- 英語を聞き取れるようになりたい
- 「ネイティブみたいに流暢に話したい
- 効果的な英語学習法を探している
そんな方に今、最も注目されている学習法の一つが「シャドーイング」です。

この記事では、そんなシャドーイングについて取り上げます。
シャドーイングの基本的な定義から、リスニング力・スピーキング力が劇的に向上する理由、初心者でも失敗しない正しいやり方、効果を実感できるまでの期間、そして学習効果を高めるコツまで、シャドーイングに関するあらゆる情報を整理しています。
この記事を読めば、シャドーイングがなぜ効果的なのか、そしてどのように実践すれば英語力を飛躍的に伸ばせるのかがわかっていただけるかと思います。
ぜひ今後の英語学習の参考になれば幸いです。
シャドーイングの定義:ただ真似るだけじゃない?
シャドーイングとは、英語の音声を聞きながら、それを影(シャドー)のように追いかけて、ほぼ同時に声に出して真似る学習法です。
ポイントは「ほぼ同時に」という点。ただ音声を聞くだけのリスニング練習や、音声が止まってから繰り返すリピーティングとは異なります。
シャドーイングはアクティブトレーニングの1種
シャドーイングは、聞こえてくる音声からわずかに遅れて(0.5秒〜2秒程度)、発音、アクセント、イントネーション、リズム、間の取り方まで、そっくりそのままコピーしようと試みるアクティブなトレーニングです。
聞こえてくる音声をリアルタイムで処理し、それを自分の口から発するという、高度な同時処理能力が求められます。この「聞く」と「話す」を同時に行う負荷こそが、シャドーイングならではの高い効果を生み出す秘訣なのです。
最初は難しく感じるかもしれませんが、このプロセスが英語の音声処理能力とスピーキング能力を効率的に鍛え上げます。
シャドーイングの目的:なぜ注目されるのか
シャドーイングの主な目的は、以下の2つの能力を飛躍的に向上させることです。
- リスニング力向上
- スピーキング力向上
つまり、会話における「聞く立場」と「話す立場」の両方を想定したトレーニングです。2つの立場をそれぞれ詳しく見ていきましょう。
リスニング力向上
多くの英語学習者が、「単語も文法も知っているはずなのに、ネイティブの会話が聞き取れない」という壁に直面します。
この主な原因の一つが、英語特有の「音声変化」です。ネイティブスピーカーが話す際、単語は一つ一つ区切って発音されるのではなく、隣り合う単語の音が繋がったり(リエゾン)、特定の音が脱落したり、弱まったりすることが頻繁に起こります。
例えば、下記のような例があります。
- get it:ゲット イット→ゲリッ
- want to:ウォント トゥー→ワナ
このような実際の会話で起こる音の変化に慣れていないと、知っている単語やフレーズで構成された文であっても、そもそも「自分が知っている音で発音されていない」のだから、聞き取ることも意味を理解することも不可能です。
シャドーイングは、この音声変化を聞き取る力を養う上で非常に効果的なトレーニングです。
ネイティブの音声を聞きながら、その発音、スピード、リズム、そして音声変化までもそっくり真似しようとすることで、音声変化のパターンを身体で覚えることができます。
自分が発音できる音=聞き取れる音になる
これはシャドーイングにおける大事な原則です。シャドーイングを通じて、音声変化を含んだネイティブの音声を繰り返し口に出す練習を行います。これにより、これまで自分の口では再現できなかった音や、認識できていなかった音声変化のパターンを、自ら正確に発音できるようになります。自分が発音できるようになった音は、脳が「知っている音」として認識しやすくなるため、結果的に聞き取る能力、つまりリスニング力も向上するのです。
シャドーイングは、単に英語の音を聞き流すのではなく、自ら能動的に音を再現するプロセスを通じて、音声認識の精度を高め、ネイティブのリアルな英語を聞き取るための耳を育てます。
スピーキング力向上
次に、シャドーイングのもう一つの重要な効果である「スピーキング力向上」について見ていきましょう。
多くの学習者が「文法や単語は知っているのに、いざ話そうとすると言葉が出てこない」「自分の英語がカタコトで不自然に聞こえる」といった悩みを抱えています。
