- 音声を聞いているうちに、設問を読む余裕がなくなる
- 選択肢を読んでいる途中で、次の問題が始まってしまう
- 「先読みしよう」と言われても、何を見ればいいのか分からない
- 1問落とすと、そのあと数問続けて崩れる
英検のリスニングでは、音声が始まってから考え始めた時点で、もう間に合わなくなる設問があります。止めることも戻すこともできないからです。
だから多くの解説が「先読みをしましょう」と書きます。ところが、そこから先の粒度に降りている記事はほとんどありません。選択肢のどこを、何秒で、どう見るのか。ここが決まらないと、実行できません。
この記事では、その部分だけを扱います。音声前・音声中・音声後の3区間に、やることを割り振るという一点に絞ります。
書き手は英検1級の保持者で、国内でも規模の大きな英語サービスの運営に携わってきた立場です。ここで示す手順は、英検協会が公表している出題形式から逆算して組み立てました。

先読みが大事なのは分かるんですけど、選択肢を読んでたら音声が始まっちゃって…

それ、全部読もうとしてるからだね。先読みって「読む」作業じゃなくて「見比べる」作業なんだ。

見比べる…?

4つの選択肢の、そろってる部分は捨てる。違ってる部分だけ拾う。それだけで「何を待てばいいか」が決まるよ。
- 音声前・音声中・音声後で、それぞれ何をするかの割り振り
- 選択肢の全文を読まずに、探す対象を1語で決める見方
- 先読みが形式として使えない大問と、その代わりにやること
- 聞き逃した1問を、2問3問に広げないための切り替え方
- 結論:音声が始まる前に、考える作業を終わらせておく
- 先読みが効くのは、同時にやる作業が減るからだ
- 先読みが使える大問と、形式として使えない大問がある
- 音声前に見るのは、選択肢の全文ではなく違いだけ
- 違いが見つからないときは、共通部分を疑う
- 先読みに使える時間は、大問の中と外で長さが違う
- 大問の種類ごとに、先読みの型を切り替える
- 音声中は、探すものを1つだけ持って聞く
- 音声が終わった数秒が、次の先読みの時間になる
- 聞き逃した1問は、その場で捨てて次を守る
- メモは3種類だけに絞る
- 級が上がるほど、先読みの重みは増していく
- 先読みの練習は、音声を流さずに始められる
- 本番の1回は、練習で何度も戻ることでしか作れない
- 3週間で先読みを習慣にする進め方
- 先読みでやりがちな失敗が4つある
- 英検リスニングの先読みに関するよくある質問
- まとめ:1回で取るための準備は、聞く前にしか置けない
結論:音声が始まる前に、考える作業を終わらせておく
この記事の主張は1文で言えます。音声中にやることを減らすために、できることを前へ動かす。それだけです。
- 先読みは時間稼ぎではない:作業の総量ではなく、置く場所を変える手段です
- 見るのは選択肢の違いだけ:全文を読もうとするから間に合いません
- 聞いたあとの数秒が次の先読み時間になる:迷い続けると、その時間が消えます
この記事が扱わない話
聞き取れない理由がどこにあるのかという診断は、ここでは扱いません。語彙が足りない段階の人が先読みだけを鍛えても、探している語自体が分からないからです。
原因の切り分けは英検リスニングの原因を分解した記事にまとめてあります。スクリプトを読んで意味が取れる段階に来ていることが、この記事の前提です。
読み終わったときの到達点
最後まで読むと、次の演習から試せる形が手に入ります。手順そのものは複雑ではありません。
- 音声が流れる前に、何を見るか
- 音声が流れているあいだ、何を待つか
- 音声が終わった直後、何をするか
先読みが効くのは、同時にやる作業が減るからだ
まず目的を正しく置き直します。ここを取り違えたまま練習すると、本番で真っ先に捨てる手になります。

