なぜ習っていない文でも「正しさ」が分かるのか|文法性判断のしくみ

習っていない文の正誤が分かる理由を示すサムネイル
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Colorless green ideas sleep furiously.——意味はめちゃくちゃなのに、英語の文としては「なんとなく正しい」と感じます。逆に同じ単語を並べ替えると、意味を考える前に壊れて見えます。こんな文は誰も習っていないのに、なぜ正誤が分かるのでしょうか。

先に結論を言ってしまえば、私たちは単語の意味とは別に、文を組み立てる規則の感覚を頭の中に持っているからです。生成文法は、その仕組みを説明しようとする立場です。

なぜ人は、習っていない文でも正誤を判断できるのか?
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「文法は学校で習うルール」だけでは説明できない

文法は、学校で一つひとつ習うルールの集まりだと思われがちです。たしかに、規則を覚える場面は多くあります。

ところが、誰も教わったことのない文でも、私たちは自然か不自然かを判断できます。

  1. Colorless green ideas sleep furiously. (意味は奇妙だが、英語の形としては読める)
  2. Furiously sleep ideas green colorless. (語が並んでいるだけで、文として壊れている)
  3. The book that I bought yesterday was heavy. (初めて見ても自然に読める)

1は意味こそ意味不明ですが、英語の文らしい形をしています。2は同じ単語を並べ替えただけなのに、文として成立しません。3のような初見の文も、私たちは難なく処理できます。

習った覚えのない文なのに、なぜおかしいと分かるんですか?

意味とは別に、「文を組み立てる規則」を頭の中に持っているからです。生成文法はそこを説明しようとします。

まずは、「文法的かどうか」と「意味が通るか」が別物だ、というところからはっきりさせましょう。

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「文法的か」と「意味が通るか」は別の層

さきほどの Colorless green ideas sleep furiously. は、言語学者チョムスキーが挙げた有名な例です。意味としては成り立たないのに、英語の語順や形のルールにはきちんと従っています。

逆に、語を無造作に並べた文は、意味を考える前の段階で壊れています。私たちは「意味が通るか」とは独立に、「形として正しいか」を判断できるのです。

文法性と意味の通り方が別の層であることを示す図
「形として正しいか(文法性)」と「意味が通るか」は、別の層として判断されます。

この「形の正しさ」を支えているのが、頭の中にある文法の感覚です。

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頭の中に「文を作る規則」がある

人は、有限の単語と規則から、これまで一度も聞いたことのない無数の文を作り、理解できます。生成文法は、この能力を心の中にある文法の仕組みとして捉えます。

頭の中の規則が無限の文を生み出すことを示す図
限られた語と規則から、無限の新しい文を作り出せる仕組みが頭の中にあると考えます。

規則は「単語の知識」とは別もの

辞書をすべて暗記しても、それだけでは文は作れません。単語をどう組み合わせ、どう入れ子にするかという構造の規則が別に必要です。3の関係詞を含む文をすらすら読めるのは、この構造の規則が働いているからです。生成文法は、この規則の中身を明らかにしようとする立場だと言えます。

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限られた入力から、豊かな規則をどう身につけるのか

もう一つの大きな問いが、子どもの言語習得です。子どもは、必ずしも整っていない、限られた量のことばを聞くだけで、短期間に複雑な文法を身につけます。

限られた入力から豊かな文法を獲得することを示す図
限られた入力から豊かな規則が育つことを、生成文法は生得的な土台から説明しようとします。

入力の量に比べて身につく規則が豊かすぎる、という観察から、生成文法では人には言語を獲得するための生まれつきの土台があると考えます。これは普遍文法と呼ばれる仮説で、研究の中では議論も多い立場です。ここでは「そう決まっている」ではなく、「こう説明しようとする見方がある」として受け止めておくと十分です。

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有限の規則から、無限の文が生まれる

生成文法が「規則の感覚」を重く見るのは、人が作れる文に限りがないからです。たとえば関係詞や接続を使えば、文はいくらでも長く入れ子にできます。

入れ子はどこまでも伸びるThis is the cat that chased the mouse that ate the cheese that …
規則さえあれば、理論上いくらでも文をつなげていける。

私たちは、こんな文を一度も習っていません。それでも、規則に従っているかどうかは判断できます。有限の規則を組み合わせて、無限の新しい文を生み出せる——この性質を、生成文法は人間の言語の中心的な特徴として捉えます。「生成」という名前も、規則が文を生み出す(generate する)ことに由来します。

言語ごとに具体的な規則は違いますが、こうした入れ子や組み合わせの仕組みは、世界の言語に広く共通して見られます。表面の違いの下に、共通する設計があるのではないか——この問いが、生成文法の研究を動かしてきました。

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まとめ:習っていない文が分かるのは、頭の中に規則があるから

最初の問いに結論を示してまとめましょう。

習っていない文の正誤が分かるのは、単語の意味とは別に、文を組み立てる規則の感覚を頭の中に持っているからです。生成文法は、この心の中の文法と、その獲得の仕組みを説明しようとする立場です。

頭の中の規則が無限の文を生み出すことを示す図
「頭の中に文を作る規則がある」と見ると、最初の疑問はすっきりします。

今回の要点

  • 「文法的か」と「意味が通るか」は別の層として判断される。
  • 人は有限の規則から無限の新しい文を作り、判断できる。
  • その力を支えるのが、頭の中にある構造の規則。
  • 限られた入力から豊かな規則が育つ点を、生得的な土台(普遍文法)から説明しようとする。

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