これらの原因としては、下記のようなものが挙げられます。
- 個々の英語の音を日本語の音(カタカナ)として発音している
- 日本語特有の平坦なリズムやイントネーションで話してしまう
- 英語をスムーズに話すための口周りの筋肉が十分に発達していない
シャドーイングは、これらの課題を克服し、「伝わる」「自然な」英語を話すための強力なトレーニングとなります。具体的には、以下の点でスピーキング能力の向上に貢献します。
ネイティブに近い発音の習得
ネイティブスピーカーの音声をそっくりそのまま真似ることで、これまで苦手だった音の出し方や、リエゾンなどの音声変化を伴う自然な発音を正確に再現する練習になります。繰り返し行うことで、英語を話すための口の筋肉(表情筋や舌の筋肉)が鍛えられ、よりネイティブに近いクリアな発音が可能になります。
英語特有のリズム・イントネーションの体得
英語には、単語や文の中での強弱のリズムや、文脈に応じた音の上がり下がり(イントネーション)があります。
シャドーイングでは、お手本の音声のリズムやイントネーションも忠実にコピーするため、単語を平板に読み上げるのではなく、音楽のような英語のリズム感が自然と身についていきます。これにより、より流暢でネイティブらしい、意図の伝わりやすい話し方ができるようになります。
流暢性と自動化の促進
スクリプトを見ながら、または見ずに、聞こえてくる音声にコンマ数秒遅れてぴったり付いていく練習は、頭でいちいち文法や単語を考えなくても英語がスムーズに口から出てくる「自動化」を促します。
思考を介さずに「音」と「口の動き」を直結させる訓練となり、実際の会話における瞬発力や流暢さが格段に向上します。
口の筋肉を鍛え、英語のリズムと発話を自動化する
シャドーイングは、単に知識をインプットする学習とは異なり、実際に声に出して英語を発し続ける、いわば「口の筋トレ」です。この反復練習が、英語の発音に必要な口周りの筋肉を効果的に鍛え上げます。同時に、ネイティブスピーカーの自然なリズムやイントネーション、そして音声変化を身体で覚えることで、頭で考える前に口が動くような、スピーキングの自動化が進み、流暢な英語が話せるようになるのです。
音にフォーカスして耳と口を鍛える
このように、シャドーイングは「英語の音」に徹底的にフォーカスし、それを自ら能動的に再現する訓練を通じて、リスニング力とスピーキング力の両方を同時に向上させます。
多くの英語学習者がぶつかる「知識はあるけれど話せない」というインプットとアウトプットのギャップを埋めるための、非常に効果的な実践トレーニングなのです。

事実、このシャドーイングは、高いレベルの語学力が求められるプロの通訳者を養成する訓練としても用いられており、その効果の高さがうかがえます。
シャドーイングの種類:目的別の使い分け
シャドーイングには、主に2つの種類があります。目的によって意識するポイントが異なります。
プロソディー・シャドーイング
音声の「音」そのもの(発音、リズム、イントネーション、強弱など)を正確に再現することに重点を置く方法です。
英語らしい話し方の「音楽性」を身につけることを目的とし、特に発音矯正やスピーキングの流暢さ向上に効果があります。内容理解よりも、聞こえた音を忠実に素早く真似ることを意識します。
コンテンツ・シャドーイング
音声の「内容」を理解することに重点を置く方法です。
発音の正確さよりも、英文の意味やニュアンスを把握しながら追いかけることを意識します。英語を聞きながらリアルタイムで意味を処理する能力を高め、「英語脳」を鍛えるのに役立ちます。プロソディー・シャドーイングよりも高度な処理能力が求められます。
初心者はまずプロソディー・シャドーイングから始めよう
初心者はまずプロソディー・シャドーイングから!始め、英語の音に慣れることからスタートするのがおすすめです。慣れてきたら、徐々にコンテンツ・シャドーイングを取り入れ、意味理解にも意識を向けていくと良いでしょう。
シャドーイングの効果:英語力が伸びる理由
シャドーイングを継続することで、具体的にどのような英語力が向上するのでしょうか?
