【たしかに】動名詞と現在分詞をまとめて”ing形”と扱えば色々と収まりが良いのではないか?

動名詞と現在分詞をまとめてing形にする
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英語には、-ingの形をした文法事項がいくつか存在します。〈動名詞〉と〈現在分詞〉です。

両者は、もちろん名前が違うのですから英文法の参考書では違うチャプターで登場することでしょう。歴史的にも機能的にも異なります。

ただし「作り方」としては全く同じです。例えば、studyという動詞があれば、その動名詞もstudyingで、現在分詞も同じくstudyingです。このingを付けるルールはいかなる動詞であっても共通です。

何を当たり前をのことを、を思うかもしれないですが、だったら次のように思いませんか?

「だったらわざわざ同じstudyingという同じ形をしているなら、動名詞と現在分詞と区別しないで、”ing形”で統一すれば良いじゃないか?」

この”ing形”という発想は、動名詞と現在分分詞を当たり前のように区別して学習してきた私たちにとっては馴染みがありませんが、実はそう考えると色々と話がスッキリしたりもします。

今回は、そんな”ing形”という考え方のメリット、そして「なぜ現にそうなっていないのか?」という問いについて考えをまとめていきます。

動名詞と現在分詞をまとめてing形とする発想
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そもそも動名詞と現在分詞の説明

この記事は動名詞と現在分詞をまとめて”ing形”と扱うことについて考える訳なので、本題に入る前に、そもそも何と何がまとめられていようとしているのかを理解しておくことは欠かせません。

簡単に動名詞と現在分詞の辞書的な説明をしておきます。

動名詞(geround)とは?

動名詞は、動詞に “-ing”が付いて「名詞」としての機能を果たす形 をいいます。たとえば、”read”に “-ing”をつけた reading が「読むこと」という名詞扱いで使われる場合が動名詞です。

例:

  • Reading books is fun.
    (本を読むことは楽しい)
    → Reading(読むこと)が文の主語として機能しており、「本を読むことは楽しい」という意味になる。
  • I enjoy swimming.
    (私は泳ぐことを楽しむ)
    → swimming(泳ぐこと)が「enjoy」の目的語(名詞の働き)として使われている。
  • Her hobby is painting.
    (彼女の趣味は絵を描くことだ)
    → painting(絵を描くこと)が補語(名詞句)として機能し、「彼女の趣味は絵を描くことです」というニュアンスになる。

現在分詞(present participle)とは?

一方で、現在分詞は、動詞に “-ing”が付いて「形容詞的・副詞的な修飾機能」や「進行形の一部」を担う形 として説明されます。学校文法の典型的な捉え方では、-ing が何かを修飾したり、動作を進行中であることを表したりするときに「現在分詞」と呼ばれます。

例:

  • The boy running in the park is my brother.
    (公園を走っているその少年は私の弟だ)
    → running は「走っている(最中の)」という形容詞のような働きをしており、the boy を(後置)修飾している。
  • He was watching TV when I called.
    (私が電話をした時彼はテレビを見ていた)
    → was watching は進行形として、be動詞の補語になっている。
  • Looking at the sky, I noticed it was getting dark.
    (空を見ると、辺りが暗くなっていることに気付いた)
    → Looking は副詞的(分詞構文)に使われ、主節を修飾している。

つまり、現在分詞は主に「形容詞的(名詞を修飾)」「副詞的(分詞構文)」「進行形の構成要素」として機能しており、文の中で「名詞の役割」ではなく「修飾表現や動作の状態を表す役割」を担うことが多いわけです。

まとめ:名詞としての “-ing”と、形容詞・副詞としての “-ing”

学校文法においては、

  • 名詞的に使われる -ing → 動名詞
  • 形容詞・副詞的に使われる -ing → 現在分詞

というように区別されてきました。

たとえば「Reading books is fun」では、Reading が名詞扱いで主語なので動名詞として説明され、「Reading a book, he fell asleep.」では、reading が副詞的修飾(分詞構文)なので現在分詞とされる――そうした具合です。

でも同じing形の異なる用法と考えれば良いのでは?