準備なしで音声を迎えると、3つが重なる
何も見ないまま音声が始まると、短い時間に別々の作業が同時進行します。音を聞き取る、設問が何を求めているか理解する、選択肢を比べて決める。
このうち、止められないのは1つ目だけです。音声は待ってくれないので、崩れるのは残りの2つになります。結果として、聞こえていたのに答えを選べないという状態が生まれます。
置く場所を変えるだけで、重なりが消える
先読みがやっているのは、この3つを時間軸の上でばらす作業です。作業の量そのものは変わりません。
| 区間 | 準備なしの場合 | 準備ありの場合 |
|---|---|---|
| 音声前 | 何もしない | 設問の要求を把握する |
| 音声中 | 聞く・理解する・選ぶ | 聞くことだけに使う |
| 音声後 | 選択肢を読み比べる | 決めて、次の準備に移る |
同じ量の作業を、3つの区間に分けて置いているだけです。魔法のような効率化ではありません。
「時間がないから先読みを飛ばす」が逆効果になる理由
先読みを時間稼ぎだと理解していると、余裕がないときに真っ先に切ります。しかし切った結果、音声中の負荷が上がります。
そして音声中に崩れると、解答を決めきれずに次の設問へ入ります。先読みを切ったぶんの時間は、迷う時間として倍になって返ってきます。
効果を実感するまでに数回かかる
もう1つ知っておきたいのは、先読みが最初から楽になる手ではないことです。慣れないうちは、見比べる作業そのものが新しい負荷になります。
数回の演習を経て、見比べる動作が自動化されてから効き始めます。1回試して効果がないと判断すると、いちばん割に合わない使い方になります。
だからこそ、音を使わない段階から始める意味があります。負荷の低いところで動作を固めておけば、音声と組み合わせたときの追加負担が小さくなります。
先読みが使える大問と、形式として使えない大問がある
手順に入る前に、適用範囲を確認します。すべての設問で同じ手が使えるわけではありません。
選択肢が印刷されているかどうかで分かれる
英検協会が公表している解答形式を見ると、大問によって選択肢の扱いが違います。以下は2026年7月27日時点で公式サイトに掲載されていた内容です。
| 大問 | 解答形式 | 先読みの対象 |
|---|---|---|
| 3級・準2級の第1部 | 3肢選択・選択肢読み上げ | 紙に選択肢がない |
| それ以外の大問 | 4肢選択・選択肢印刷 | 先読みできる |
3級と準2級の第1部だけは、選択肢が音声で読み上げられます。紙の上に見るものがないので、先読みという手が成立しません。
3級の第1部にはイラストがある
ただし3級には別の手がかりがあります。公表内容では、3級の第1部は「補助イラスト付き」と明記されています。
つまりこの大問で先読みの対象になるのは、選択肢ではなくイラストです。どこで、誰と誰が、何をしている場面なのかを、音声の前に把握しておけます。
読み上げ型の大問で聞くべき一点
見るものがないなら、聞き方で対応します。この形式は会話の最後の発話に対する応答を選ぶものです。
したがって集中すべき場所は決まっています。最後の一言が、質問なのか、依頼なのか、誘いなのか。この一点だけを取れば、かみ合わない応答を落とせます。
読み上げられる選択肢は、記憶に頼るしかない
この形式では、3つの応答が音声で流れます。紙に残らないので、聞いた直後に判断を終える必要があります。
対処としては、1つ目が流れた時点で仮の答えを決めておく方法があります。2つ目・3つ目を聞きながら、仮の答えより良いものが出たら差し替える。3つすべてを覚えてから比べようとすると、間に合いません。
音声前に見るのは、選択肢の全文ではなく違いだけ
ここから手順の本体に入ります。最初の区間でやることは1つだけです。

