英文法

【関係詞】「2文を1文にまとめる」という説明の利点と欠点

関係代名詞の捉え方① 「2つの文を1文に」から深める教授法英文法
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この記事では、〈関係代名詞〉を扱います。

今回は、関係代名詞を教える時に非常によく使われる、

『関係代名詞は2文を1文にまとめる』

という説明をあらゆる角度から分析してみたいと思います。

  • この説明の良いところ
  • この説明の悪いところ
このような内容を扱っていきます。
今回のテーマ『関係代名詞は2文を1文にまとめる』という説明を分析する

 

 

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『2文を1文にまとめる』とは?

はじめに、『関係代名詞は2文を1文にまとめる』という説明が何を指しているのか明らかにしておきましょう。

この説明は、次のような合成を指しています。
【合成】The boy has a friend.
② He speaks English well.
⇩合成
③ The boy a friend who speaks English well.
この「2文を1文にまとめる」という説明は、英語教授法では〈二文合成教授法〉という名前がついています。
この説明の「得意な点」「解決しきれない点」を確認することで、〈二分合成教授法〉をあらゆる角度から分析してみましょう。

得意な点

〈二文合成教授法〉が得意とするのは、主に2つあると考えます。

  1. 「関係代名詞」の「代名詞」という意味を実感できる
  2. 主格・目的格・所有格による変化を教えやすい

メリット1

メリット1「関係代名詞」の「代名詞」という意味を実感できる

英文法においてよくあることですが、用語が独り歩きしてしまうのです。

それは〈関係代名詞〉にも当てはまります。

  • 関係代名詞って用語はどういう意味?」
  • 「なんで代名詞なの?」

このような学習者の悩みは尽きません。

この疑問を解決してくれるのが〈二文合成教授法〉なのです。

もう一度下の合成の手順を見てください。

【合成】The boy has a friend.
He speaks English well.
⇩合成
③ The boy a friend who speaks English well.
ここで重要なのは次の点です。
 ②における He は、①における a friend に対応する代名詞であり、合成の操作をかけると、 ③のような  who に変化する。つまり、③の who は②の He に関係した代名詞、即ち「関係代名詞」である。

このような説明をすることによって、「who などがなぜ関係代名詞と呼ばれるのか?」という疑問を解決できます。

つまり、その用語の由来が分かりやすくなるのです。

「関係代名詞」という用語の由来や意味が分からないで学習し続けるよりも、その意味を理解した方が気持ちもスッキリするはずです。

これが〈二分合成教授法〉の得意な点の1つ目です。

✔関連情報「用語の独り歩き」

学校文法では「用語が独り歩きをして、本質を理解できていない」という状況が多々あります。その一例が〈現在完了〉です。〈現在完了〉を習うと、「経験用法」「継続用法」「完了用法」「結果用法」などの用法の分類が登場します。確かにその4つの用法には差異があるのは事実ですが、より重要なのは「どんな用法であれ、過去から現在にまたがる幅のある時間を表す」という本質なのです。4つの用法名を一生懸命覚えても、それこそ「使える英語」というものには近づきません。用語に踊らされるよりも、その中身としての本質を理解した方が応用力に繋がります。「用語という外見よりも、本質という中身を意識する」、これは英文法において重要なスタンスだと思っています。

メリット②

〈二文合成教授法〉の2つ目のメリットは〈格〉に関わるものです。

メリット2主格・目的格・所有格による変化を教えやすい
関係代名詞は言うまでもなく、〈先行詞〉と〈格〉によって変化します。
先行詞主格目的格所有格
 who (that)whom (that)whose
人以外which (that)which (that)whose

この『「主格」「目的格」「所有格」とは何なのか?』を説明するときに、「2つの文を1つにまとめる」という〈二分合成教授法〉は非常に便利なのです。

というのも、「2文目の代名詞に注目する」というシンプルな説明で済むからです。

図示するとこんな感じになります。

「主格」に注目
「目的格」に注目
「格による関係代名詞の使い分けは2文目の代名詞を見ましょう」と説明できるのは非常に便利なポイントです。

むしろ、格の判断は2つの文を登場させないとイメージしにくいと言えるでしょう。その点では〈二文合成教授法〉は効果を発揮します。

【まとめ】得意な点

以上が「2文を1文にまとめる」という説明2つの得意な点でした。

  1. 「関係代名詞」の「代名詞」という意味を実感できる
  2. 主格・目的格・所有格による変化を教えやすい

解決しきれない点

それでは次に「関係代名詞は2文を1文にまとめる」という説明では解決できない点を見てみましょう。

  1. そもそもなぜ2文を1文にまとめるのか?
  2. 先行詞の判別がつきにくい
  3. 「情報の欠落」を扱わない
この3つを順番に考えていきましょう。

解決できない点 1

解決できない点1そもそもなぜ2文を1文にまとめるのか?

学習者は次のような漠然とした疑問を抱くでしょう。

何の目的で2つの文をまとめる必要があるのか?