ここでは、シャドーイングがもたらす主な効果について、そのメカニズムと共に詳しく解説します。
効果1:リスニング力向上
こんな悩みありませんか?
- ネイティブの会話が速すぎてついていけない
- 単語は知っているはずなのに、文章になると聞き取れない
- 映画やドラマの英語が理解できない
シャドーイングは、これらのリスニングの悩みを解決するのに非常に効果的です。その理由は、シャドーイングが耳を以下の点で鍛えるからです。
- 音声変化への対応力
- 音声処理速度の向上
- 意味の塊(チャンク)認識
音声変化への対応力
単語と単語が繋がるリエゾン(リンキング)、音が脱落するリダクション、特定の音が弱まる弱形など、ネイティブが自然に使う「つながった音(Connected Speech)」を聞き取る訓練になります。自分で発声しようとすることで、これらの音の変化をより意識的に捉えられるようになります。
音声処理速度の向上
ネイティブのスピードに合わせて英語を聞き、即座に処理して発声する練習を繰り返すことで、脳が英語の音声を処理する速度が上がります。これにより、速い会話にもついていけるようになります。
意味の塊(チャンク)認識
流れるような音声の中から、単語やフレーズといった意味のある単位を区切り出す能力が向上します。ただ音を真似るだけでなく、音の連続から意味を理解する力そのものが鍛えられます。
なぜシャドーイングはリスニングにも効くのか?脳の仕組みから解説
「英語を聞いても意味が分からない」状態は、脳の中で2つのプロセスがうまく機能していない可能性があります。
- 音声知覚
聞こえてきた英語を「音」として正確に捉え記憶するプロセス。 - 意味理解
捉えた音の連なりを、自分が持つ単語や文法知識と照合して「意味」として理解するプロセス。
リスニングが苦手な人は、特に①の「音声知覚」の段階でつまずいていることが多いです。英語特有の音やリズム、スピードに脳が慣れていないため、音を正確に捉えられないのです。
音声知覚の自動化→意味理解にフォーカス
シャドーイングは、この「音声知覚」のプロセスを自動化するのに非常に効果的です。
聞こえてきた音を正確に真似しようと繰り返し努力することで、脳は英語の音のパターン(音声変化、リズム、イントネーションなど)を認識し、記憶していきます。
この「音声知覚」がスムーズに、無意識レベルで(自動的に)行えるようになると、脳のワーキングメモリ(情報を一時的に保持し処理する領域)に余裕が生まれます。その結果、脳は②の「意味理解」のプロセスにより多くのリソースを割けるようになり、「聞き取れるし、意味も分かる」状態に近づくのです。

出典:プログリット「シャドテン」

効果2:スピーキング力向上
こんな悩みありませんか?