そろっている部分は読まなくていい
4つの選択肢は、多くの場合、似た形で作られています。主語や動詞が共通していて、末尾だけが違うといった構造です。
共通部分を読んでも情報は得られません。縦に見比べて、そろっていない場所だけに目を止めてください。これだけで読む量が数分の1になります。
違いの位置が、聞くべき対象を教えてくれる
違っている部分が何を指しているかで、待つべきものが決まります。型は多くありません。
| 違いの正体 | 音声で待つもの | 頭に置く一語 |
|---|---|---|
| 人を表す語がばらばら | 誰が動作をしたか | だれ |
| 数字や曜日がばらばら | 時刻・回数・期日 | いつ |
| 場所を表す語がばらばら | どこで起きたか | どこ |
| 動作を表す語がばらばら | 何をしたか | なに |
| 理由を表す表現がばらばら | 原因や目的 | なぜ |
頭に置くのは日本語の一語で十分です。英語で構える必要はありません。
使える時間は十数秒しかない
設問と設問のあいだに与えられる間隔は、それほど長くありません。解答を塗る時間も含めると、次の設問に使えるのは十数秒という感覚になります。
この長さで全文4つを読むのは不可能です。違いだけを拾う見方は、精神論ではなく時間の制約から出てくる必然だと考えてください。
先読みは1問先までにとどめる
余裕があるときほど、2問先3問先まで見たくなります。しかし抱える情報が増えると、音声中に混ざります。
原則は1問先までです。次の1問について「だれ」なのか「いつ」なのかが決まっていれば、それ以上は要りません。
決めた一語は、口の形で覚えておく
拾った一語を覚えておく方法にも工夫があります。頭の中で繰り返すより、声を出さずに口だけ動かすほうが残ります。
音声が始まったら口の動きは止めますが、直前まで動かしていた語は消えにくくなります。紙に書くと時間を使うので、書かずに残す手段を持っておくと役立ちます。
この方法は本番だけの小技ではありません。練習の段階から同じことをしておくと、動作が固定されます。
違いが見つからないときは、共通部分を疑う
型どおりに進まない設問もあります。ここでの対処を持っておくと、詰まりが減ります。
4つとも似ていて違いが見えない場合
まれに、選択肢の差が語順や細部にしかないことがあります。この場合は違いを探すのを打ち切ってください。
無理に見つけようとすると、そこで時間を使い切ります。代わりに、4つに共通している話題だけを頭に入れて音声を待ちます。共通部分そのものが、話の主題を教えています。
選択肢が長い設問への対処
級が上がると、選択肢が1行を超えることがあります。読み切れないと感じたら、各選択肢の先頭の数語だけを縦に比べてください。
英語は主語と動詞が前に来るため、先頭を見るだけで「誰が何をした」の輪郭がつかめます。後半の修飾部分は、音声のあとで確認すれば足ります。
時間切れで先読みできなかったとき
前の設問で迷い、先読みできないまま音声が始まることもあります。この場合は選択肢を見るのをやめ、音声だけに集中してください。
途中から選択肢を読み始めると、聞くほうも読むほうも中途半端になります。聞き終わってから読むほうが、結果的に取れる確率は上がります。
先読みに使える時間は、大問の中と外で長さが違う
時間の話をもう少し細かく見ます。ここを知っていると、どこで余裕が生まれるかが分かります。
設問と設問のあいだにある短い間隔
同じ大問の中では、1問終わると間もなく次の音声が始まります。ここで使えるのは、解答を塗る時間を差し引いた残りだけです。
だから同一大問の中では、先読みの動作を短く固定しておく必要があります。迷う余地を残さない形にしておくことが、そのまま時間の確保になります。
大問の切れ目には説明の読み上げが入る
一方、大問と大問のあいだには形式の説明が流れます。この読み上げの内容は、事前に知っていれば聞く必要がありません。
つまりここが、まとまった時間を取れる唯一の場所です。次の大問の最初の2問ぶんまで先読みを進めておくと、大問の入りが安定します。
試験開始前の時間も使える
さらに前段として、リスニングが始まる前の案内の時間があります。問題冊子を開いてよいかどうかは会場の指示に従う必要がありますが、許可されている範囲で第1問を見ておけると、出だしの1問を落としにくくなります。
大問の種類ごとに、先読みの型を切り替える
先読みは1種類ではありません。素材の性質によって、見るべき場所が変わります。
会話の内容一致では、話し手の関係を先に押さえる
会話を素材にする大問では、登場するのは2人程度です。選択肢に人を表す語が並んでいたら、どちらの発言かを聞き分ける設問だと分かります。
この場合、音声の最初の数秒に集中を寄せます。誰と誰の会話なのかが最初に決まれば、その後の発言は自動的に振り分けられます。
文の内容一致では、話の展開を待ち構える
説明文や物語文を素材にする大問では、話し手は1人です。選択肢の違いが理由や結果を指しているなら、展開の後半に答えがあります。
前半で出てくる情報は前提であることが多く、そのまま答えになる比率は下がります。最後まで気を抜かない構えが、この形式では特に要ります。
準1級以上で加わる形式への構え
準1級からはアナウンスなどを扱う形式が加わり、1級ではインタビューも出ます。どちらも、二人の雑談とも一人語りの説明とも組み立てが異なります。
特に前者では、状況の設定が先に与えられる場合があります。与えられた状況のなかで自分が何を選ぶべきかを問う形になるため、設問側の条件を先に押さえておく価値が大きくなります。
音声中は、探すものを1つだけ持って聞く
2つ目の区間に進みます。ここでやることは、前の区間で決めたことの実行だけです。

