生成文法の格理論と統率(Government)とは?なぜ主語・目的語には抽象的な格が必要なのか

heとhimの語形差に対しJohnにはNOMとACCの抽象格が見えないことを示す格理論の図

英語の代名詞は、主語ならhe、目的語ならhimと形が変わります。ところがJohnは、John left.でもI saw John.でも同じ形です。それなら、固有名詞には「格」がないのでしょうか。

格理論(Case Theory)は、語形が同じ名詞句にも、統語構造で主格・対格に相当する抽象格(abstract Case)が必要だと考えます。

先に結論
格理論は「名詞の語尾を分類する理論」だけではありません。名詞句が文のどこで認可され、なぜ別の位置へ移動しなければならないのかを説明する理論です。GB理論では、その局所的な認可関係を支えた概念の一つが統率(Government)でした。

格フィルター、受動文、繰り上げ、ECMを順に読み、Governmentと支配・c-commandを切り分けたうえで、Agreeや局所性への再編まで見通します。

四つの例文を手がかりに、名詞句がどこで認可されるのか考えてみましょう。

語形に見えない格は、なぜ必要なのか?
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生成文法とはなにか?

生成文法は、文を単語の横並びではなく、人が無意識に作る階層構造として捉えます。格理論も、単なる直線的位置ではなく構造を対象にします。

生成文法generative grammar言語学の研究プログラム人が持つ言語知識を、有限の原理と操作から無数の文・構造を作れる体系として明示しようとする研究の枠組み。

I believe him to be honest.のhimは意味上to be honestの主語ですが、格の形はheではなくhimです。隣接や意味役だけでなく、どの主要部がどの構造領域の名詞句を認可するかを見る必要があります。

生成文法の目的、言語能力と運用、普遍文法の考え方は、生成文法とは何かを基礎から解説した記事で扱っています。

格理論とGovernmentはどの時代に主流だったのか

抽象格という発想はGB理論より前から発達していましたが、格フィルターとGovernmentを文法の主要モジュールとして組み合わせたのは、1980年代から1990年代前半のGB理論です。

時期・枠組み 格と局所関係の扱い
1970年代 表面に現れない抽象格、格フィルター、名詞句移動との関係が整えられた
GB理論
1981〜1995年ごろ
格理論を独立モジュールとし、Governmentを格付与・束縛・空範疇などに関わる局所関係として用いた
ミニマリスト以降 Governmentという統一概念への依存を弱め、Case素性、Agree、Merge、phase、局所探索へ仕事を分配した

格理論は名詞句の認可を担当した

GBでは、文法をθ理論、格理論、束縛理論などの原理体系に分けました。θ理論は名詞句がどの述語の参加者かを問い、格理論はその名詞句が構造上どこで認可されるかを問います。

Governmentは、そのうち格を与える主要部と名詞句のあいだに必要な局所関係を表すために使われました。ただしGovernmentの定義はGB期を通じて一定ではなく、Barrierや統率領域の導入とともに変化しました。

「成立した時代」と「中心だった時代」を分ける

主格・対格そのものは古くから知られ、抽象格の発想もGBの開始年に突然生まれたわけではありません。GB期の特徴は、格の観察を移動・局所性・空要素を一緒に制約する明示的な体系へ組み込んだ点です。

後の理論ではどうなった?|Governmentを分解して一般操作へ

ミニマリストでは「統率されるなら格を得る」という専用関係をそのまま中心に残すより、機能主要部Tやvが持つ素性、ProbeによるGoalの探索、Agree、局所性、phase edgeなどへ説明を分けます。格の問題は残り、道具立てが再編されたのです。

この位置づけを標準理論からミニマリストまで通して確認するには、生成文法はどう変遷し、何を目指すのかをまとめた記事が全体地図になります。

抽象格とは何か

格には、少なくとも「語形として見える格」と「統語的な認可として仮定される格」という二つの見方があります。英語のhe / him / hisは両者の接点を見せます。

