【文型】第2文型 be動詞の本当のコア

英文法
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この記事では、〈第2文型〉と呼ばれるSVCの文型、そしてその代表的な動詞であるbe動詞について扱います。

一般的に、SVCやbe動詞の説明として、

S=Cの関係になる

と言われることが多いですが、実はこの説明には問題点があります。

今回は、

  • 従来の一般的なBEの説明の問題点
  • 代替案としてのBEのコア
  • BEのコアの利点

このような内容を通して、第2文型SVCとbe動詞についての理解を深めていきましょう。

第2文型とBEのコア
この記事ではbe動詞を「イコール」と説明することを否定するわけではありません。be動詞に対する1つのアプローチの提案として受け止めて頂ければ幸いです。「S=C」の説明に対する個人的な意見はこの記事の最後に書いています。
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従来の説明の不得意な点

まずは、一般的な「S=C」という説明を考えてみましょう。

be動詞は、「S=Cの関係」を作る。また、C(補語)の位置に置かれるのは、名詞か形容詞である

こんな説明を聞いたことがあるはずです。

しかし冒頭に書いた通り、この説明に対してく2つの指摘が可能です。

  1. 「S=Cの関係」を作る
  2. C(補語)に置かれるのは、名詞か形容詞である
1つずつ解説します。

問題点①

まず、「S=Cの関係」という説明に1つ目の問題点があります。

例文(a) Tom is a doctor.

いきなりですが、(a)において、「Tom = a doctor」という方程式は成立しません

「イコール」という記号は、左右を入れ替えても意味が変わらないということを意味します。

つまり、「トムは医者だ」という関係性は成立しますが、その両辺を入れ替えた「医者はトムだ」という関係性は成立しません。

「医者はトムだ」という文は、「無作為に抽出してきた医者は(どんな医者でも全員)トムである」を意味するのです。言うまでもなくこの世の全ての医者がトムであることはあり得ません。

したがって、「S=C」という説明が不十分であることがお分かり頂けると思います。

問題点②

2つ目の問題点は、補語になるのは〈名詞〉か〈形容詞〉の2つだけだとしている点です。

そもそも〈5文型〉の要素は、〈名詞〉〈動詞〉〈形容詞〉の3つだけです。

つまり、その3つ以外の要素は〈5文型〉のために不必要だと判断されてしまうのです。

次の例文を見てみましょう。

例文(b) I am happy. 第2文型
(c) I am here. 第1文型
(d) My father is in the kitchen. 第1文型

例文(c)

(c)では、  ‘here’ は〈副詞〉なので、文型には関係のない要素として判断されてしまいます。よって、(c)はSVの第1文型となります。

しかし、(b)も(c)も表している内容はほとんど同じです。

(bが「私は幸せ」だという「私の状態」を表しているのと同様に、(c)も「私はここにいる」という「私の状態」を表しています。

つまり、(b)も(c)も「私の状態」を表しているという点は同じなのに、〈品詞〉の違いだけで〈文型〉が異なるとされるのです。

例文(d)

そのことは(d)でも当てはまります。

(d)は「私の父親は台所にいる」という「私の父親の状態」が ‘in the kitchen’ という〈前置詞句〉で示されたものです。

〈前置詞〉は5文型には必要のない要素としてカウントされるので、(d)も当然、SVの第1文型と判断されてしまいます。

例文からわかること

(c)の ‘I am here’ は「私=ここにいる状態」、 (d)の ‘My father is in the kitchen’ は「私の父親=台所にいる状態」という意味になり、従来の説明で言うところの「イコール関係」が成り立つとされるはずです。

「イコール関係」が適切な表現ではないということは先ほど書いた通りですが、今回はあえてその表現を使っています。

つまり、従来の説明は「S=C」と言いながらも、‘I am here’‘My father is in the kitchen’ がそれぞれ、「I = here」「 My father= in the kitchen」と言えるはずなのに、‘here’ が〈副詞〉、‘in the kitchen’ が〈前置詞句〉だからという理由で、第2文型として容認しないというスタンスをとっているのです。

このスタンスは、明らかに自己矛盾を含んでいます。

要約:2つの問題点

今までの話をまとめると、

  1. どんな場合でも、S=Cという関係性が成立する訳ではない ←例文(a)から
  2.  C(補語)に置かれるのは、名詞と形容詞だけに限られない ←例文(c),(d)から

この2点が指摘として挙げられるでしょう。

それではこの点を上手くフォローするにはどうすれば良いのでしょうか?