ようやく本題の話になりました。

動名詞と現在分詞は、統語的(文のどこに置かれるのか)、意味的(どんな意味になるのか?)は異なるのは当たり前です(※)。

統語的に異なるのだから、意味も異なるのは当たり前、と考えることもできます。つまり、構造が先にあってその構造に応じて意味が後付けされるのではないか?という考え方です。

ただ、その振る舞いの違いは、「同じing形の中の異なる用法として表出しているから」と考えることもできなくはないわけです。そして当記事ではこの発想をできる限り推し進めてみようという試みです。

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歴史的には動名詞と現在分詞は完全に異なる出自

最初に歴史的な事実を述べておきます。

動名詞 (gerund) と現在分詞 (present participle) は、現代ではいずれも “-ing”という同じ形で現れますが、実は英語史的にはもともと別々の形態でした。

古い時代の英語では、名詞として機能する “-ing”と、形容詞・副詞的に機能する “-ing”がきちんと区別されていた時期があったのです。

ここでは、古英語から中英語、そして現代英語へと至る流れをざっくり眺めながら、なぜこの2つが最終的に同じ形になってしまったのかを見ていきましょう。

英語史の流れをざっくり

古い時代の英語(特に古英語や中英語)の語尾変化は、現在よりもずっと豊富でした。

  • 古英語 (Old English, 450頃~1100頃):
    名詞や形容詞、動詞が多彩に変化し、動詞の活用形や語尾によって文法機能を示す仕組みが強かった。
  • 中英語 (Middle English, 1100頃~1500頃):
    ノルマン・コンクエスト以降、フランス語やラテン語などの影響を受け、語尾変化が大幅に簡略化された。
  • 初期近代英語 (Early Modern English, 1500頃~1700頃):
    シェイクスピアの時代にあたる。文法はより現代英語に近づき、いま私たちが使う “-ing”形が広まっていく。

このように、語尾変化が大きく崩れていく過程で、動詞や名詞の語形が徐々に統合されていきました。結果として、名詞的機能をもつ形や分詞的機能をもつ形が「-ing」という同じ綴りにまとまりはじめたのです。

2. 動名詞と現在分詞の歴史的背景

動名詞と現在分詞が、それぞれ別の出自をもつと言われる代表的な例が、古英語における以下のような語尾です。

●動名詞の由来:

動名詞はかつて、「-ung」「-ing」「-ung(a)」などの形をしていたとされています。

例えば古英語の書物には -ung や -ing という形で名詞化された単語が見られ、「何かをする行為」として使われていました。

●現在分詞の由来:

現在分詞のご先祖さんは、「-ende」「-and」などです。

古英語で分詞を作るときは -ende や -and を末尾につけて形容詞・副詞的に使っていたと考えられています。これは現代ドイツ語の分詞形 -end にも通じる部分です。

両者は同じ “-ing”に収束していった

しかし、中英語 (1100頃~1500頃) の頃から徐々に語尾変化が単純化され、名詞形も分詞形も “-ing”に統合されていったとされています。つまり、本来は名詞由来の “-ing”と、形容詞的・副詞的な分詞を表す “-ende”が、歴史の変遷とともに融合してしまったわけです。

詳しい経緯には諸説ありますが、主な理由の一つとして、

  • 英語がフランス語やノルマン語、ラテン語などの影響を強く受けて、古英語の細かい語尾変化が失われた。
  • 多くの場面で “-ing”が名詞形・分詞形の両方に使われるようになり、両者の区別が曖昧になっていった。

という流れが挙げられます。

要するに、「本来は別物だったのに、語形変化が崩壊して同じ形態にまとまってしまった」わけです。

こうした統合の結果、例えば 同じ”reading”という形であっても、動名詞としてのingと、現在分詞としてのingという構造が出来上がったわけです。

単に学問的・歴史的に正しいだけ

今見てきたように、歴史的、さらには英語史という学問的には、動名詞と現在分詞は全くの別物です。

それは「学問としての事実」として向き合えばいいだけです。歴史や学問としての事実をそのまま英語学習に持ち込む必要はありません。

よく研究者が学校英語に対して「歴史的には〜」、「厳密には言語学では〜」とちょっかいをかけていますが、そのほとんどは「自分の研究成果を主張するため」と個人的には思っています。それが彼らの仕事なのですからとやかく言うつまりはありませんし、実際、古英語・中英語の文献を研究する上では「動名詞と現在分詞は同じingだ」と言うのは大問題なわけです。