形態格は語の形に現れる

形態格(morphological case)は、名詞や代名詞の語形・接辞として現れる格です。英語では代名詞に区別が残っています。

  • He left.:主語位置の主格形
  • I saw him.:目的語位置の目的格形
  • His book arrived.:所有を表す形

日本語の「が・を・に」も格標識と関係しますが、情報構造、取り立て、格交替、ゼロ標示などが絡みます。英語の代名詞表と一対一に置き換えられるわけではありません。

抽象格は語形が同じ名詞句にも必要とされる

John left.とI saw John.ではJohnの発音は同じです。それでも古典的格理論は、前者のJohnが主格、後者のJohnが対格を認可されると分析します。

heとhimの語形変化、Johnの語形不変をNOMとACCの抽象格で比較する図
語形が変わるかどうかと、統語的位置で抽象格を認可されるかどうかは別の問題です。

ここでCaseを大文字で書く慣習は、表面の形態格だけでなく、抽象的な統語認可を指すことを明確にするためです。ただし研究文献の表記は一定ではありません。

後の理論ではどうなった?|「格」から名詞句ライセンシングへ

現代研究では、すべての言語の名詞句認可を一種類の抽象Caseで説明できるかが問い直されています。抽象格の全面否定ではなく、何をCaseと呼び、どこまで統一するかの再検討です。

格フィルターは何を要求するのか

格フィルター(Case Filter)は、発音される名詞句・DPが適切なCaseを持たなければならないというGB期の一般化です。語尾が見える名詞だけを対象にしません。

発音されるDPは格なしで残れない

入門的には、次のように捉えられます。

格フィルター
音声的内容を持つ名詞句は、抽象格を認可されなければならない

John seems to be tired.のJohnは、意味上はtiredの項です。しかし非定形のtoは、古典的分析では通常の主格を与えません。そこでJohnは、主格を得られる主節の主語位置へ移動します。

  • John seems [ __ to be tired ].:主節主語位置で主格を得る
  • *It seems [ John to be tired ].:通常のseemではJohnを埋め込み位置に格認可できない
  • It seems [ that John is tired ].:定形節内のJohnは主格を得られる

文の不適格さを「意味が通じない」だけでなく、名詞句がCaseを得られないためと捉えられる点が格理論の説明力でした。

PROと発音されるDPは同じ扱いではない

John tried [PRO to leave].のPROは、古典的GBで発音されない主語です。PROは通常の発音されるDPと同じ格フィルターの対象ではないとされ、「PROは統率されない」というPRO定理とGovernmentの議論へつながりました。

PROの分布をGovernmentだけで導く分析は後に見直されましたが、格フィルターは音形のあるDPと空要素を区別する動機にもなりました。

後の理論ではどうなった?|フィルターから派生中の照合へ

ミニマリストでは、完成した表示に格フィルターをかけるだけでなく、DPの未評価Case素性が派生中にTやvとのAgreeで値を得ると分析します。格なしのDPを最後に排除する発想から、なぜ導出が途中でそのDPを探索し、移動や一致を起こすのかへ説明の重心が移りました。

構造格と内在格はどう違うのか

抽象格はすべて同じ方法で与えられるわけではありません。古典的な区別の一つが、構造格(structural Case)と内在格(inherent Case)です。

構造格は統語的位置に強く依存する

主格と対格は代表的な構造格です。能動文と受動文で同じThemeが目的語から主語へ変わると、格も対格から主格へ変わります。

能動文
The police arrested John.
John:Theme・目的語・対格

受動文
John was arrested.
John:Theme・主語・主格

Johnの意味役はThemeのままですが、構造位置に応じて格が変わります。だから構造格とθ役割を同一視できません。

内在格は特定の主要部や意味関係と結びつく

内在格は、与格など、特定の主要部・語彙クラス・θ関係と強く結びつく格を指します。どの格を構造格、内在格、語彙格と呼ぶかは言語と理論で異なります。

quirky caseや格交替を見ると、主語なら常に主格、目的語なら常に対格という表では足りません。内在格も「意味だけで自由に決まる格」ではありません。

後の理論ではどうなった?|Case素性と格付与主要部を細分化する

現代の分析ではT、v、Appl、P、Kなどが名詞句認可に関与します。構造格と内在格を保つ分析のほか、dependent caseなどで捉える分析もあります。

構造格と内在格を考える前提として形態格と抽象格を区別する比較図
構造格・内在格の議論でも、まず表面の語形と統語的な認可を分けて考えます。

主格・対格はどこで認可されるのか

GB期の標準的な入門分析では、定形INFL(後のT)が主語の主格を、能動の他動詞Vが目的語の対格を認可します。

定形節の主語は主格を得る

She left.では、定形時制を担うI / INFLと主語位置のDPが結びつき、Sheが主格を得るとされました。後の表記ではTPの指定部とTという形で描かれます。