それが次に提案するBEのコアです。

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BEのコア・本質

ここから本編に入っていきましょう。

大事な前提

ここからの説明における重要なお知らせを書いておきます。

〈品詞〉の概念を持ち込まないようにするため、S(主語)やC(補語)などの表記を用いず、AとBという表記を用いる

S(主語)に関しては別に問題はないのですが、C(補語)という記号を見ると、「補語には名詞か形容詞がくる」などの品詞のイメージが出てきてしまうので、AとBという文字を使うことにしています。

BEのコア

まず、「BEのコア」という用語の意味を明らかにしておきましょう。

BEのコアbe動詞の根底にある普遍的な意味のことをBEのコアと呼ぶ

そして、BEのコアを示すと以下のようになります。

be動詞のコアと本質
何やら抽象的でイメージが浮かびにくいと思うので、実際に例文で確認してみたいと思います。

例文

例文(a) Tom is a doctor.
(b) I am happy.
(c) I am here.
(d) My father is in the kitchen.

この例文に先ほど紹介したBEのコアの考え方を当てはめて見たいと思います。

例文 (a)

(a) Tom is a doctor.

この例文に、ABという〈場〉に在る」というBEのコアを適用してみましょう。この例文では、A‘Tom’Bという〈場〉‘a doctor’に相当します。

つまり、トム医者という集合の〈場〉に在る」というニュアンスが出てきます。

例文 (b)

(b) I am happy.

この例文にも、ABという〈場〉に在る」というBEのコアを適用してみましょう。

この例文では、A‘I’Bという〈場〉 ‘happy’に相当します。

I am happyにおけるBEの本質は「私は幸せな状態に在る」

‘happy’という空間に ‘I’が取り込まれているようなイメージです。

例文 (c) (d)

そろそろイメージも浮かびやすくなってきたと思うので、例文を一気に2つやってみましょう。

(c) I am here.
(d) My father is in the kitchen.

それぞれをBEのコアに当てはまると、次のようになります。
「私はここという場にある」「私の父親はキッチンという場に在る」がBEのコア

‘here’‘in the kitchen’という物理的な空間に、‘I’ ‘My father’が存在しているイメージです。

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今までの例文から分かること

例文(a) Tom is a doctor.
(b) I am happy.
(c) I am here.
(d) My father is in the kitchen.

注目すべきは、Bに相当する部分です。

従来の〈五文型〉の考えでは、Bの位置に置かれるのは名詞か形容詞の2択だけでした。

しかし、BEのコアは、Bに置かれる要素は何でも構わないのです。

Bという〈場〉を構成するのは、名詞か形容詞以外でも良い(副詞、前置詞句など)

表にまとめててみると

〈場〉〈場〉の種類〈場〉を構成する品詞
(a) a doctor医者という「職業」名詞句
(b) happy幸せという「状態」形容詞
(c) hereここという「場所」副詞
(d) in the kitchen台所にという「場所」前置詞句

〈場〉の種類としては、物理的な場所・空間を表す(c)や(d)の場合や、職業などの所属を表す(a)や、精神的な状態を表す(b)などがあります。

そして、〈場〉を構成する品詞には、名詞や形容詞はもちろん、(c)や(d)のように副詞も前置詞句も置かれることが可能です。

そうすることによって、従来の〈五文型〉では、(a)と(b)は第2文型、(c)と(d)は第1文型と区別されてきましたが、両者を同一のカテゴリーに統一することができます。

このBEのコアの利点はまた後述します。

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「S=C」という説明が可能な場合はごくわずか

be動詞で「イコール」と説明することは厳密には正しくないと書いてきましたが、確かに「S=C」の関係性成立する場合があるのも事実です。

それは、Bが構成する〈場〉の要素がAだけの場合です。

その1例として、〈最上級〉を伴った表現が挙げられます。

例文Mt. Fuji is the highest mountain in Japan.

