この記事では、〈助動詞〉の must について扱います。
must という助動詞は、will や can と並んで非常によく使われる助動詞の1つです。使用頻度の高い助動詞だから用法や意味はしっかり押さえておきたいものです。
この記事では、そんな高い重要性を持つ must の「用法」と「コアイメージ」を見ていきましょう。
結論:must の用法とコアイメージ
はじめに、must の用法とそこに共通するコアイメージを提示します。
『固執』『確信的推量』
must の用法について
最初に示した通り、must には次のような用法が存在します。
『強い勧誘』『確信的推量』
『 』の用語がそれぞれどんな例文と対応しているのか見ていきましょう。
『義務・必要』の用法 (○○しなければならない)
手始めに must の中で最も有名な『義務・必要』の用法を取り上げます。
「私は10時までに帰らなければならない」
「君は、一生懸命勉強しなければならない」
must と have to の違いは?
助動詞の must と言えば、『have to との違いは何か?』という話題がよく上がります。
『must と have to の違い』については以下の記事で詳しく解説しています。
否定文では『禁止』の意味になる
この『義務・必要』の用法は、否定文では『禁止』の意味を表すようになります。
「ここに車を停めるな」
「ここには駐車できません」
『必然』の用法 (必ず○○する)
2つ目の用法である『必然』は、3人称の主語に対して用いられます。
「良いものはみな必ず終わりを迎える」
「ヒトはみな必ず死ぬ」
[e.f] Accidents will happen.「事故は起こるものである」
[参考記事]【助動詞】法助動詞willの用法とコアイメージ
『固執』の用法 (○○するといって聞かない)
あまり知られていませんが、must には『固執』の意味を表す用法も存在します。「○○しなければならない」という強い意志が『固執』に派生していったと考えられます。
「彼はいつも自分のやり方を貫くといって聞かない」
「どうしてもうるさくするというのなら、外に出てちょうだい」
『強い勧誘』の用法 (ぜひ○○してください)
must は『強い勧誘』の表現としても用いられます。
「勧誘」と聞くと、疑問文のイメージが強いですが、must に関しては 肯定文で『強い勧誘』の意味を表すようになります。
「いつかぜひ遊びに来てください」
「親御さんにぜひよろしく伝えてね」
『確信的推量』の用法 (○○であるに違いない)
この『確信的推量』も must の有名な用法に当たります。
「彼は家に居るに違いない」
「その仕事は君には難しいに違いない」
『確信的推量』の意味の [must not] は存在しない
『確信的推量』としての must には、否定文はありません。
これには大きく2つの理由があります。
ちなみに、「○○であるに違いない」の否定の意味は、[cannot] が担い、「○○であるはずがない」となります。
must の用法のおさらい
ここまで見てきた must の用法をまとめておきます。
『強い勧誘』『確信的推量』
「私は10時までに帰らなければならない」
⇨否定文で『禁止』
You must not park your cars here.
「ここに車を停めるな」
「良いものはみな必ず終わりを迎える」
All human beings must die.
「ヒトはみな必ず死ぬ」
「彼はいつも自分のやり方を貫くといって聞かない」
If you must be noisy, go outside !
「どうしてもうるさくするというのなら、外に出てちょうだい」
「いつかぜひ遊びに来てください」
You must say hello to your parents.
「親御さんにぜひよろしく伝えてね」
「彼は家に居るに違いない」
The work must be hard for you.
「その仕事は君には難しいに違いない」
ここから先は、これらの must の用法に共通するコアイメージを扱っていきます。
must のコアイメージ
ここまで must の用法をいくつか挙げてきましたが、それらに一貫したコアイメージは存在するのでしょうか?
イラストで表してみました。
最後に〈法助動詞〉について
かなりハイレベルな話なので、読み飛ばしていただいても構いません
最後に少しハイレベルなお話をします。
今回の記事で扱ってきた助動詞 must は、助動詞の中でも〈法助動詞〉と呼ばれるグループに分類されています。
- 『〈法助動詞〉とは何か?』
- 『そもそも助動詞にはいくつ種類があるのか?』
このような助動詞の大まかな説明や全体像については、ぜひこちらをご参照ください↓
➤【助動詞】 助動詞の種類・分類について
そして、must を含む〈法助動詞〉には、大きく2つの種類の用法が存在すると言われています。
それが、〈根源的用法〉と〈認識的用法〉というものです。
先ほど紹介した must の用法を、これらの〈根源的用法〉と〈認識的用法〉に当てはめるとどうなるでしょうか?
must の場合は、このようになります。
- 〈根源的用法〉= 『必要・義務』、『必然』、『固執』、『強い勧誘』
- 〈認識的用法〉= 『確信的推量』
これ以上はあまり詳しく説明しませんが、〈法助動詞〉と呼ばれる助動詞には、〈根源的用法〉と〈認識的用法〉と呼ばれるものがある、ということを少しだけ付け加えておきます。
全体のまとめ
今回は、助動詞の中でも〈法助動詞〉と呼ばれる種類の助動詞である must を見てきました。
must の用法とコアイメージをまとめておきます。
mustの用法
- 【必要・義務】
I must be back by ten o’clock.
「私は10時までに帰らなければならない」
⇨否定文で【禁止】
You must not park your cars here.
「ここに車を停めるな」 - 【必然】
All good things must come to an end.
「良いものはみな必ず終わりを迎える」
All human beings must die.
「ヒトはみな必ず死ぬ」 - 【固執】
He always must have his own way.
「彼はいつも自分のやり方を貫くといって聞かない」
If you must be noisy, go outside !
「どうしてもうるさくするというのなら、外に出てちょうだい」 - 【強い勧誘】
You must come and see us some time.
「いつかぜひ遊びに来てください」
You must say hello to your parents.
「親御さんにぜひよろしく伝えてね」 - 【確信的推量】
He must be at home.
「彼は家に居るに違いない」
The work must be hard for you.
「その仕事は君には難しいに違いない」
みなさんの must の理解が深まれば嬉しく思います。
関連コンテンツの紹介
今回の内容に関連した記事をご紹介します。
【他の助動詞の用法とコアイメージ】
【助動詞そのものについて】
助動詞については他にもかなり詳しく扱っています。
また次の記事でお会いしましょう。
[参考文献]
- 安井稔 (1983)『改訂版 英文法総覧』開拓社
- 吉波和彦 他 (2011)『ブレイクスルー総合英語(改訂二版)』美誠社
- 大西泰斗、ポール・マクベイ (2017)『総合英語 FACTBOOK これからの英文法』桐原書店
- 佐藤芳明 他 (2009) 『レキシカル・グラマーへの招待 -新しい教育英文法の可能性』開拓社
- 中野清治 (2014)『英語の法助動詞』開拓社
- https://eikaiwa.weblio.jp/column/study/english_study_skills/must-meanings
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