待ち構える対象を1つに絞る
先読みで「いつ」と決めたなら、音声中は時間の情報だけを待ちます。それ以外の情報は流れていってかまいません。
複数の対象を同時に待つと、どれも取れなくなります。1つに絞るからこそ、その1つが出てきたときに反応できます。
目は選択肢に落とさない
音声中に選択肢を読み返す動きは、最も避けたい癖です。読む作業が入った瞬間、聞く作業の精度が落ちます。
視線の置き場所を決めておくと防げます。問題冊子の余白か、机の一点を見る。選択肢が目に入らない場所を決めておくだけで、読み返しは減ります。
取れたと思った瞬間に、次へ意識を移す
待っていた情報が出てきたら、その時点で判断は終わりです。残りの音声を注意深く聞き続ける必要はありません。
ただし、後半で情報が上書きされる設問もあります。予定の変更や、話し手の考えが変わる展開には注意が必要です。「結局どうなったか」を問う設問では、最後まで気を抜けません。
聞きながら考え始めない
音声の途中で「たぶんこれだな」と検討を始めると、そこから先が耳に入りません。考える作業は、音声が終わってからに回します。
これは意識の持ち方というより、練習で身につく習慣です。音声中は判断を保留するというルールを、演習のたびに自分に課してください。
知らない語が出ても、そこで止まらない
音声中に意味の分からない語が出ると、そこで思考が止まりがちです。止まった数秒のあいだに、次の情報が流れていきます。
分からない語は、飛ばしても文全体の向きは取れることが多いものです。1語にこだわった結果、答えの根拠となる部分を落とすほうが損失は大きくなります。
分からなかった語は、演習が終わってから拾い直せば足ります。試験中にできることではありません。
音声が終わった数秒が、次の先読みの時間になる
3つ目の区間です。ここの使い方が、後半の崩れを防ぎます。
迷う時間は、次の設問から借りている
音声が終わったあと、2つの選択肢で迷うことがあります。このとき自覚しておきたいのは、迷っている時間の出どころが、次の設問の先読み時間だということです。
1問に10秒余分に使えば、次の設問は準備なしで迎えることになります。1問の迷いが、2問目の失点を作る構造になっています。
決着させるための基準を持っておく
その場で決めるには、基準が要ります。迷ったら、音声で実際に耳にした語が入っているほうを選ぶ。これで大半は片づきます。
聞こえなかった語しか含まない選択肢は、そもそも根拠がありません。確信ではなく、根拠の有無で選ぶと決めておくと、判断が速くなります。
塗る動作までを1つの流れにする
決めたらすぐに解答欄を塗ります。後でまとめて塗ろうとすると、その作業が次の音声とぶつかります。
練習の段階から、塗る動作を含めた形で通してください。机の上での手の動きまで含めて、はじめて手順になります。
2つに絞れたら、それ以上は考えない
選択肢を2つまで絞れたのに決まらない場面があります。この状態から時間をかけて正解率が上がることは、ほとんどありません。
判断材料は音声の中にしかなく、その音声はもう終わっています。残っているのは記憶だけで、記憶は時間が経つほど薄くなります。
したがって、絞れた直後に決めるのが最も確率の高い選び方になります。迷いを長引かせるほど、条件は悪くなります。
聞き逃した1問は、その場で捨てて次を守る
うまくいかなかったときの動き方を決めておきます。ここが手順の中で最も実務的な部分です。

