「制限用法は that、非制限用法は which」。そう習ったのに、ネイティブの文章では制限用法でも which がふつうに出てきます。あの使い分けは、英語に元からある自然なルールなのでしょうか。それとも、後から作られた決まりなのでしょうか。
結論を先に言えば、意味の違いとして働く部分もあるが、制限用法の that / which には後から強められた規範や文体差が混ざっている、です。この二つを切り分けると、ネイティブの揺れにも納得がいきます。
「制限は that、非制限は which」はどこまで本当か
「限定するなら that、追加説明なら which」と習います。とはいえ、実際の英文を読むと、限定する場面でも which がふつうに使われています。
- The book that I bought is good. (買った本がよい)
- The book which I bought is good. (同じ意味で which も使われる)
- My car, which is old, still runs well. (私の車は、古いがまだ走る)
1と2は、ほぼ同じ意味です。ところが「制限なら that」というルールに従えば、2は避けるべきということになります。一方で3のコンマつきの which は、明らかに役割が違います。

ネイティブの文章でも制限用法の which を見かけます。あれは間違いなんですか?

「実際にどう使われているか」と「こう書くべきとされているか」は別物なんです。そこを分けると見えてきます。
まずは、この「実際」と「べき」の違いからはっきりさせましょう。
記述(実際の使われ方)と規範(こう書くべき)を分ける
言語の話には、いつも2つの視点が混ざります。一つは記述=実際にどう使われているかを観察する見方。もう一つは規範=こう書くべきだと示す見方です。

文法の決まりには、この2つが入り混じっています。本当に意味が変わる差なのか、それとも”きれいに書くため”に後から推奨された差なのかを分けると、that / which の混乱もほどけます。
本当に意味が違うのは「制限 vs 非制限」
実際に意味が変わるのは、that か which かではなく、コンマの有無=制限用法か非制限用法かの違いです。

消すと意味が変わるかで見分ける
The book that I bought is good. の関係詞節を消すと、「どの本か」が分からなくなります。これは本を限定する制限用法です。一方、My car, which is old, still runs well. の which 以下を消しても、「私の車はまだ走る」と意味は通ります。消して困るのが制限用法、消しても困らないのが非制限用法、という実際の意味差です。
制限用法の that / which 区別は、規範寄り
では「制限なら that」はどこから来たのでしょうか。これは主にアメリカの文体ガイドが、書き言葉を整えるために強く推奨してきた指針です。

実際には、イギリス英語を中心に、制限用法でも which は広く使われています。「制限=that」は自然法則というより、整った文体を目指す規範に近いのです。ただし、アメリカ式のスタイルが求められる試験やフォーマルな書き言葉では、この規範に従っておくのが無難です。
「規範」は英語のあちこちにある
このような規範は、that / which だけではありません。「文末を前置詞で終えてはいけない」「分離不定詞(to boldly go)は避けよ」なども、実際の英語では広く使われているのに、書き言葉の品位のために後から強められた規範です。
実際には自然に使われるが、フォーマルでは別の形が推奨されることがある。
大事なのは、規範を頭ごなしに否定することでも、絶対のルールと思い込むことでもありません。記述として「どちらも使われる」と知ったうえで、場面に応じて規範に合わせる。この二段構えがあれば、ネイティブの揺れにも、試験の指示にも、落ち着いて対応できます。
まとめ:意味の差と、後から作られた規範を切り分ける
最初の問いに結論を示してまとめましょう。
that / which で本当に意味が変わるのは、制限用法か非制限用法か(コンマの有無)の部分です。制限用法での「that を使うべき」は、後から強められた規範・文体差の色が濃いといえます。文法を「意味の差」と「べきという規範」に分けて見ると、ネイティブの揺れにも戸惑わなくなります。

今回の要点
- 文法の決まりには、記述(実際)と規範(べき)が混ざっている。
- 本当に意味が変わるのは、制限用法か非制限用法か(コンマの有無)。
- 制限用法の「that を使うべき」は規範・文体差の色が濃い。
- 試験やフォーマルな文では、規範に合わせておくのが無難。
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