- 自分の英語の発音がカタカナっぽい
- 単語は並べられるけど、話し方が不自然
- もっと流暢に、自信を持って話したい
シャドーイングは、スピーキング力の向上、特に「伝わる」「自然な」英語を話すための土台作りに大きく貢献します。
- 発音の向上
- リズム・イントネーションの習得
- 流暢さ(Fluency)の向上
発音の向上
ネイティブスピーカーの口の動きや舌の位置を意識しながら音を真似ることで、日本語にはない英語特有の音(例:th, r, l)を物理的に正しく発音する筋肉の使い方が身につきます。
リズム・イントネーションの習得
英語には特有の「音楽」のような側面があります。単語ごとの強弱(ストレス)、文全体の抑揚(イントネーション)、適切な間の取り方(ポーズ)などを、お手本をそのままコピーすることで、身体で覚えることができます。これにより、ロボットのような話し方から脱却し、よりネイティブらしい自然な響きの英語になります。
流暢さ(Fluency)の向上
意味や文法を考えながら話すのではなく、聞こえてくる音を即座に繰り返す練習は、口の筋肉を滑らかに動かす訓練になります。これにより、ためらいや言い淀みが減り、スムーズに言葉が出てくるようになります。
効果3:語彙力・表現力向上
シャドーイングは、単語やフレーズを「生きた文脈」の中で繰り返し聞くことになるため、語彙力や表現力の向上にもつながります。
- コロケーション(自然な語の組み合わせ)の習得
- チャンク(意味の塊)の定着
- 暗黙的な文法理解
コロケーション(自然な語の組み合わせ)の習得
どの単語とどの単語が一緒に使われやすいか(例:”make a mistake”, “take a picture”)を、実際の使われ方を通して自然に学べます。
チャンク(意味の塊)の定着
よく使われるフレーズや文のパターン(例:”Could you tell me…?”, “It’s important to…”)を、そのままの形で何度も口にすることで、記憶に定着しやすくなります。
暗黙的な文法理解
文法ルールを意識的に学ばなくても、自然な英文を繰り返し聞いたり口にしたりする中で、「こういう場面ではこういう言い方をするんだな」という感覚が養われます。
シャドーイングは単語学習にも効果的
単語帳で覚えるだけでは、実際にどう使われるのかが分かりにくいことがあります。シャドーイングでは、「耳で聞き(聴覚)」「口で言い(運動感覚)」「文脈の中で理解する(意味理解)」という複数の感覚を同時に使うため、単語やフレーズがより深く記憶に刻まれ、実際に使える語彙として定着しやすくなるのです。
シャドーイングの正しいやり方【5ステップ】
シャドーイングの効果を最大限に引き出すためには、正しい手順で実践することが重要です。
ここでは、初心者の方でも無理なく始められるシャドーイングの基本的な5つのステップをご紹介します。
- 教材を選ぶ
- まずは内容を理解する
- 準備練習(オーバーラッピングなど)
- シャドーイング実践
- 録音して確認・改善
ステップを1つずつ丁寧に見ていきましょう。
ステップ1:教材を選ぶ

教材選びは非常に重要です。以下のポイントを参考に、自分に合ったものを選びましょう。
- 興味を持てる内容か
- レベルが合っているか
- 音声がクリアか
- スクリプト(台本)があるか
- 適切な長さか
興味を持てる内容か
学習を継続するためには、内容自体が面白い、あるいは自分の関心に近いものであることが大切です。
レベルが合っているか
シャドーイングを始める前に、スクリプト(台本)を読んでみて、内容の80〜95%程度を理解できるものが理想です。
難しすぎると挫折の原因になり、簡単すぎると効果が薄れます。「少し難しいけど、内容は理解できる」レベルを目指しましょう。
音声がクリアか
発音を正確に聞き取るためには、雑音などが少なく、話者の声がはっきりと聞こえる質の高い音声を選びましょう。
スクリプト(台本)があるか
音声だけがあれば良いというわけではありません。
後で内容を確認したり、聞き取れなかった部分をチェックしたりするために、スクリプトは必須です。音声とスクリプトセットで、初めて効果的なシャドーイングができることを覚えておきましょう。