引きずると、損失が連鎖する
1問取れなかったとき、そのことを考え続けると次の先読みが飛びます。準備なしで次の音声を迎えれば、そこも落とす確率が上がります。
こうして1問の失敗が2問3問に広がります。連鎖を止められるのは、切り替えの速さだけです。
- 残っている手がかりで1つ選ぶ:空欄にしない
- すぐに塗る:考え直さない
- 次の設問の選択肢へ目を移す:ここが最優先
空欄を残さないという原則
選択式である以上、空欄にする理由はありません。分からなければ、どれか1つを塗ってから次へ進みます。
このとき、あとで戻ろうと考えないことです。音声はもう流れてしまっているので、戻っても情報は増えません。戻る余地がない試験だからこそ、判断は速くて構いません。
崩れたときのリセット地点
数問続けて崩れた場合は、大問の切れ目を回復地点にします。大問と大問のあいだには、説明の読み上げが入るためです。
その数十秒で、次の大問の最初の設問だけを先読みします。全部を取り返そうとせず、次の1問だけを立て直す。これが現実的な復帰の仕方です。
崩れた原因は、試験が終わってから調べる
なぜ崩れたのかを試験中に考えても、答えは出ません。原因の分析は、演習を終えてスクリプトを開いてからの作業です。
その場でやるべきなのは、原因の特定ではなく被害の封じ込めです。この2つを混同すると、分析しながら次の設問を落とすことになります。
演習のたびに封じ込めの動きを練習しておけば、本番でも同じように動けます。動けるようにするための練習であって、失敗しないための練習ではありません。
メモは3種類だけに絞る
メモを取るべきかという論点に答えます。答えは「限定して取る」です。

全部書こうとすると、聞く作業が止まる
聞こえたことを書き取ろうとすると、手が追いつきません。書いている数秒のあいだ、音声は先へ進んでいます。
しかも書いた内容の大半は、設問で問われません。労力の割に、使える情報がほとんど残らない書き方になりがちです。
書くのは3種類だけ
記録する価値があるのは、忘れやすく、かつ設問で問われやすいものに限られます。
| 書くもの | 理由 | 書き方 |
|---|---|---|
| 数字 | 複数出ると混ざる | 数字だけを並べる |
| 固有名詞 | 誰の話か分からなくなる | 頭文字1字で足りる |
| 否定の表現 | 意味が反転する | 斜線などの記号で足りる |
日本語で書いてかまいません。目的は記録ではなく、直後に思い出すための目印です。
級が上がるほど、書く量は減らす
意外に思えるかもしれませんが、上の級ほどメモは少なくします。音源が長く、内容が抽象的になるため、書き取れる比率が下がるからです。
長い音源では、話の流れを追うほうが優先されます。手を動かしている間に文脈を見失うほうが、失点は大きくなります。
書く場所をあらかじめ決めておく
もう1つ、細かいながら効く工夫があります。メモを書く位置を、設問のすぐ横に固定しておくことです。
書く場所を探す動作にも時間がかかります。どこに書いたか分からなくなると、確認のためにもう一度探すことになります。
なお、会場によって持ち込みや書き込みの扱いが異なる場合があります。受験の前に、公式および会場の案内をご確認ください。
級が上がるほど、先読みの重みは増していく
同じ手順でも、級によって効き方が変わります。ここを知っておくと、練習の配分を決められます。

