b)(d)など)」の方が歴史的に先に登場しているのです。‘The man whom you met yesterday is Tom’系統の文の方が先に登場しているのだから、それが ‘The man whom you met yesterday is Tom’ における whom は、省略のはずがないということです。この主張は〈英語史〉や〈文献学〉などを基盤にしています。そのような主張では、「目的格の省略」ではなく、〈接触節〉または〈ゼロ関係詞〉と呼んでいます(有名な学者としては、オットー・イェルペルセンなどがいます)。〈接触節〉のもう1つの根拠として、英語話者の幼児は、言語習得時期において、先に〈接触節〉から習得し、日常会話で使用するという事例も報告されています。発想としては、「目的格の挿入」とも言えるかもしれませんね。気になる方は〈接触節〉でお調べください。
しかしながら、そんな過去の話は置いておいて現在の英語だけに焦点を当てるのなら、そんな前後関係など知る由もないので、「目的格の省略」と扱う方が、(少なくとも学校の英語教育では)好ましいと言えるでしょう。
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解決しきれない点

次に「目的格は省略可能」とする説明では解決しきれない点を見てみましょう。

目的格が省略できない場合があるのはなぜか?
つまり次のような前置詞関係代名詞(目的格)での目的格は省略不可能です。
目的格が省略できない場合
[注釈]「前置詞+関係代名詞(目的格)」は非常に改まった表現で会話ではまず使われません。

このような「前置詞の後の目的格の省略」が不可能な場合をどのように捉えれば良いのでしょうか?

例外として片付けてしまいたくなりますが、実はこの場合こそ、関係代名詞の理解を深めさせてくれる絶好のチャンスなのです。

なぜ絶好のチャンスと言えるのでしょうか?

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関係代名詞は紛れもない「名詞」である

先ほどの「目的格が省略不可能なケース」が絶好のチャンスである理由は、

関係代名詞は紛れもない「名詞」であることを教えてくれるから
と言えるでしょう。

多くの学習者たちは、関係代名詞に触れていくにつれて、

関係代名詞は接続詞に似ている

と感じるようになります。

たしかに、主節と形容詞節を結んでいるので接続詞に思えるかもしれません。

しかし、「関係代名詞」はその名に含まれているように、代名詞、即ち名詞なのです。

そしてこれこそが、

前置詞関係代名詞(目的格)は省略不可能

という例外を解決してくれるアイデアなのです。

具体的な解決方法を見てみましょう。

解決方法

ここで重要なのが品詞の考え方です。

前置詞名詞を考えてみましょう。

前置詞は、後ろに名詞を要求します。

すなわち、名詞以外は前置詞に後続することはできません。

「前置詞+前置詞」という〈二重前置詞〉(複合前置詞)や、in that ~のような場合は除きます。

そして先ほど書いた通り、〈関係代名詞〉も名詞です。

したがって、両者は次のように連結できます。

しかし、名詞が欠けたとき、即ち「関係代名詞の省略」が生じた時はどうでしょうか?

関係代名詞が省略されるということは、前置詞の後ろに節が連続するということです。

これは、「前置詞は名詞を要求する」という性質に反します。

したがって、次のように言えます。

前置詞が連続するような状態を作り上げてしまう「関係代名詞の目的の省略」は禁止
これで解決できました。
前置詞が連続するような状態を作り上げてしまい、前置詞の「名詞を要求する」という性質に反してしまうから

以上のように、「関係代名詞の目的格が省略不可能な場合」とは、決して扱いにくい例外などではなく、「関係代名詞は紛れもない名詞である」という理解の重要性を再確認させてくれるのです。

「目的格が省略できない場合」を吟味することで、関係代名詞の理解が深まる

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英文法の用語ばかり覚えても役に立たないのは事実ですが、時には用語の意味をよくよく考えてあげると、文法事項に一貫性が与えられたりすることもあるものです。英文法の用語と学習者の関係性については、こちらの記事でも言及しています。
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全体のまとめ

今回は「目的格の関係代名詞は省略可能」という有名な説明を検討してきました。

その中で、「前置詞+関係代名詞は省略できない」という一見例外に見える規則こそが、「関係代名詞は紛れもない名詞」という理解を授けてくれることが分かりました。

今回のまとめです。

「前置詞+関係代名詞の目的格」の目的格が省略できないのは、
「関係代名詞は名詞」というアイデアによって解決できる

関連コンテンツのご紹介

さて、今回の記事は「関係代名詞の捉え方・教え方を考えるシリーズ」の第3弾でした。

第1弾
➤➤【関係詞】「2文を1文にまとめる」という説明の利点と欠点

第2段
➤➤【関係詞】「thatは万能」という説明から関係詞を見つめ直す

応用編
➤➤【関係詞】関係代名詞のthatは存在しない -thatの真実-

↑けっこう自信作です

この3つの記事を通して、関係代名詞の理解を深めていただけたら幸いです。

今回もご覧頂きありがとうございました。また次の記事でお会いしましょう。

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