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【時制&接続詞】『If節中の現在形』を紐解く3つのアイデア

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なぜ条件節ifの中身は現在形のなのか?わかりやすく3つの説明を解説 英文法
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「時・条件を表す副詞節では、未来のことでも現在形を使って表す

時制や接続詞のif/whenを学習していると、こんなルールに出会ったことはないでしょうか?

今回は、この約束事の理由を深掘りしていきます。

条件節ifの中が現在形になる理由
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はじめに

さて、もう1度ルールを見てみましょう。

「時・条件を表す副詞節では、未来のことでも現在形を使って表す」

これは、数ある英文法のルールの中でも、最重要とも言える約束事です。

そのため、一生懸命暗記しようとするばかりに、このルールが存在する理由を考える余裕が無くなってしまうこともよくあることです。

そこで、この記事では、

『なぜこんなルールが存在するのか?』

という疑問に答える3つのアプローチをご提案させていただきます。

必ずしもルールの丸暗記が悪いとは思いません。学習の仕方・覚え方は人それぞれあるものです。そのため、以下の3つのアイデアを押し付けようという意図はありません。学習する方、または教える方ご自身に合うアイデアがあれば、ぜひご活用してみてください。
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◎結論

早速ですが、結論を示します。

if節中の現在形 結論

この3つのアイデアをそれぞれ詳しく見ていきましょう。

言語学的に有名な説明は、最後の3つ目になります。
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アイデア①

手始めに、最もシンプルなものからいきましょう。

アイデア①は、

主節でwillを使っているから、If節中には使う必要はない
というものです。
つまり、主節とIf節の両方でwillが重複するのを避けるためという考え方です。

狭い視野で見ると…

『なんでwillじゃなくて現在形なんだろう?』

と疑問に感じる方の多くは、If節だけしか見てない傾向があります。

そこだけを見つめて、なんとか理由を見出そうとしているわけです。

IF節中に集中

広い視野で見ると…

しかし、今回の考え方で鍵を握るのは、主節を含めた全体を広い視野で見ることです。
全体に集中
主節も視野に入れれば、
そこには will が既に使用されているため、If節の方にも will を使ってしまうと重複してしまうことに気付けます。
この考え方は、広い視野をもつことの重要性も同時に教えてくれる点で魅力的だと思います。
アイデア①主節にwillが使われているから、重複を避けるため、If節中には使わない
これが1つ目の考え方です。

説得力をもたせるために

willの重複を避けるため
という理由で納得しきれない場合は、日本語でも同じことを考えてみると効果的かもしれません。
日本語でも、
× 明日、雨が降るだろうならば、私は家で映画を観るだろう
このような言い方はしません。
つまり、日本語においても、will に相当する「だろう」はどちらか一方にしか使われないのです。
英文法のルールを学ぶ時(または教える時)、母国語である日本語を例に出すと納得しやすくなる場合が多いです。

この考え方では説明できない点

1つ目のアイデアはシンプルで分かりやすいですが、以下のような指摘には答えられません。

①「なぜ、If節ではなく主節にwillを使うのか?」
②「なぜ、If節中は現在形なのか?」
2つの指摘を詳しく見てみましょう。

指摘 ①「なぜ、If節ではなく主節にwillを使うのか?」

「willの重複を避ける」という目的ならば、「If節にwillを使って、主節に現在形を使う」という選択肢もあるはずです。
しかし、実際にはその選択肢ではなく、「主節にwillを使って、If節に現在形を使う」という解決策が取られています。
このアイデア①では、『なぜ後者の選択肢が採用されるのか?』を説明できないのです。

指摘 ②「なぜ、If節中は現在形なのか?」

willの重複を避ける」という理由なら、「現在形ではなく、(極端に言えば)過去形でも、be going to でも良い」という指摘ができてしまいます。

つまり、「willの反復を避ける」という目的ならば、

will以外だったら何でも良いに、なぜその中からわざわざ現在形が選ばれたのか?』

この指摘には説明を与えることができません。

以上の2つの指摘を上手くフォローしたのが、次にご紹介するアイデア②です。
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アイデア②

アイデア②では、If節と主節の関係性を考えてみたいと思います。

If節は主節の土台

〈例文〉If it rains tomorrow, I’ll watch movies at home.

