【音韻論Ⅱ】ミニマル・ペア(最小対語)の定義と具体例をわかりやすく解説

✔この記事の要点

ミニマルペア(最小対語さいしょうついご)minimal pair音韻論ただ1つの音の違いによって意味が区別される2つの単語のペアのこと。また、その意味の違いに関係する音を音素(phoneme)と呼ぶ。音素を決定するために重要な概念。
ミニマルセットminimal set音韻論ただ1つの音の違いによって意味が区別される3つ以上の単語のセットのこと。

この記事は、音韻論をトピックごとに扱う『音韻論シリーズ』の第2弾にあたる『音韻論Ⅱ』となります。

そもそも音韻論とは、言語の音に注目する言語学の1分野です。

今回は、そんな音韻論の中で最重要とも言える概念〈ミニマルペア(最小対語)〉について見ていきます。

ミニマルペア(最小対語)について
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音韻論はどんな分野か?定義と特徴

まずは音韻論の定義を確認しておきましょう。

音韻論おんいんろんphonology分野名言語の音の側面に注目する言語学の1分野。音の配置・交替・変化などに注目し、個別の言語体系における音の機能や体系を研究する。

音韻論の詳細や種類、具体的な研究内容については、【音韻論Ⅰ】音韻論の全体像 定義・特徴・種類・音声学との違いをわかりやすく解説で詳しく解説しています。

言語学における音韻論の立ち位置

まず大前提ですが、音韻論は言語学の1分野です。

そこで音韻論の言語学における立ち位置を見ておきます。

言語学における音韻論の立ち位置

言語には、「音」「構造」「意味」の3つの側面がありますが、音韻論は、その名の通り「音」に注目します。

基礎知識を確認したところで、本題である〈ミニマルペア〉について見ていきましょう。

ミニマルペア(minimal pair)/最小対語について

ミニマルペア(最小対語)は以下のように定義されます。

ミニマルペア(最小対語さいしょうついご)minimal pair音韻論ただ1つの音の違いによって意味が区別される2つの単語のペアのこと。また、その意味の違いに関係する音を音素(phoneme)と呼ぶ。音素を決定するために重要な概念。

ミニマルペアの具体例

ミニマルペアの定義だけでは分からないと思うので、実際にミニマルペアの具体例を通して確認してみましょう。

下記の表で横並びになった2つの単語がミニマルペアです。

また、ミニマルペアとして異なる音を赤字でマークしています。

bead [bid] deed [did]
kit [kɪt] cat [kæt]
cap [kæp] cab [kæb]

注目すべきは、スペルのアルファベットではなく、発音、すなわち[ ]で示されたIPAの方です。

》【音声学Ⅳ】IPA(国際音声記号)の概要と利点

ミニマルペアか判定する練習

ミニマルペアを識別できるか練習してみましょう。

もう一度、ミニマルペアの定義を載せておくので、以下の問題にあるそれぞれの2語がミニマルペアかどうか考えてみましょう。

ミニマルペア(最小対語さいしょうついご)minimal pair音韻論ただ1つの音の違いによって意味が区別される2つの単語のペアのこと。

問題

それぞれの横並びの「単語1」と「単語2」はミニマルペアでしょうか?

正誤の部分をお考えください。

ペア番号 単語1 単語2 正誤
ペア1 sip zip ?
ペア2 seed soup ?
ペア3 big pig ?
ペア4 beat boot ?
ペア5 read real ?
ペア6 look loop ?
ペア7 then thin ?
ペア8 to too ?

回答

答えは次のようになります。ボタンをクリックして開示してください。

.

ペア番号 単語1 単語2 正誤
ペア1 sip /sɪp/ zip /zɪp/ ◎
ペア2 seed /sid/ soup /sup/ ✕
ペア3 big /bɪg/ pig /pɪg/ ◎
ペア4 beat /bit/ boot /but/ ◎
ペア5 read /ɹid/ real /ɹil/ ◎
ペア6 look /lʊk/ loop /lup/ ✕
ペア7 then /ðɛn/ thin /θɪn/ ✕
ペア8 to /tu/ too /tu/ ✕

最後のペア8についてだけ解説しておくと、まったく同じ発音でもミニマルペアではありません。

ミニマルセット(minimal set)の定義と具体例

〈ミニマルペア〉に似た名前で〈ミニマルセット〉というものがあります。ミニマルペアを理解していれば理解は簡単だと思いますが、簡単に定義と具体例を見ておきます。

定義

ミニマルセットminimal set音韻論ただ1つの音の違いによって意味が区別される3つ以上の単語のセットのこと。

ただ1つの音の違いによって区別される単語について考えている中で、ミニマルペアが「2つの単語のペア」であるのに対し、こちらのミニマルセットは「3つ以上のセット」を指します。

具体例

具体例1pit, kit, sit
↓
/pɪt/, /kɪt/, /sɪt/

上記は3つの単語が含まれたミニマルセットです。

具体例2pick, kick, sick, chick, lick
↓
/pɪk/, /kɪk/, /sɪk/, /ʧɪk/, /lɪk/

上記は5つの単語が含まれたミニマルセットです。

ミニマルペアが音韻論で重要な理由

ミニマルペア、もしくはミニマルセットを考えるべき理由はどこにあるのでしょうか?

ずばり結論はこうです。

ミニマルペアが重要な理由言語において音素を特定するために重要な概念

今回見てきた〈ミニマルペア〉という概念は、音韻論の他のトピックである〈音素〉と密接に関わっています。

〈音素〉の詳細は別記事で取り上げますが、定義は以下のようになります。

音素おんそphoneme音韻論あるひとつの言語において、言葉(語)の意味の区別に関係する音の最小単位。より感覚的に言うと、ある言語話者が心の中で思い込んでいる「同じ1つの音」の総称のこと。

音韻論では、音素を特定して、音素の配列の規則性や変化などを研究します。その土台となる音素の特定は、他ならぬミニマルペアによって支えられているです。

ミニマルペアと関連のある〈音素〉や〈分布〉に関しては下記の記事をご覧ください。

》【音韻論Ⅲ】音素と異音(条件異音/自由異音)について【図解】でわかりやすく

》投稿予定

全体のまとめ

これにて『音韻論Ⅱ』は終了です。

今回はミニマルペアについて、以下のポイントを見てきました。

  • ミニマルペアとは、ただ1つの音の違いによって意味が区別される2つの単語のペアのこと。また、その意味の違いに関係する音を音素(phoneme)と呼ぶ。音素を決定するために重要な概念。
  • ミニマルセットとは、ただ1つの音の違いによって意味が区別される3つ以上の単語のセットのこと。
  • ミニマルセットやミニマルペアは、それぞれの言語体系の中で音素を特定するために重要な概念である。

 

音韻論シリーズは下記からご覧ください。

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