ただし、今ここで考えているのは「学問」ではなく「学習」です。

一旦、歴史とか学問的緻密さは脇において、英語学習者にとって最適な英文法の捉え方を考えてみようと試みる価値は多いにあると思っています。

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動名詞と現在分詞をまとめて”ing形”と考えるとは?

ここまで何度も”ing形”という用語が出てきましたが、ここで捉え方を説明します。

“ing形”を次のように定義します。

動名詞と現在分詞をまとめて”ing形”として捉え、その中に複数の用法を認める

上記の説明は大きく2つに分解できます。

  1. 動名詞も現在分詞であっても、動詞にingを付けるルールは同じ
  2. 同じingであっても(当然元は動名詞と現在分詞だったのだから)振る舞いは異なるが、それは用法の違いに過ぎない

主張としてはこれ以上でもこれ以下でもないのですが、それぞれ関連した情報を書けると思うので、詳細チャプターを設けて解説していきます。

動名詞であれ現在分詞でingの作り方は同じ

“ing形”を支える何よりの根拠は、この形式主義です。

動名詞であれ現在分詞であれ、その動詞の屈折形(※)を見れば(現代英語においては)全く同じ形をしています。

〈屈折〉とは、言語学で動詞の形が変化することをいいます。例えば、playが過去時制ではplayedのよう屈折します。また、その屈折の際に付加された語尾を〈屈折語尾〉といいます。

仮に動名詞と現在分詞を作る時に、ルールが違う動詞が存在する場合は、両者をまとめて扱うには無理がありますが、現代英語においては幸運にも(シンプルさという意味では)どんな時も-ingの付け方は同じです。

見た目がどんな時も同じなのだから、動名詞や現在分詞に区別する必要がないという主張です。

形式重視の考え方はこんなところにも

実は、この見かけや形式に重きを置く考え方、既に皆さんの知るところで採用されています。

例えば、「be」。次の例文においてイタリック太字はいわゆる「be動詞」として扱われていますが、実は全て違うものとして言語学では分析されています。

  • I am a student.
  • You are not a doctor.
  • He is playing soccer.
  • We were kicked.
  • They wish they were rich.
どのように違うのか知りたい方に向けて一応解説します。「補語を取る動詞としてのbe動詞」、「否定文を作るための相助動詞」、「進行相を表すための相助動詞」、「受動態を作るための助動詞」、「仮定法の助動詞」。これらは本来は別々の要素です。

ここで言いたいことは、言語学の主張が正しいということではありません(これは先に自ら批判した通りです)。

言いたいことは、本来は違うものを見た目や形式が似ている(ほとんどの場合で同じ)からという理由で同じ文法事項として扱うという発想は、英文法学習の中でよくあることだ、ということです。

このことを踏まえると、ingという形式で完全に一致する動名詞と現在分詞をまとめて”ing”とまとめて考えることは、十分な説得力があることが分かるでしょう。

ing形の中の異なる用法にすぎない

形式を重視して仮に”ing形”を認めたとして、次の問題は使われ方が明らかに違うという点です。本来は別々だった動名詞と現在分詞を同じと扱おうとしているわけですからこれは当然です。

例えば、下記3つの例文では全て同じreadingという形式が登場しますが、用法や訳出の観点では区別されます。

  1. Reading books is fun.(名詞的)
  2. The boy reading books is Tom.(形容詞的)
  3. Reading books, I fell asleep.(副詞的)

“ing形”の発想では、このような振る舞いの違いを単なる「用法の違い」として受け止めます。

つまり”ing形”の中に、少なくとも3つの用法(名詞的用法・形容詞的用法・副詞的用法)があると考えれば話は簡単に片付きます。

例文 従来の発想 ing形の発想
例文1 動名詞 ing形(名詞的用法)
例文2 現在分詞(後置修飾) ing形(形容詞的用法)
例文3 現在分詞(分詞構文) ing形(副詞的用法)