このような表現があった場合、

「I’ll watch movies at home」という事態(イベント)は、「it rains tomorrow」というイベントよって支えられています。

「家で映画を観る」というイベントは、「明日雨が降る」というイベントがあって初めて成立するのです。

つまり、次のことが分かります。

「家で映画を観る」 というイベントには、「明日雨が降る」という土台が必要

土台は安定的に

そんな土台となる条件節に、推量を表すwillを使うとどうなるでしょうか?

土台に推量の意味を持つwillを使うと不安定になってしまいます。

そこで土台には、最も安定している現在形が使った方が良いと考えることが出来そうです。

「なぜ現在形が最も安定しているのか」については後述します。

イメージとしてはこんな感じです。

  ・土台が現在形の場合
If節中現在形

・土台がwillの場合 If節中will

アイデア②主節の土台となるIf節は、安定性を得るためwillではなく現在形を使う

現在形が最も安定している理由

アイデア②の説明を聞いて、

なぜ現在形が安定していると言えるのか?
という疑問が出てきそうなので説明しておきます。
理由はかなりシンプルです。
現在形は、話し手と聞き手で最も共有し易い瞬間であるため
話し手と聞き手が同時に居合わせている「現在」こそが最も瞬間的にそして確実に共有され易い時制なのです。

以上が2番目のアイデアでした。

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アイデア ③

最後の考え方は、〈英語史〉の知識を借りてみたいと思います。

このアプローチが言語学的に最も有名であり、そして歴史的に正しい説明です。

英語史とは

〈英語史〉とは、英語の変化の過程を辿ったものです。

そんな〈英語史〉では、英語は次の4つの区分に分けられています。

700年頃ー1100年頃   古英語
1100年頃ー1500年頃 中英語
1500年頃ー1900年頃 近代英語
1900年頃ー 現在   現代英語
《注意》時代区分は研究者によって分かれ、諸説あります。

鍵を握るのは古英語

今回の「条件節における現在形」という謎を解く鍵は、〈古英語〉にあります。

〈古英語〉では、条件節の動詞は〈仮定法現在〉が使用されていたのです。

【注意】
正しくは、古英語で使用されていたのは〈仮定法〉ではなく〈接続法〉と呼ばれるものですが、話を複雑にさせないために、ここでは〈仮定法〉と表記させていただきます。
例文を出すならば、現代英語で
If it is sunny tomorrow, I will go shopping.
と表現するところを〈古英語〉では、
If it be sunny tomorrow, I will go shopping.
と表現していたのです。
古英語の表現は、便宜上、現代英語に変換して記載しています。綴り字も文法も現代英語とは大きく異なるのでご注意ください。

そもそも仮定法現在とは?

〈仮定法現在〉は「動詞の原形」と同じで、受験英語では「suggestなどの動詞に後続するthat節の中で使われる」というので有名です。
例文:The doctor suggested that my father stop smoking.
(その医者は、私の父親が喫煙をやめるように主張した)
要するに、〈仮定法現在〉は、「いま現在の現実に属さない出来事(=非現実)」を表すということです。
『「父親がタバコをやめる」という現実に属さない出来事』を医者が主張したといった感じです。
まずはこの点を押さえておいてください。
条件節Ifの中では、〈仮定法現在〉が使用されていた

発想の転換

ここで、あることに気付きます。

さきほど、〈古英語〉では、

条件節Ifの中では、〈仮定法現在〉が使用されていた
と説明しました。
If it be sunny tomorrow, I will go shopping.
『「明日雨が降る」という現実に属さない出来事を表すために、〈仮定法現在〉が使われていた』、
これは私たちの直感に合っています。
つまり、もしこの用法が現代まで生き残れば、現代の私たちは、
『なぜIf節中は現在形なのか?』
という疑問を抱かずには済んだのです。
従って、今の私たちが考えるべきことは、
なぜ、古英語の条件節Ifの中の〈仮定法現在〉が、現代英語のように〈現在形〉になったのか?
という謎に転換します。
考えるべき対象が、『現在形である理由』ではなく、『現在形になった理由』に変化したのです。

なぜ仮定法現在が現在形になったのか?