音源が長くなると、記憶に頼れなくなる
短い会話なら、全部覚えてから選択肢を見ても間に合います。しかし音源が長くなると、この方法は成立しません。
準1級以上ではアナウンスなどを扱う形式が加わり、1級ではさらにインタビューが加わります。長い素材ほど、探すものを決めてから聞く必要が高まります。
選択肢が印刷される割合が増える
級の構成を並べると、先読みできる大問の割合が変わることが分かります。2026年7月27日時点で公表されている内容にもとづく整理です。
| 級 | 先読みできない大問 | 先読みの重み |
|---|---|---|
| 3級・準2級 | 第1部(10問) | 3分の2の設問で有効 |
| 準2級プラス・2級 | なし | すべての設問で有効 |
| 準1級・1級 | なし | すべての設問で有効 |
準2級プラス以上では、全部の設問で先読みが使えます。手順を持っているかどうかの差が、そのまま得点差になります。
放送回数の条件も一緒に確認する
もう1つ、級による違いがあります。3級では第2部と第3部が2回ずつ放送されますが、準2級以上はすべて1回です。
2回聞ける区間では、1回目を全体の把握に使う余裕があります。1回だけの区間では、その余裕がありません。準備の重みが違う理由がここにあります。
級を上げる前に、条件の変化を練習に入れる
級を上げる準備は、語彙を上の水準へ引き上げることだけではありません。先読みできる大問の割合と、放送される回数。この2つが変わります。
条件が変わると、同じ実力でも得点は動きます。合格した級の感覚のまま次の級の演習に入ると、崩れた理由が語彙のせいに見えてしまいます。
対策は簡単で、いまの級の演習に1回だけ再生する形を混ぜておくことです。条件の厳しいほうに先に慣れておけば、上がったときの落差が小さくなります。
先読みの練習は、音声を流さずに始められる
手順を身につける方法に進みます。最初の段階では、音を使いません。
選択肢を見比べる作業だけを繰り返す
過去問の問題冊子を開き、選択肢の違いを拾って一語に置き換える作業だけを行います。音声は再生しません。
1つの設問にかかるのは数秒です。30問ぶんやっても、数分で終わります。解く体力を使わずに、本番で最も効く判断だけを鍛えられます。
移動中や隙間の時間でも成立する
音を出さない練習には、副次的な利点があります。音声を再生できない場所でも進められることです。
電車の中でも、休み時間でも、問題冊子さえあれば動かせます。まとまった学習時間を確保できない人ほど、この形式の練習は取り入れやすくなります。
逆に言えば、まとまった時間は音声を使う作業のために温存できます。作業の性質で時間帯を割り振ると、1日に進む量が変わります。
秒数を計って上限を体に入れる
慣れてきたら、時間を計ります。1問につき10秒という上限を決めて、そのなかで違いを拾い切る練習をします。
上限を超えたら、そこで打ち切ってかまいません。本番でも打ち切ることになるので、打ち切る感覚こそ練習する価値があります。
答え合わせは「予想が当たったか」で行う
この練習では、正答率を見ません。見るのは別の指標です。
- 違いを一語に置き換えられたか:だれ・いつ・どこ・なに・なぜ
- 10秒以内に終えられたか:上限を守れたか
- その予想が、実際の設問と合っていたか:スクリプトで確認する
本番の1回は、練習で何度も戻ることでしか作れない
練習の条件について整理します。本番と練習では、できることが正反対です。

戻れる環境でしか、原因は特定できない
本番では音声を止められません。だからこそ、練習では止めて戻す作業に意味があります。
聞き取れなかった数秒に戻り、そこだけを繰り返す。なぜ取れなかったのかは、その数秒を何度か聞き直さないと分かりません。全体をもう一度流しても、同じ場所で同じように流れていきます。
区間を指定して戻せるかどうかが分かれ目
このとき道具の差が出ます。頭出しからやり直すのと、詰まった区間だけを繰り返すのでは、1本あたりの作業量がまるで違います。
再生の速度を落とせるかどうかも同様です。音が速すぎて追えない場合、速度を落として輪郭をつかんでから元に戻すという手順が取れます。
速度を上げる練習は、最後に回す
逆に再生速度を上げる練習もあります。ただしこれは通常の速度で取れるようになってから使うものです。
取れていない段階で速くしても、取れない箇所が増えるだけになります。負荷を上げる練習は、標準の条件を満たしてから足すのが順序です。
なお速度を変えられるかどうかは道具によります。手元の環境でできない場合は、無理に取り入れる必要はありません。
音声の置き場所が散らばると、練習が始まらない
もう1つの障害が、準備の手間です。教材ごとに音声の入手先が違うと、そのつど設定からやり直すことになります。
3週間で先読みを習慣にする進め方
手順を体に入れるための3週間を組みます。段階を飛ばさないことが要点です。