適切なスピード・長さかどうか
最初は30秒〜1分程度の短い音声から始めるのが効果的とされています。
スピードやスクリプトの長さで音声の秒数は決まるので、最適なものから始めていきましょう。慣れてきたら徐々に長くしていくのがおすすめです。
教材選びの背景にある考え方として、言語習得における「理解可能なインプット+1」という原則があります。これは、自分の現在のレベルよりも少しだけ難しい「+1インプット」に触れることで、最も効果的に言語が習得されるというものです。シャドーイング教材を選ぶ際、内容がほぼ理解できる状態であれば、学習者は意味の解読に認知リソースを割く必要がなく、音の認識や発声といった「形式」に集中できます。これがシャドーイングの主な目的と合致するため、適切なレベル選びが効果を左右するのです。
ステップ2:まずは内容を理解する

シャドーイングを始める前に、必ず教材の内容をしっかり理解しておきましょう。
- スクリプトを読み、知らない単語や表現があれば意味を調べます。
- スクリプトを見ながら、または見ないで、音声を1〜2回通して聞きます。
- 話されている内容、話の流れ、全体的な発音やイントネーションの雰囲気をつかみます。
内容を理解せずにシャドーイングをしようとすると、音を真似ることに集中できず、効果が半減してしまいます。
このステップを踏むことで、脳は意味の処理から解放され、音声の模倣という本来のタスクに集中できるようになります。
事前に内容を知っていると、次にどんな言葉が来るか予測しやすくなり、同時処理の負荷が軽減され、シャドーイング自体がよりスムーズに行えるようになります。
ステップ3:準備練習(オーバーラッピングなど)

次に、音声を聞きながら、スクリプトを目で追ってみましょう。
この段階では、以下のいずれかの方法を試すのがおすすめです。
- 目で追うだけ
- マンブリング(小声で発声)
- サイレントシャドーイング(口パク)
- オーバーラッピング(音声と同時に発声)
オーバーラッピング
オーバーラッピングとは、スクリプトを見ながら、音声と完全に同時に発声する音読手法です。
シャドーイングより負荷が低く、本格的なシャドーイングへの橋渡しとして効果的です。
なぜなら、スクリプトという視覚的な補助があるため、完全なシャドーイングよりも認知的な負荷が低いためです。また、小声や口パク、オーバーラッピングで練習することで、発声のタイミングや口の動き、リズム感に慣れることができます。
特に初心者の方や、いきなり声に出すのが難しいと感じる方におすすめの準備段階です。
ステップ4:シャドーイング実践

ここがシャドーイングの核となるステップです。
- 音声を聞き、その0.5秒〜2秒ほど後を追いかけるようにして、声に出して真似します。
- 発音、リズム、イントネーション、スピードなど、できるだけ忠実にコピーすることを意識します。
- 最初はスクリプトを見ながらでも構いませんが、慣れてきたら徐々にスクリプトを見ない時間を増やしていきましょう。完全に何も見ずに音声だけを頼りにできるのが理想です。
まずは話し切ることを目標に
このステップで重要なのは、完璧を目指しすぎないことです。最初はうまく言えない単語や聞き取れない部分があっても、流れを止めずに、できるだけ音声についていくことを優先しましょう。
頻繁に止めると、連続した音声を処理する練習になりません。多少つっかえても、すぐに次の音に意識を切り替えて追いかけ続けることが、リスニングの処理速度やスピーキングの流暢さを鍛える上で大切です。遅れすぎると単なるリピーティングになってしまうため、「ほぼ同時」を意識して、音声の流れに乗り続ける練習をしましょう。
ステップ5:録音して確認・改善

シャドーイングの効果を確実に高めるために、自分のシャドーイングを録音し、客観的に確認することを強くおすすめします。
- スマートフォンなどを使い、自分のシャドーイングを録音します。
- 録音した自分の声と、お手本の音声を交互に聞き比べます。