この答えは単純です。

仮定法の使用頻度が減っていき、現在形が使われるようになった
〈仮定法現在〉の代わりに〈直説法現在〉が選ばれたのは、先ほどのアイデア②の「現在形が最も安定している」という理由で説明できるはずです。
 ✔仮定法の使用頻度が減少した理由
〈屈折〉などの専門的な話になるので、興味のある方はご覧ください。

現代の英語において、仮定法の使用頻度が減少しつつある理由の1つとして、『単純化』という考え方が挙げられます。ここで『〈屈折〉の単純化』というものをお話したいと思います。
〈屈折〉というのは、簡単に言うと「動詞が活用されること」を指しています。昔の英語では、主語や時制、法に応じて、動詞の形が変化していたのです。
ここで現代の英語を考えてみてください。現代の英語では、ある例外を除いては直説法過去形と仮定法過去は一致していますが、古英語では、直説法過去と仮定法過去は異なる形を取っていました。つまり古英語においては、過去形にしても仮定法にならなかったということです。しかし、英語は数ある理由のせいで「単純化」の道を辿り、直説法過去と仮定法過去はある例外を除いては一致したのです。その一致しなかったある例外こそが、be動詞です。仮定法を勉強していると、主語がheやsheなどの3人称単数の時でも ‘was’ ではなく ‘were’ を使うことに違和感を感じたことが多いかと思います。ほとんどの場合で『過去形=仮定法』という方程式が成立しているのに、なぜ主語が3人称単数(she/he…)の時だけは、『過去形=仮定法』という方程式が成立しないのでしょうか?その答えは、〈古英語〉の仮定法の形をbe動詞だけが継承したからです(そのままそっくりではありませんが)。先ほど『昔の英語において、過去形=仮定法ではない』と説明しましたが、その性質をbe動詞だけが継承したのです。be動詞は、仮定法に限らず直説法現在でも、「am, are , is 」のように複雑に変化させる必要がありますね。これが最初に説明した〈屈折〉のことですが、be動詞は〈古英語〉の〈屈折〉を(そのままそっくりではありませんが)継承したのです。つまり、裏を返せば、〈古英語〉では、be動詞に限らず全ての一般動詞が現代のbe動詞のような〈屈折〉を持っていたのです。この〈屈折〉が現代になるにつれて「単純化」のせいで(学習者にとっては「おかがで」)消滅していき、それに伴い〈屈折〉によって表現される〈仮定法〉も使用頻度が減少していったと考えられます。
ここからは個人的な考えになるのですが、『屈折の単純化』によって『屈折に頼っている仮定法』の使用頻度が減少しつつあるのなら、『屈折に頼っている他の文法事項』の使用頻度も減少すると考えられそうです。『屈折に頼っている他の文法事項』とは、ずばり『3単現のs』です。主語が3人称単数で時制が現在の時に動詞の末尾につくあの ‘s’ も実は〈屈折〉の名残だったのです(正確には、あの ‘s’ は〈屈折語尾〉と呼びます)。そんな『屈折に頼っている3単現のs』も、いつの日か英語の世界からいなくなる日もあるのかもしれません。
3単現のsと〈屈折〉についてはこちらの記事もご参考にしてください。
つまり、『なぜ、If節中でwillではなく現在形と使うのか?』という謎に対する答えは、次のようになります。
アイデア③If節中の現在形は、古英語の〈仮定法現在〉の名残である
このアイデア③は、「If節中で現在形を使う目的/理由」というよりは、「If節中で現在形を使うようになった背景/経緯」を説明してくれるものです。これは〈英語史〉が「過去のお話」を相手にしている以上、仕方が無いことだと言えるでしょう。
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【関連情報】仮定法の衰退

