今回は、I’m coming! が「今行く!」になる理由を扱います。
日本語では、自分が相手のところへ移動するので「行く」と言います。だから英語でも I’m going! と言いたくなるのは自然です。ところが実際の英語では、ここで come を使います。
そこでこの記事では、come / go の違いを「来る/行く」の対応ではなく、視点をどこに置くかから考えます。
結論を先に言うと、come は「話し手の場所」だけでなく「聞き手の場所」へ近づく動きにも使える動詞です。相手のいる場所を基準にすると、自分は相手のほうへ「近づいてくる」人になります。I’m coming! という短い返事を手がかりに、この視点の置き方をたどっていきましょう。
- come は基準点へ近づく、go は基準点から離れて別の場所へ向かう。
- 基準点は、話し手の場所だけでなく聞き手の場所や会う予定の場所にも置ける。
- 日本語の「行く/来る」を直訳せず、場面の基準点を先に決めるのがコツ。
- 同じ視点差は bring / take にもそのまま現れる。
なぜ「今行く」は I’m going! ではないのか
日本語で「今行く」と言うとき、頭の中では自分がいる場所から相手の場所へ向かう動きが見えています。
たとえば、隣の部屋から呼ばれたとします。
- 母:「ごはんできたよ」
- 自分:「今行く!」
この日本語では、自分がいる場所が出発点です。そこから相手の場所へ移動するので、「行く」がぴったり合います。
ここで英語も同じように考えると、I’m going. と言いたくなります。しかし英語では、この返事だけを見ると「その場を離れて、どこか別の場所へ行く」という響きになりやすいのです。呼んだ相手からすると、「え、こっちに来るんじゃないの?」と感じてしまいます。
come は聞き手のいる場所への移動にも使える
学校英語では、come = 来る、go = 行く、と覚えることが多いです。この覚え方は入口としては便利ですが、come の「こちら」は、話し手だけを指すとは限りません。
英語では、次のように相手の場所を「こちら側」として扱えます。
- I’m coming to your office now.(今、あなたのオフィスへ向かっています)
- Can I come to your house tomorrow?(明日、あなたの家へ行ってもいい?)
- Are you coming to the party?(パーティーに来る?)
このとき、話し手はまだ相手の場所にいません。それでも come が使えます。なぜなら、話の中心が「相手のいる場所」や「会う予定の場所」に置かれているからです。

I’m coming! は到着する相手側から見た返事
I’m coming! は、相手の呼びかけに対して「あなたのいる場所へ向かっているよ」と返す表現です。
ここで I’m going! と言うと、文法的に絶対に不可能というより、聞こえ方がずれます。相手からすると、「どこへ行くの? こちらへ来るんじゃないの?」という感じが出やすくなります。
違いは、次のように見るとわかりやすくなります。
- I’m coming.:相手の場所へ近づいている
- I’m going.:今いる場所から離れて別の場所へ向かう
つまり、I’m coming! は「自分の移動」を言っているのに、視点はすでに相手側にあります。英語では、会話の相手を中心にして場面を組み立てることがあるのです。
日本語と英語では基準点の置き方が違う
日本語にも「そっちへ行く」「そちらに伺います」のように、相手側を意識した言い方はあります。ただ、動詞の選び方としては、自分がいる場所から離れるなら「行く」を選びやすいです。
英語では、会話相手の場所を基準点にして、そこへ近づく動きを come で表せます。これは、英語が「誰の視点で出来事を見ているか」を動詞に反映しやすい言語だからです。

同じ違いは、貸し借りの表現にも出ます。英語の borrow と lend も、物がどちらへ動くかで見方が変わります。方向の感覚をもう少し広げたい場合は、borrow と lend の違いと使い分けもつながって読めます。
bring / take も同じ視点で動いている
come / go の視点差は、bring / take にもそのまま現れます。