不定詞toを伴う節は通常、同じ主格を独立に与えられません。これがraisingやcontrolの主語分布を考える出発点になります。

能動の他動詞は目的語へ対格を与える

She saw him.では、V sawが補部のhimを対格として認可します。前置詞Pも補部に目的格形を要求します。

  • She spoke to him.:Pの補部
  • *She spoke to he.:標準英語では不適格
  • She saw him.:Vの目的語

ただし「動詞の右隣なら対格」ではありません。補部関係と局所領域が重要であり、そこでGovernmentが使われました。

後の理論ではどうなった?|INFLからT、Vからvへ

ミニマリストでは、主格をT、対格を軽動詞vと結びつける分析が一般的になりました。動詞Vが表面上目的語に近くても、対格認可の機能をより高いvに置くのです。AUXからINFL、Tへの変遷と同じく、複数の働きを機能主要部へ分解する方向が見えます。

受動文・繰り上げ・ECMで格の行き先を見る

格理論の価値は、単純な主語・目的語だけでなく、名詞句が通常と違う位置で認可される構文を同じ問いで比較できる点にあります。

能動文、受動文、繰り上げ、ECMでNOMとACCの認可先を比較する図
GB期の代表的な一般化を簡略化しています。受動文とraisingでは主語位置のNOM、能動文とECMではACCの認可が焦点です。

受動形は通常の対格を与えない

The police arrested him.ではhimが対格を得ます。受動文*Him was arrested.が許されず、He was arrested.になるのは、受動形の動詞が通常の対格を与えず、Themeが主語位置へ移って主格を得るためだと分析されました。

θ理論はHeがarrestのThemeであること、格理論はなぜ目的語位置にとどまれないかを担当します。受動でAgentが表面にいなくても、この二つを混同しません。

raisingでは下位主語が上位の主格位置へ移る

He seems to leave.のHeはleaveの項であり、seemから独立のθ役割を受けません。非定形節内で格を得られないため、主節Tの主格位置へ移ります。

この説明は、It seems that he left.のように上位主語位置を虚辞itが占められる事実ともつながります。seemは上位主語に特定の意味役を要求しないからです。

ECMでは主節の動詞が埋め込み主語を対格にする

I believe him to be honest.では、himは意味上to be honestの主語ですが、対格形です。古典的分析では、主節のbelieveが例外的に埋め込み節の主語へ対格を与えます。これを例外的格付与(Exceptional Case Marking: ECM)と呼びます。

  • I believe him to be honest.
  • *I believe he to be honest.
  • I believe [that he is honest].

that節では埋め込みTが主格を認可し、ECM不定詞では主節側から対格を得ます。この遠く見える関係をどこまで局所的とみなすかがGovernmentや節境界の分析に関わりました。

後の理論ではどうなった?|移動はInternal Merge、認可はAgreeへ

受動・raisingの移動はInternal Mergeとして捉え直され、TのEPP・Case・φ素性がDPをどう引きつけるかが問われます。ECMにもv / V、節の大きさ、phaseをめぐる分析差があります。観察は残り、「格吸収」とGovernmentの組が分解されました。

統率(Government)とは何か

Governmentは日本語で「統率」と訳します。「支配」と訳されることもありますが、以下では樹形図の祖先関係であるdominanceを「支配」、GBの専門概念Governmentを「統率」と呼び分けます。

統率は主要部と要素の局所関係である

入門的に単純化すると、統率とは、一定の統率者が、障壁に遮られない局所領域の要素へ構造的に届く関係です。

この記事で採る簡略化
統率者になれる主要部が、必要な構造関係を満たし、局所領域内で障壁を越えずに対象へ届くとき、その対象を統率する。

これはGB全期間に共通する唯一の厳密定義ではありません。c-commandかm-commandか、境界やbarrierをどう数えるかによって定式化が変わりました。

なぜ格理論にGovernmentが必要だったのか

古典的な考え方では、Vが補部DPへ対格を与え、Pが補部DPを認可するには、単なる意味上の関係や隣接ではなく、適切な局所構造が必要です。Governmentはその共通形式を与えました。

Governmentは空範疇原理、PRO、束縛領域にも使われ、一つの局所関係で複数現象を統一しようとしました。

定義が変化したこと自体が重要である

Government and Binding初期の枠組みからBarriers期へ進むと、境界の扱いはより精密かつ再帰的になりました。したがって、教科書の一行定義を「Governmentの永遠の定義」として暗記すると、文献ごとの差を誤解します。