先ほどのアイデア③で、

『仮定法の使用頻度が減少した』

と説明したので、もう少し〈仮定法〉に言及しておきます。

〈古英語〉の時代では、今では〈直説法〉を使うような場面でも〈仮定法〉が使われていたのです。

一例が、有名な「I think that ~」の構文です。

仮定法
[注釈]古英語の表現は、便宜上、現代英語に変換して記載しています。綴り字も文法も現代英語とは大きく異なるのでご注意ください。
このように、that節の中にも仮定法が使用されていたのです。
これは、think という動詞にかかわらず、say などに後続するthat節の中でも仮定法が使われていました。
この説明を踏まえれば、〈仮定法〉が古英語では〈接続法〉と呼ばれていたのも納得していただけると思います。
そして、太古の英語から仮定法がどれほど衰退してきたかが分かる良い一例ですね。
英語史を扱った記事はこちらから

英語史をもっと詳しく知りたい方へ

〈英語史〉の入門書として、次の2冊がおすすめです。

特に2冊目の『英語の「なぜ?」の答えるはじめての英語史』は優れた英語史入門書です。

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まとめ

今まで見てきたアイデア3つをまとめます。

if節中の現在形 結論

冒頭でご紹介した時よりも、理解が深まっていたら幸いです。

*注意事項* 
ここから先は「日本語における条件文」を分析していくので、以後、英文法に関する説明はありません。英文法の話を楽しみにされている方々に、最後まで読んで時間を浪費させてしまうと申し訳ないので、予めここでその旨を報告いたします。ここまでご覧いただきありがとうございました。
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【日英比較】日本語の条件文

さて、ここからは日本語における条件文を考えてみましょう。

日本語における条件文をつくる言葉は、

①「~

②「~たら

③「~

この3つです。
実際に例文で使うとこんな感じです。

[例文]

① 春が来る、桜が咲く

② 春が来たら、桜が咲く

③ 春が来れ、桜が咲く

これら3つの意味や使い方の区別は存在するのでしょうか?
この例文の差異を理解することを目標に、それぞれ3つの表現を分析してみましょう。

①「~と」

「~」という表現には、いくつかの使用条件が存在します。

〇 良い例

〇 公園に着く、野球場が見える。

〇 ゴミを触る、手を洗う必要がある。

悪い例

✕ 公園に着く、野球をする。

✕ ごみを触る、手を洗って下さい。

なぜこの2つは不適切な表現なのでしょうか?

それは、

後ろの文に、意志を含む行為・動作があるから
と言えるでしょう。
  • 「野球をする
  • 「手を洗って下さい

は、意志を含む行為・動作を示しています(後述の補足説明を参照)

ここでもう1度、良い例を見直してみましょう。

〇 公園に着く、野球場が見える

〇 ゴミを触る、手を洗う必要がある

この2つの例文が許されるのは、
  • 「野球場を見える
  • 「手を洗う必要がある
の下線部が、意志を含む行為・動作を打ち消す役割を果たしているからです。
もう少し具体的に言うと、「野球場が見えるというのは「その場所に来れば、いつでもそこから野球場が見える」という普遍的状況、「手を洗う必要があるというのは「ごみを触ったら、誰しも手を洗う必要がある」という一般論を表しています。

「~と」の役割

それでは、例文の分析から分かることをまとめます。

「~」は、条件節と主節の客観的・必然的な因果関係を示す
この定義があるからこそ、
「~」の条件節に繋がる主節には、意志を含む行為・動作は登場できないということです。
客観的・必然的な因果関係に対して、意志は関与しないからです。

*補足説明

× 公園に着く、野球をする。
この例文を見たとき、
『別におかしな表現ではない』
と思った方も多くいると思うので、補足説明をしておきます。
おそらく違和感を感じなかった方の多くは、次のような解釈しているのです。
〇 公園に着く、(私はいつも決まって)野球をする
つまり、「習慣としての状態」を表す意味の解釈は可能です(下線部分が習慣を表しています)
しかし、「意思を含む動作」の意味では解釈不可能です(下線部分が意思を含む動作を表しています)
× 公園に着く、野球をする(つもりだ)。