この例文の場合、「イコール」という関係は成立します。

というのも、‘the highest mountain in Japan’という存在は、この世に1つしか存在しないからです。

「日本で一番高い山」と言っているのに、一番が複数個あることはあり得ません。

富士山日本で一番高い山だ日本で一番高い山富士山だ」の両方とも意味は同じことからも、「イコール」という説明が可能なことが分かります。

このように、〈最上級〉を伴った時のように、主語であるA〈場〉であるBの集合が完璧に一致した場合だけ、従来の説明で言われてきたような「イコール」という表現が可能なのです。

「厳密にイコールと言えるかどうかなんてどうでもよい」と言われればそれまでですが、英文法を突き詰めて考えたい方にとっては必要な知識だと思います。
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BEのコアの利点

BEのコアは何となく理解できたかと思いますが、そもそもBEのコアを理解することの意義がいまいちピンと来ない方もいるはずです。

最後に、BEのコアを知ることのメリットを説明しておきます。

BEのコアの利点英文法におけるbe動詞を使うすべての文法事項に一貫性を与えることができる
そもそもBEのコアは、「be動詞の根底にある普遍的な意味」のことなので、当然の帰結です。

それでは、英文法におけるbe動詞を使うすべての文法事項をまとめてみます。

BEを使う文法事項

  1. They are students. (be+名詞)
  2. I am happy. (be+形容詞)
  3. I am here. (be+副詞)
  4. My mother is in the garden. (be+前置詞句)
  5. The baby is sleeping now. (be+Ving; 進行形)
  6. The window is broken. (be+p.p; 受動態)
  7. The train is to arrive on time. (be+to不定詞; be to 構文)

一応、上の7個がbe動詞を使う構文の場合分けになっています(厳密には、あと1種類存在しますが今回は扱いませんでした)。

1.~7.までの全ての構文の間に、BEのコアである「AがBという〈場〉に在る」という共通の意味を見出せることが分かるはずです。

5.と6.からBEのコアをイメージするのは少し難しいかもしれないので、図示しておきます。

⑤では、〈場〉を構成するのは〈現在分詞〉、⑥では、〈場〉を構成するのは〈過去分詞〉になっています。そして両者は「状態を表す〈場〉」という点が共通です。

すなわち、be動詞の後に置かれるもの(つまり〈場〉)は名詞や形容詞だけではなく、副詞や前置詞句、現在分詞でも過去分詞でもto不定詞でも良いということです(このことを実感して頂きたかったので、最初に「S(主語)やCで(補語)はなく、AとBという表記を用いる」という前提を明記したのです)

特に〈学校文法〉では、5.6.7.の〈進行形〉〈受動態〉〈to不定詞〉は全く異なる文法事項として扱われていますが、BEのコアを押さえることで、その3つの構文の間に相互の関連性や一貫性が見出されるのです。

逆のことを言えば、〈学校文法〉は構文を綺麗に分類・整理することに重点を置いた文法形体だと言えますね。

✔応用編「コアを理解すること」

察しの良い方はもうお気付きだと思いますが、この種のアプローチは「英文法において登場頻度の高い動詞になればなるほど効果を発揮する」と言えます。つまり、‘have’ などの動詞には絶大な効果を発揮してくれるでしょう。というのも、‘have’ という動詞は、単純に「持っている」という意味以外にも、〈完了形〉、〈使役構文〉、〈被害・受益構文〉…など様々な構文で用いられる所謂〈基本語〉というものです。この ‘have’ においても、コアを見出すことができれば、数ある構文間の間に繋がりや一貫性を与えることができるでしょう。
最初はBEのコアの有用性に共感できなかった方も、少しはその捉え方に価値を見出せたのではないでしょうか?
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全体のまとめ