Governmentは一枚岩の自然事実の名前ではなく、格付与・移動・束縛に共通する局所性を捉えようとした理論装置です。どの関係まで統一できるかが検証され、定義も変化しました。

後の理論ではどうなった?|統一概念を残すより構成要素を導く

ミニマリストはGovernmentを中心原理から外し、仕事を姉妹関係、Probe–Goal探索、Agree、最短性、phaseへ分配しました。局所性の直観を残しつつ、専用関係を一つ置く必然性を問い直したのです。

支配・c-command・Governmentはどう違うのか

日本語訳が似ているため、三つの関係は混同されやすいところです。同じ樹形図を使うと責務の違いが見えます。

同じTP樹形図で支配、c-command、統率の構造関係を比較する図
dominanceは祖先関係、c-commandは分岐から定まる構造範囲、Governmentは統率者・局所領域・障壁を含むGB期の関係です。

支配(dominance)は上から下への包含関係

節点Aから下向きの枝をたどってBへ着けるなら、AはBを支配します。TPはその内部のT、VP、V、目的語DPを支配します。これは樹形図の祖先と子孫の関係です。

c-commandは最初の分岐点から範囲を測る

ある要素Aの最初の分岐節点がBも支配するとき、AはBをc-commandすると定義する入門形があります。主語DPはVP内部をc-commandし、束縛や作用域の説明に使われます。

c-commandの詳しい定義、姉妹関係、相互c-command、束縛への応用は、c-commandを樹形図から読む記事で段階的に扱っています。

Governmentには統率者と局所性の条件が加わる

c-commandする要素がすべて統率者になるわけではありません。主語DPがVPをc-commandしても、それだけで格を与えるGovernmentにはなりません。古典的Governmentでは、統率者になれる主要部、対象との構造関係、局所領域、障壁の不在などが必要です。

関係 中心となる問い 典型的用途
支配
dominance
Aの下にBが含まれるか 構成素・部分木・祖先関係
c-command Aの最初の分岐からBへ構造的に届くか 束縛・作用域・移動依存
統率
Government
適格な統率者が局所領域でBに届くか GB期の格付与・空範疇・束縛領域

木の節点、句、構成素の読み方に戻る場合は、句構造と構文木の記事が前提になります。

格理論とθ理論はなぜ別なのか

格とθ役割は、同じ名詞句を扱うため重なって見えます。しかし受動文とraisingが、両者を分ける必要を示します。

同じThemeが対格にも主格にもなる

The police arrested John.とJohn was arrested.で、JohnはどちらもThemeです。ところが能動文では対格、受動文では主格です。

θ理論の問い
Johnはどの述語から、どの参加者役割を受けるか。

格理論の問い
Johnはどの構造位置・主要部によって名詞句として認可されるか。

raisingのHe seems to leave.でも、Heはleaveの項でありながら、主節Tから主格を得ます。θ役割を与える述語と格を認可する主要部は一致しなくてよいのです。

格は意味役の別名ではない

Agentだから主格、Themeだから対格と決めると、受動文のTheme主語、経験者主語、quirky caseを説明できません。格標識が意味解釈に寄与する言語・構文はありますが、それでも格とθ役割を同じ概念にはしません。

θ役割、θ基準、受動・raisingでの役割保持は、θ理論の記事で説明しています。

同じ名詞句のθ役割と格認可を能動、受動、繰り上げ、ECMで切り分ける図
意味上の参加者関係と、NOM・ACCを得る位置は別々に追跡します。

後の理論ではどうなった?|別の問いを保ちつつ接続方法を変える

現代の分析でも、意味役と名詞句ライセンシングは区別されます。ただし、独立したθ理論モジュールと格理論モジュールの境界を固定するより、Merge位置、v・Voice、Case・φ素性、意味インターフェースへ条件を配分します。

格理論とKPは何が違うのか

格理論が「名詞句はどこでCaseを認可されるか」を問うのに対し、KP仮説は「格を名詞句内部の構造として表すなら、どんな投射を置くか」を問います。

KPは格を担うK主要部を仮定する

DPの外側にK(Case)という主要部を置き、[KP K [DP … ]]という構造を作る分析があります。日本語の「が・を・に」、所有構造、格一致などをKと結びつける提案です。