②「~たら」

2つ目の条件文を形成する「~たら」を見ていきましょう。

〇 良い例

〇 公園に着いたら、野球場が見える。

〇 ゴミを触ったら、手を洗う必要がある。

ここまでは先ほどの「~」と同じですね。

〇 良い例 Part 2

〇 公園に着いたら、野球をする。

〇 ゴミを触ったら、手を洗って下さい。

興味深いことに、「~たら」の場合は、主節に「動作を表す動詞」や「命令文」も置くことも可能なのです。
この使用方法は、先ほどの「~」ではでませんでした。
【「~と」の用法をおさらい】
×公園につく、野球をする
×ゴミを触る、手を洗って下さい
これが①の「~」と大きく異なる点です。

「~たら」の役割

したがって、「~たら」の使用には、厳しい制限は存在しません。

「~たら」の役割を定義するならば、

「~たら」は、条件節と主節の時間的な前後関係を示す
となるでしょう。
「~たら」は時間的な前後関係を示すため、そこに意志が関与するか、または必然的な因果関係かどうかは問題にはなりません
時間的な前後関係を示す「~たら」は、「~」ができないことをできてしまう万能な表現

③「~ば」

最後に「~」という表現を見てみましょう。

「~」の場合は少し複雑です。

用法が大きく分けて2つ存在します。

(1) 条件節を示す
(2) 反実仮想的な主観的感情を示す
「~」にはこの2つの用法を持つことは後々重要になってきます。
1つずつ確認していきましょう。

(1) 条件節を示す

まずは悪い例から見てみましょう。

✕ 悪い例

× 公園に着け、野球をする。

× ゴミを触れ、手を洗って下さい。

この2つの例文に違和感を感じるのは、
後ろの文に、意志を含む行為・動作があるから
と言えるでしょう。
つまり、この点では「~」と同じ制限が存在しています。
しかし、少し手間を加えると、面白いことが起きるのです。

〇 良くなる例

太郎が公園に着け私たちは彼と一緒に野球をする。

〇 ゴミが汚け、手を洗って下さい。

このように少し手を加えると、適切さが上がるということです。

つまり、

・条件節と主節の主語が異なる場合

・条件節が状態を表す場合

は、「~」の使用が可能になるということです。

1つ目の例文は、条件節の主語が「太郎」、主節の主語が「私たち」のため適切さが上がっています。
また2つ目の例文は、条件節中に「汚い」という状態を表す語句があるため適切さが上がっています。

(2) 反実仮想的な主観的感情を示す

「~」の2つ目の用法です。

「~ば」という表現は、『反実仮想的な主観的感情』を表します。

公園があれ、野球ができる

ゴミがなけれ、快適に過ごせる

(受け取り方は人それぞれですが、)
上の2つの例文は、話し手の「そうであったらいいなぁ」という願望が含まれているように感じられます。
そして、その願望は「実際はそうではないけど、そうなってほしい」という反実仮想的な願望のニュアンスを含んでいます。
ここらへんはその人の感じ方次第なので、難しいところです。
みなさんはどのような印象を受けますか?
「~」は、反実仮想的な個人的願望を示す役割もある
以上で分析は終了です。

例題への立ち返り

さて、3つの表現の分析が終わったので、もう1度この例文を考えてみましょう。

① 春が来る、桜が咲く

② 春が来たら、桜が咲く

③ 春が来れ、桜が咲く

①は、「(一般的事実として)春が来ると、桜が咲く」と言っている響きを持っています。客観的真理を表現しているように感じられます。
②は、「春が来たら、(その後)桜が咲く」という時間の前後関係を示しています。
③は、彼果てた木々を見て、「(今は咲いてないけど)春が来れば、桜が咲く(そうなってほしいなぁ)」という主観的な願望が表れているように感じられます。理由は、おそらく「~ば」は〈客観的事実〉を表すことに加えて、〈反実仮想的な願望〉を表す用法も持ち合わせていることが挙げられます。