come / go は主語の移動、bring / take は人や物を移動させる
come / go は、主語自身が移動するときに使います。bring / take は、主語が人や物をある場所へ移動させるときに使います。
- Can you bring it here?:それをこちらへ持ってきてくれる?
- Please take this to the office.:これをオフィスへ持っていってください
- I’ll bring my notes to your place.:あなたのところへノートを持っていくね
最後の文は、日本語では「持っていく」と言いやすいですが、英語では bring が自然です。ノートが「あなたの場所」へ近づくからです。
ここまで来ると、come は単なる「来る」ではなく、視点のある場所へ近づく動詞だとわかります。come : go = bring : take という比例で覚えておくと、迷ったときに戻る基準になります。
come / go は目的地より、どこを基準点にするかで決まる
go は、話し手・聞き手・場面上の基準点から離れ、別の場所へ向かうときに使います。come は、その基準点へ近づくときに使います。同じ目的地でも、基準点をどこに置くかで動詞が変わるのがポイントです。
基準点から離れて別の場所へ向かうなら go
- I’m going to the supermarket.(スーパーへ行く)
- She went to Canada last year.(彼女は去年カナダへ行った)
- Let’s go home.(家に帰ろう)
これらは、会話の中で共有された基準点へ近づく動きではありません。そのため、go が自然になります。一方で、相手がスーパーにいて、電話で「もう向かってる?」と聞いているなら、返事は変わります。
同じ目的地でも、そこを基準点にすれば come になる
I’m coming.(そっちへ向かってるよ)
相手とは関係なくスーパーへ行く場合:
I’m going to the supermarket.(スーパーへ行く)
話し手や聞き手がいる場所だけでなく、会う予定の場所や場面上の到着点も基準になれます。
第三者の移動は、語り手の視点によって come / go が変わる
She is coming to the party. と言えば、話し手はパーティーを到着点として捉えています。She is going to the party. なら、今いる場所からパーティーへ向かう動きとして語っています。同じ第三者の移動でも、どこに視点を置くかで選択が変わります。
迷ったら、場面の基準点を先に決める
come / go で迷ったら、日本語の「行く・来る」をそのまま当てはめず、英語の場面でどこが基準点になっているかを確かめます。
4つの順番で場面を確認する
判断の順番は、次の4つです。
- 話し手・聞き手・会う予定の場所など、場面の基準点を決める。
- 基準点へ近づく動きなら come。
- 基準点から離れ、別の場所へ向かうなら go。
- 人や物を移動させるなら、同じ視点で bring / take を選ぶ。
表にすると、4語の関係が一目で見えます。
| 基準点との関係 | 主語が動く | 人・物を動かす |
|---|---|---|
| 基準点へ近づく | come | bring |
| 基準点から離れる | go | take |
この感覚は、英語が人ではなく物を主語にするときの発想にもつながります。英語は出来事を「どこから見るか」を文の形に出しやすいので、This bus takes you to… のような無生物主語も、日本語とは違う見え方になります。
ミニ練習:come か go か
- 電話で「今そっちに( )よ」と伝える → I’m ( coming / going ).
- 友だちに「今週末うちに( )?」と誘う → Can you ( come / go ) to my place this weekend?
- ひとりで「これから駅に( )」と言う → I’m ( coming / going ) to the station.
- I’m coming.(相手=基準点へ近づく)
- Can you come to my place?(自分の場所=基準点へ近づいてもらう)
- I’m going to the station.(基準点と無関係に別の場所へ向かう)
まとめ:I’m coming! は到着点を基準にした英語
I’m coming! が「今行く!」になるのは、英語が相手のいる到着点を基準にして、そこへ近づく動きを come で表せるからです。
日本語では、自分の場所から出発する感覚で「行く」と言います。英語では、相手の場所へ到着する感覚で come と言えます。
FAQ
A. I’m coming は相手のいる場所(基準点)へ近づく動き、I’m going はその場を離れて別の場所へ向かう動きです。呼ばれて返事をするなら I’m coming が自然です。
A. 相手の家を基準点にしているからです。自分はまだそこにいませんが、相手の場所へ近づく動きなので come を使います。
A. はい。基準点へ近づけるなら bring、基準点から離すなら take です。come : go = bring : take と覚えると迷いにくくなります。
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日本語と英語で視点の置き方がずれる表現は、受け身にもよく現れます。英語がどの対象を文の中心に置くのかを知りたい場合は、英語の受け身と日本語の受け身の違いも合わせて読むと、視点の感覚がさらに立体的になります。方向で語が変わる仲間としては、borrow と lend の違いと使い分けもおすすめです。


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