第1週:音を使わず、見比べる作業だけをやる
最初の週は音声を再生しません。選択肢の違いを拾う作業だけを、毎日数分ずつ繰り返します。
この週に見る指標は「予想が当たった割合」です。点数は関係ありません。
第2週:音声を流しながら両立させる
2週目で音を入れます。ここで初めて、先読みと聞き取りを同じ時間軸の上に並べます。
この週に見る指標は「音声中に選択肢を見なかったか」です。
第3週:通しで1回だけ再生する
3週目で本番の条件に合わせます。停止も巻き戻しもせず、解答欄を塗る動作まで含めて通します。
ここで初めて正答率を見ます。前の2週で手順が入っていれば、落とした設問の理由が「先読みが間に合わなかった」か「語が分からなかった」かに整理できます。
3週間で変化が出なかった場合
手順を通しても得点が動かないことがあります。その場合、つまずいている場所が先読みではなく語彙である可能性が高くなります。
判定は簡単です。スクリプトを開いて、落とした設問に対応する箇所を読んでみる。読んでも意味が取れないなら、待ち構える手順をいくら磨いても届きません。
その場合は先読みの練習を続けるより、語彙を先に埋めるほうが早く戻れます。学習の進み方には個人差があり、期間や結果を保証するものではありません。
先読みでやりがちな失敗が4つある
最後に、手順が崩れる典型的なパターンを挙げます。
1選択肢を全文読もうとする
読み切る前に音声が始まり、結局どちらも中途半端になります。読む作業ではなく、見比べる作業だと捉え直してください。
22問先3問先まで見てしまう
抱える情報が増えると、音声中に混ざります。先読みは1問先までにとどめるほうが、精度は上がります。
3音声中に選択肢を読み返す
読む作業が入った瞬間、聞く精度が落ちます。視線の置き場所を決めておくのが、最も簡単な対策です。
4落とした設問を考え続ける
迷っている時間は、次の設問の準備時間から差し引かれます。1問の損失を、そこで止めることのほうが大事です。
- 選択肢を全文読もうとする
- 先読みの範囲を広げすぎる
- 音声中に選択肢を読み返す
- 落とした設問を引きずる
英検リスニングの先読みに関するよくある質問
読者から寄せられることの多い疑問に答えます。
先読みはどのタイミングで始めますか?
前の設問の解答を塗り終えた直後です。試験全体が始まる前の説明の時間も、最初の数問を見ておく機会として使えます。
設問文も先に読むべきですか?
問題冊子に印刷されている場合は読みます。ただし設問文が印刷されない形式では、選択肢の違いから内容を推測することになります。推測といっても難しくはなく、違っている部分がどの種類の情報かを見れば、問われる方向はほぼ絞れます。
メモは何語くらい書けばいいですか?
1つの設問につき、多くても3つまでです。数字・固有名詞・否定の3種類に限定すれば、自然にその量に収まります。それ以上書こうとすると、書いている間に音声が先へ進み、かえって取れる情報が減ります。
音声中に選択肢を見てしまう癖は直りますか?
視線の置き場所を先に決めておくと、かなり減ります。問題冊子の余白など、選択肢が視野に入らない一点を決めてください。目を閉じる方法もありますが、眠気につながるため、開けたまま一点を見るほうが安全です。
3級でも先読みは必要ですか?
第2部と第3部では有効です。第1部は選択肢が読み上げられるため、代わりに補助イラストを見ておきます。
1問落としたあと、どう立て直せばいいですか?
その設問を1つ選んで塗り、すぐ次の選択肢へ目を移します。大問の切れ目にある説明の読み上げも、立て直しの時間として使えます。
先読みをしても点が上がりません
手順ではなく語彙で止まっている可能性があります。探している語そのものを知らなければ、待ち構えていても取れません。スクリプトを読んで意味が取れるかどうかを先に確かめ、原因の切り分けから戻ってください。手順は、素材が読める段階に来てから効いてくるものです。
本番で緊張して手順が飛んでしまいます
飛ぶのは、手順が意識的なままだからです。音を使わない練習を繰り返して、考えなくても動く状態にしておくのが対策になります。
まとめ:1回で取るための準備は、聞く前にしか置けない
最後に、本番で思い出せるように順序だけまとめます。
- 先読みは同時作業を減らす手段:時間稼ぎではありません
- 見るのは選択肢の違いだけ:日本語の一語に置き換えます
- 音声中は選択肢を見ない:待つものを1つに絞ります
- 落とした設問は即座に切る:迷いは次の設問から時間を奪います
英検のリスニングで音声が流れているあいだにできることは、思っているより多くありません。できるのは、決めておいたことを実行することだけです。
だからこそ、決めておく作業に価値があります。聞く前の十数秒をどう使うかが、その設問の結果をほぼ決めています。
そして、その十数秒の使い方は練習で固定できます。音を再生しなくても、選択肢を見比べる作業だけなら今日から始められます。
次に読む記事は、いまの状態で選んでください。
- そもそも聞き取れていない → 英検リスニングが聞き取れない3つの原因
- 知らない語が多いと感じる → 英検の単語はどこまで覚えるか
- 音声教材の置き場所を決めたい → 英語の友とabceedの使い分け
- 全体の設計を確認したい → 英検とは?改定で変わった点


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