この記事では、BEのコアを理解することで、be動詞を使う構文に一貫性を与えることが可能だということをお伝えしてきました。

〈進行形〉や〈受動態〉など本来は別の文法事項だと扱われてきたものの間に、一貫した関連性や繋がりを見出せることが、BEのコアの大きな貢献であると言えるでしょう。

今回の記事のポイントです

  • SVCにおいて「S=C」という表現は成立しない場合がほとんど
    ➤➤「イコール」が成立するのは、最上級を伴った場合など
  • BEのコアは、【AがBという〈場〉に在る】
  • 〈場〉は、形容詞や名詞に限らず、副詞、前置詞句、現在分詞や過去分詞、to不定詞でも良い
  • BEのコアを知ることは、多種多様な構文間に相互関連や一貫性を与える
この記事で出てきた用語も整理しておきます。
〈文型〉〈be動詞〉〈進行形〉〈現在分詞〉〈受動態〉〈過去分詞〉
〈最上級〉〈分類文法〉〈基本語〉

参考文献

  • C.T.Onions (2015), An Advanced English Syntax: Based on the Principles and Requirements of the Grammatical Society,Routledge.
  • Radden & Dirven (2007), Cognitive English Grammar, John Benjamins Pub Co.
  • 池上嘉彦 (2016)『〈英文法〉を考える』 ちくま学芸文庫
  • 佐藤芳明 他 (2009) 『レキシカル・グラマーへの招待 -新しい教育英文法の可能性』開拓社
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最後に 個人的な意見として

今回の記事では、be動詞を「イコール」と説明することに対して反対立場をとるような内容を扱いました。

しかし、個人的には決して「イコール」という説明が不適切とは思いません。

be動詞を初めて学習する生徒にとって、いきなりBEのコアは【AがBという〈場〉にある】と抽象的な説明をしても、彼らにとっては理解しがたいでしょう。

そもそもBEのコアの最大の意義は、本編で見てきたように、〈進行形〉や〈受動態〉などのbe動詞を使う文法事項の間に一貫性を与えることでした。

つまり、BEのコアを知ることは、〈進行形〉や〈受動態〉をある程度学習し、英文法の知識を持った生徒にとって、初めてその有効性を発揮するのです。

そう考えると、〈進行形〉や〈受動態〉を学習したことがなく、ましてや〈形容詞〉や〈副詞〉、〈前置詞〉などの区別も覚束ない英語初学者に対して、いきなりBEのコアを突き付けるのは、彼らの理解の枠を超えているという以前に、そもそものBEのコアの意義を潰してしまっていると言えるでしょう。

なにより、「イコール」というシンプルでインパクトのある説明は彼らにとっては馴染みやすいものであるはずです。

何事も適材適所があるように、英文法のアイデアにも「向き不向き」というものがあるものです。

「S=C」と理解している、またはそう説明している方たちを揶揄するつもりもありませんし、むしろその方が有効な場合だってあることは十分承知しています。

重要なのは、「S=C」と説明するにしろ、【AがBという〈場〉にある】というBEのコアを説明するにしろ、それぞれのアイデアの良い点、不得意な点をしっかりと把握し、目的に応じて使い分けることだと思っています。

このサイトでは他の説明を否定する意図は一切はありませんので、「悪い点」などの粗探しを連想させるような表現は使わないように心がけているつもりです。

「一般的な説明を否定するつもりはない」、

これが当サイトの理念であり、【多角的視点】という名の英文法のスパイスに込めた私なりの信念だと信じています。

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一緒に広い視野をもって英文法を覗いてみましょう。
きっとそこには奥深く、多面的な英文法の世界が広がっているはずですよ。

 

今回もご覧頂きありがとうございました。
また次の記事でお会いしましょう。

 

コメント

  1. 匿名 より:

    すごくすごく腑に落ちました!
    ありがとうございました。