このことをイラストにしてみました。

「春が来ると、桜が咲く」
春が来たら、桜が咲く
春が来れば、桜が咲く
この捉え方はあくまで一例です。人それぞれ色んな受け取り方があります。

言葉の奥深さ

今まで見てきたように、私たちの母語の日本語における条件文には、なかなか複雑なルールが存在することが分かりました。

こんな複雑な表現を日々の生活で無意識に使っていると思うと、日本語を含め言語って不思議で面白いと思えるはずです。

そして、この日本語に対する「へー!」という驚きと興奮は、英文法を学習するからこそ出会えるご褒美でもあるのです。

これも英文法のスパイスの1つだと信じています。

英語と比較することで、日本語について新たな発見を与えてくれる

以上で『日本語における条件文』の分析は終了です。

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全体のまとめ

今回は、

『条件節をつくるIf節中の中が現在形になる理由』

3つご提案させていただきました。

  1.  主節でwillを使っているため、willの重複防止を目的にIf節中は現在形にする
  2. If節の内容は主節の内容が実現するための土台であるから、不安定なwillではなく安定的な現在形を用いる
  3. 英語史の観点から見ると、If節中の現在形は、古英語の仮定法現在の名残である
今回の記事に出てきた用語を整理します。
〈条件節〉〈現在形〉〈助動詞〉
〈英語史〉〈古英語〉〈仮定法現在〉〈屈折〉
条件節をつくるIf節中の中が現在形になる』という1つの現象に対して、複数のアプローチや考え方が存在することが分かりました。
1つの現象に対して多角的な視点で考える機会を与えてくれるのも英文法の魅力だと思います。

1つの現象に対して多角的な視点で考える能力を培える

もしご自身に合いそうなアイデアがあったら、取り入れてみてくださいね。

[参考文献]

  • 小野米一 他 (1983) 『条件表現「と」「ば」「たら」「なら」の異同について:中国人学習者のために』国立大学法人北海道教育大学
  • 小林賢次(1996)『日本語条件表現史の研究』ひつじ書房
  • 渡部昇一 (1983)『英語の歴史』 大修館書店
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関連コンテンツのご紹介

今回の記事では、『条件節If』との関連で〈現在形〉の分析をしてきましたが、〈現在形〉というワードから次のような疑問を連想されます。
『なぜ、現在形は過去・現在・未来の習慣を表すのか?』
この謎を扱った記事を作成しました。
ぜひ今回の記事と合わせて現在形の理解を深めていただけたら幸いです。
今回もご覧頂きありがとうございました。
また次の記事でお会いしましょう。

コメント

  1. あいごんた より:

    とてもわかりやすくまとめて頂いて大変参考になり、有難うございます

    • 英文法のスパイス より:

      コメントありがとうございます。参考になる情報をご提供できたようで何よりです。

  2. あかつき戦闘隊 より:

    このサイトに感謝しています。きっかけは「notは後ろを否定する」という原則に、cannotがそぐわないので調べていたところ、このサイトにたどり着き、納得しました。
    申し遅れましたが高校の教員です。覚えろ文法に嫌気がさし、できるだけ本質を知ったうえで、一番簡単な解説だけして、覚えるよりもたくさん読める授業を心掛けています。

    いま、Ifの中にwillがない、というページを見ています。
    で、教え方としては、ifやwhenのように条件があって(副詞節)→何かが起こる、というのを表す表現は、「その場にワープする」と教えています。
    If it rains tomorrow, I will stay home. あした家にいる自分を想像して、窓の外見たら、雨が降ってるでしょ、って具合に。すると、
    Tell me when he comes back.とTell me when he will come back.の違いも判ります。
    この教え方で、問題があれば、ご意見ください。

    • 英文法のスパイス より:

      難しい用語を要しない簡潔かつ魅力的な説明の仕方だと思います。
      共有していただきありがとうございます(^o^)