格理論
DPが格を得なければならないという認可条件を扱う。

KP分析
格を担う構造層Kを名詞句の内部・外縁に置く。

格理論を採用すれば必ずKPを置くわけでも、KPを置けば古典的格フィルターをそのまま採用するわけでもありません。説明のレベルが違います。

KPはすべての分析に必須ではない

Kを独立主要部として統語木に表すか、DやPの素性として扱うか、形態部門で実現するかには分析差があります。KPは後期GBからミニマリスト期の名詞句研究で有力になった道具ですが、単一の全領域的な標準解ではありません。

KPの内部構造、NP・DPとの違い、日本語の格助詞への適用と限界は、KP(格句)の記事で独立して扱います。

ミニマリストでは格とGovernmentをどう捉えるのか

ミニマリスト・プログラムは、名詞句が認可されなければならないという観察を捨てません。説明に必要な装置を減らし、一般的な構造構築・探索・解釈から導けるかを問います。

Case素性はAgreeで値を得る

代表的な分析では、DPは未評価のCase素性を持ち、TやvがProbeとして近いGoalを探索します。Case素性とProbe–Goal Agreeの分析では、φ素性やCaseが値を得て、必要ならDPが主語位置へInternal Mergeします。

  • T:主語DPとAgreeし、nominativeを認可する
  • v:目的語DPとAgreeし、accusativeを認可する
  • DP:Person・Number・Genderなどのφ素性と未評価Caseを持つと分析される

これは基本図であり、ergative、quirky case、差異的目的語標示まで一律に説明する完成表ではありません。

局所性はProbe–Goal探索とphaseへ移る

Governmentの局所性は、Minimal Link Condition、Relativized Minimality、Phase TheoryとPICなどに分解されます。近いGoalを飛び越えず、Transfer済みの領域へ自由に戻れないという条件です。

古典的Governmentの局所関係が現代理論でAgreeやphaseへ分解される出発点を示す比較図
局所性の観察は残りますが、現代理論では一つのGovernment関係ではなく、探索・最短性・phaseなどが分担します。

抽象Caseだけでは足りない可能性も検証される

近年の名詞句ライセンシング研究には、形態格、抽象Case、φ一致、談話・情報構造を切り離す提案があります。ある言語でCaseが値付けされても、別の認可条件が必要なことがあるからです。

「ミニマリストでは格理論がなくなった」「GovernmentがAgreeへ名前を変えただけ」と言い切るのは正確ではありません。格認可の問いは継続し、Governmentが担った複数の仕事は別々の原理へ再編されています。

後の理論ではどうなった?|現象を保存し、理論部品を減らす

変化の方向は、受動文やraisingでCaseが必要に見える事実を捨てることではありません。Case Filter、Government、格吸収が一組で説明した現象を、Merge、Agree、機能主要部、局所探索、Spell-Out、完全解釈からどこまで導けるかを試すことです。

Agree、Probe、Goal、phaseの基礎はミニマリスト・プログラムの記事へ、構造構築そのものはMergeの記事へつながります。

まとめ|格理論は名詞句の「居場所」を説明する

格理論を学ぶと、名詞句がなぜその位置に現れ、移動するのかを一つの問いで追えます。

  • 形態格は語形に現れ、抽象格は語形が同じDPにも必要とされる
  • 格フィルターは、発音されるDPがCaseを持つことを求めるGB期の一般化である
  • 構造格は統語配置に強く依存し、内在格は特定の主要部・意味関係と結びつく
  • 古典的GBでは、定形INFLが主格、能動他動詞が対格を認可した
  • 受動・raisingではDPが主語位置へ移って主格を得る
  • ECMでは主節側の動詞が埋め込み主語を対格として認可する
  • Governmentはdominanceやc-commandと同一ではなく、統率者と局所領域を含む歴史的概念である
  • 格理論とθ理論は、名詞句の認可と述語の参加者関係という別の問いに答える
  • KPは格をKという構造層で表す仮説であり、格理論そのものとは責務が違う
  • ミニマリスト以降は、Case・Governmentの仕事をAgree、T・v、局所性、phaseへ再配分する
格理論のまとめとして能動、受動、繰り上げ、ECMの格認可を比較する図
四つの構文を「誰が誰の参加者か」だけでなく、「DPはどこで格を認可されるか」という軸で見直すと、移動の理由がつながります。

Johnの語形が主語でも目的語でも変わらないという疑問は、受動、raising、ECM、局所性までつながります。後代理論はこの問題を消さず、一般的な探索と構造構築から説明し直してきました。

参考資料

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主格を認可するINFLや後のTが、節全体の中でどんな機能を担うのかは、機能範疇のAUX・INFL・T・C・vの再編とあわせて読むと整理できます。

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