英文法

【to不定詞】V 人 to doの構造分析【統辞論の諸相を読んで】

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背景

先日、『統辞理論の諸相 方法論序説』を読んでいて興味深いことがあったので備忘録として残しておきたいと思います。

『統辞理論の諸相 方法論序説』はノーム・チョムスキーによって書かれ、生成文法の研究意義と指針を提起した影響力を持つ1冊です。

とういうわけで、英文法に関する書籍では到底なく、言語学や自然科学の方法論についてあれこれと小難しいことが書いあるのですが、意外にも学校で習うような英文法に関する面白い発見がありました。それが、to不定詞を含む文構造についてです。

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興味深い文法

下記の2つの文をご覧ください。

  1. I persuaded John to leave.(私は説得してジョンを立ち去らせた)
  2. I expected John to leave.(私はジョンが立ち去ると思っていた)

異なるのは動詞(persuade/expect)だけで、どちらも表層では同じ構造をしているように見えます。

それは、動詞の目的語であるJohnの役割です。

1. においては、Johnはpersuadeという行為の対象になっているのと同時に、leaveの意味上の主語(チョムスキーは論理的主語と呼んでいます)でもあります。説得した対象でもあると同時に、説得内容を実現する行為者でもあるわけです。つまり、深層構造においては文法的機能を2つ付与されていることになります。

その一方で、2.においては、Johnはexpectという行為の直接的な対象ではありません。どちらかというと、expectの対象となっているのは、John to leaveという準動詞が形成する節の方です。また、Johnはleaveの意味上の主語(論理的主語)の役割をになっています。つまり、深層構造においてはJohnは埋め込まれた非定形節のみで文法的機能を持ち、それ以外の文法機能は持っていないことになります。

このことから、1と2の深層構造は次のようになっています。

  1. I persuaded John to leave.(私は説得してジョンを立ち去らせた)
    名詞 ー 動詞 ー 名詞句 ー 文
    I ー persuaded ー John ー John will leave.
  2. I expected John to leave.(私はジョンが立ち去ると思っていた)
    名詞 ー 動詞 ー 文
    I ー expected ー John will leave.

このように考えてみると、学習文法で有名な五文型では同一に扱いますが、たしかに文構造が違うことがわかります。

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このことからチョムスキーが言いたいこと

さて、こんな感じの話が『統辞理論の諸相』に載っていたわけですが、もちろん英文法書ではありません。

生成文法の書籍でこんな事例を取り上げてチョムスキーが言いたかったことは主に2つあります。

1つは、根底にある深層構造を研究する上で、表層構造がいかに分析で役に立たないかということです。たしかに、見かけ上の表層構造に惑わされていては深層構造を解明することはできません。

2つ目は、話者の言語的直感は、話者自身が意識的にアクセスできるものではないということです。チョムスキーいわく、英語のネイティブスピーカーが先程の2つの例文が異なる統辞構造を持っていると気付く人はほぼいないらしいです。

 

『統辞理論の諸相』に書いてあることはよく分からないことばかりですが、英文法に関して興味深い話が出てきたので読んでみて良かったかなと少しは思えました。

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