“ing形”を導入すれば振る舞いの違いは単なる用法の違いにすぎません。

まずは大きなカテゴリーを作って分岐させる思考

英文法の話からは飛び出しますが、物事を切り分けるときの思考プロセスとして、「まずは最大限括れるカテゴリーを設け、その下位階層で分類していく」という考え方があります。この延長線にコンサル大好きMECEと呼ばれる思考法があるわけです。社会の波に揉まれ始め、英文法における思考法って実は単に英文法だけに収まらない力を秘めていると感じている今日です。

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一番のメリットはto不定詞との対比構造の中で扱えるということ

さて、今見てきた「ing形の中で異なる用法として考える」という発想、何かに似ていると思いませんか?見出しにもある通り、to不定詞です。

to不定詞には、よく知られた3つの用法があります。

用法 特徴
名詞的用法 「〜すること」S,O,Cに置かれる
形容詞的用法 「〜するための」名詞を修飾
副詞的用法 「〜するために」「〜して」「〜なんて」動詞や文を修飾

このto不定詞の用法は、まさに先に見た”ing形”の用法と一致するのです。

“ing形”を想定する何よりの利点は、「to形とing形」といういわゆる〈準動詞〉を下記のテーブルのように説明できることです。

用法 to不定詞 ing形
名詞的用法 〜すること 〜すること(動名詞)
形容詞的用法 〜するための 〜している(分詞による修飾)
副詞的用法 目的・結果・感情の原因 理由・並列・原因(分詞構文)

このようにto形とing形という対の関係で考えることができ、動名詞と現在分詞と区別するより「収まりが良い」というわけです。

実は動名詞が名詞を修飾することがある

動名詞には「形容詞的な用法」もあることにはあります。詳しくは下記の記事をどうぞ。

【見落としがち】実は動名詞には名詞を修飾する形容詞的用法が存在した

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それでもなぜ動名詞と現在分詞は区別されているのか?

ここまでの話を見てくると、動名詞と現在分詞をまとめて”ing形”と扱うことは、それなりの合理的利点があるように思えます。

しかし実際は一般的にはそうなっていないのが現実です(※)。

あくまで筆者が学生だった時はほとんどの書籍では区別していましたが、現在はまとめて扱う書籍もちらほら見かけるようになって来た気がします。特に海外ではその傾向が進んでいるようです。

“ing形”が浸透していない背景は何でしょうか?

そうすることによるデメリットがあると考えるのが一般的です。しかしながら筆者が思いつく限りは、そこまで致命的な欠点や誤りはないように思えます。

唯一思いつく理由が〈過去分詞〉の存在です。

今まで意図的に過去分詞がまるで英語に存在しないかのように話を進めてきましたが、英語の分詞には当然ながら現在分詞と過去分詞があります。

結局のところ、現在分詞を新しく作った”ing形”の範疇に移行したとしても、過去分詞がある限り分詞の範疇は残り続けるわけです。

話をまとめると、動名詞と現在分詞をまとめて”ing形”と扱うのはto不定詞の存在故に収まりの良い話ではあるが、過去分詞を一人残してまでする必要はない、というなるのかなと個人的には考えています。

もし動名詞と現在分詞を混ぜられない決定的な理由や事象を思いついた方はぜひコメント欄で教えて下さい。

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まとめ

今回は、動名詞と現在分詞をまとめて”ing形”と扱うことについて議論してきました。

もともと両者は歴史的には全く別の形をしていたものの、現在の文法学習を考えるに当たってもその事実に固執する必要はないという述べ、”ing形”を採用する合理性について主張しました。

その最大の合理性は、to不定詞と対の関係として”ing形”を捉えることができ、準動詞を語る上でバランスがよくなる、というものでした。

しかしそれは過去分詞を一人残してまで採用するほどのメリットはなさそうという消極的理由によって現にそうなっていないのではないか、と考察を書きました。

ぜひこの記事を読んで何かアイデアが浮かんだ方はお気軽にコメント欄にご記入ください!

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