自分たちに課せられた作業に意味を見出せないのです。

つまり、この動機付けに欠けた(目的が不明確な)機械的な作業に消化不良を起こしてしまうのです。

これが〈二文合成教授法〉では説明しきれない点の1つ目です。

✔関連情報「学習者と動機づけ」

関係代名詞を教える時の「2文を1文にまとめる」という説明のような、その目的が不明確な作業にとてもよく似たものをご存知ないでしょうか?それは〈分詞構文〉です。学校文法で分詞構文を教える時、「接続詞を使って表されている文を接続詞無しで書き換えましょう」という導入の手口をよく取ります。例を出すと、’When Tom was playing soccer in the park, he hurt his knees'(トムは公園でサッカーをしていた時、両膝を怪我した)⇒ ‘Playing soccer in the park, Tom hurt his knees’ のようなものです。「なぜ接続詞を使って書かれているものを分詞構文に書き換える必要があるのか?」、この根本的な疑問は当然学習者たちに付き纏います。この疑問に対して妥当な説明を返せるのならまだ良いですが、「そういうものだから」という機械的な作業を押し付ける態度を取った瞬間に、学習者たちは意欲をなくします。学習者にとって「自分に課せられた作業やルールの目的」というものは非常に重要な役割を占めているのです。英文法において、「そういうものだから覚える」というスタンスは非常に便利である反面、「学習者とルールの動機付け」の関係性は敏感で大事に扱わなければならないのです。

解決できない点 2

解決できない点 2先行詞の区別がつきにくい
「2つの文を1文にまとめる」という説明では、次のような戸惑いが生じます。

結論を言えば「どっちでも良い」のですが、たいていの場合はどっちを先行詞にするか指定されているです。

「先行詞を指定してあげる」というのは一見すると親切な計らいのように思いますが、実はそれこそが問題を招いてしまうのです。

というのも、「どっちを先行詞にするか予め指定する」ということは、学習者に機械的で決まりきった書き換え作業を押し付けていることに他ならないからです。

「先行詞を予め指定する」という親切心は、その意図とは裏腹に、学習者が関係詞代名詞について、もっと大きく言えば言語について考える機会を奪ってしまうのです。

ここからは先ほどの「説明しきれない点①」に通じる話ですが、学習者はそんな機械的で動機付けに欠いた作業に目的や意味を見出すことはできないでしょう。

解決できない点 3

〈二分合成教授法〉では解決しきれない最後の点を見てみましょう。

解決できない点3「情報の欠落」を扱わない
実際に例文で確認してみましょう。
【例文】(a) The boy has a friend. He speaks English well.
(b) The boy has a friend who speaks English well.
 (a)における2文目の ‘He’ は ‘a friend‘ を指しているとします。

上の(a)と(b)は、同じ意味に見えて同じ意味ではありません

よくよく見てみると…

さて質問です。

(a) The boy has a friend. He speaks English well.

この文において、

その友達はどんな人ですか?

答えは簡単です。「英語を話せる男性」ですね。それではもう1つ。

(b) The boy has a friend who speaks English well.

この文において、

その友達はどんな人ですか?

「何をまた同じ質問を」と思うかもしれませんが、よく見てください。

もう少し突き詰めて質問します。

その少年の友達の性別はなんですか?

答えは「分からない」です。

先ほどの (a) The boy has a friend. He speaks English wellでは ‘a friend’ を ‘He’で受けているので、友達は男性だと分かります。

それに対して、 (b) The boy has a friend who speaks English well. において、関係代名詞の ‘who’ は性別を明示しないので‘a friend’ の性別は不明です。

これが(a)と(b)の決定的な違いです。

つまり、「情報の欠落」とは「先行詞の性別の情報の欠落」ということです。

関係代名詞では、先行詞の性別を明示することはできない
このように、機械的な書き換え作業を押し付けてしまうと、このような意味の違いを見落としています。
もちろん先行詞が ‘boy’ や ‘girl’ などの先行詞自体で性別を判断できる場合は関係代名詞を使用しても「性別の情報の欠落」は生じません。先行詞が ‘friend’ や ‘person’ などのそれ自身では性別が判断できない場合は、関係代名詞による「性別の情報の欠落」が生じます。

『2文を1文にまとめる』の振り返り

今回は関係代名詞の教え方の典型的な例である「2つの文を1つにまとめる」という〈二文合成教授法〉について検討してきました。

ポイントをまとめます。

  • 「関係代名詞は2つの文を1つにまとめる」という説明は〈二文合成教授法〉と呼ばれる
  • 得意な点
    ①「関係代名詞」と言う用語の理解が深まる
    ② 格による関係代名詞の変化についての説明がカンタン
  • 説明しきれない点
    ① 「そもそもなぜ2つの文を1文にまとめるのか?」という疑問が生じる
    ② 先行詞の判別がつきにくい
    →「先行詞を予め指定する親切心」はかえって学習者の自主的な思考を奪ってしまう
    ③ 「先行詞の性別」という情報を欠落させてしまう可能性がある
今回の記事に出てきた用語も整理します。
〈関係代名詞〉〈二文合成教授法〉〈先行詞〉〈格〉

[参考文献]

  • 吉波和彦 他 (2011)『ブレイクスルー総合英語』美誠社
  • 中島平三 (2017)『斜めからの学校英文法』

学校で扱われる英文法の説明事項を「ナナメ」から分析する面白い1冊です。「なるほど!」と思える発見があるはずです。

関連コンテンツのご紹介

今回は『関係代名詞の教え方を考える』というシリーズの記事になります。

他の記事でもより良い関係代名詞の教え方を検討しているので、ぜひご覧いただければ幸いです。

第2弾
➤➤【関係詞】「thatは万能」という説明から関係詞を見つめ直す

第3段
➤➤【関係詞】「前置詞+関係代名詞」が省略不可能な理由

応用編
➤➤【関係詞】関係代名詞のthatは存在しない -thatの真実-

↑けっこう自信作です

今回もご覧頂きありがとうございました。
また次の記事でお会いしましょう。

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