- スクリプトも見ながら、どこがうまくできていないか(発音、リズム、イントネーションなど)を具体的に特定します。
- 課題が見つかったら、その部分を意識して再度シャドーイング練習を行います。
成長の種は常に分析から見つかり、修正で花を咲かせる
私たちは話している最中、自分の声を正確に認識できていないことが多いです。なぜなら骨伝導や発話への集中により、客観的な聞き取りが難しくなっているためです。録音は、自分の発話の「現実」を客観的に捉えるための強力なツールです。お手本と比較することで、「ここの’th’の発音が違うな」「イントネーションが平坦すぎるな」といった具体的な課題を発見できます。
この「練習→録音→分析→修正→再練習」というフィードバックループを回すことが、スキルを効率的に向上させるための鍵となります。自分の弱点を特定し、的を絞って改善していくことで、より速い成長が期待できます。
【まとめ】シャドーイング5ステップ
ステップ | やること | ポイント |
1. 教材選び | 興味・レベル・音質・スクリプト有無・長さで選ぶ | 無理なく続けられるもの |
2. 内容理解 | スクリプト確認、事前リスニング | 意味を完全に把握する |
3. 準備練習 | オーバーラッピング/マンブリング/サイレントシャドーイング | 音と文字を結びつけ、リズムに慣れる |
4. シャドーイング実践 | 音声のすぐ後を追いかけて発声(スクリプトは徐々に見ない) | 発音・リズム・イントネーションを真似る |
5. 録音・確認・改善 | 自分のシャドーイングを録音して聞き返す | ネイティブ音声と比較し課題発見 |
シャドーイング効果を高めるコツと注意点
シャドーイングの基本的なやり方を理解したら、次は効果をさらに高めるためのコツと、学習者が陥りやすい注意点、そして継続するためのヒントを見ていきましょう。
基本的なステップに加えて、以下の点を意識すると、シャドーイングの効果をより一層高めることができます。
- 「音」全体を捉える意識を持つ
- 様々な教材に挑戦する
- 短時間でも毎日続ける
1. 「音」全体を捉える意識を持つ
個々の単語の発音だけでなく、文章全体の流れ、リズム、抑揚(イントネーション)、強弱(ストレス)、単語のつながりといった「音楽的要素」を積極的に真似しましょう。
手でリズムを取ったり、話者の感情を想像しながら真似したりするのも効果的です。ネイティブスピーカーは、個々の音だけでなく、こうした「超分節的特徴(suprasegmentals)」を頼りにコミュニケーションを取っています。ここに焦点を当てることで、より自然で流暢な英語に近づくことができます。
2. 様々な教材に挑戦する
一つの教材や話者に慣れてきたら、異なる話者(性別、年齢、アクセント)、異なるトピック、異なるスピードの音声にも挑戦してみましょう。
これにより、様々な状況に対応できる、より汎用性の高いリスニング力とスピーキング力が養われます。特定のスタイルに「耳が慣れすぎる」ことを防ぎ、より幅広い英語に対応できるようになります。
3. 短時間でも毎日続ける
1日に10分〜15分でも良いので、できるだけ毎日続けることが重要です。
長時間まとめて行うよりも、短時間でも継続的に行う方が、学習内容が定着しやすく、効果が高いと言われています。言語学習は、筋肉トレーニングのように、定期的な刺激によって神経回路が強化されます。毎日の習慣に組み込むことを目指しましょう。
陥りやすい失敗と対策
シャドーイングは効果的な学習法ですが、やり方を間違えたり、誤解があったりすると、挫折につながることもあります。
よくある失敗例とその対策を知っておきましょう。
- 失敗1:教材が難しすぎる
- 失敗2:最初から完璧を求めすぎる
- 失敗3:録音・確認を怠る
- 失敗4:効果が感じられず、すぐ諦めてしまう
- 失敗5:ただの「音マネ」になっている
- 失敗6:スクリプトを見すぎている
失敗1:教材が難しすぎる
対策:背伸びせず、内容の8〜9割以上が理解できる教材から始めましょう。難しすぎると感じたら、ためらわずに易しい教材に変更することが大切です。
失敗2:最初から完璧を求めすぎる
対策:シャドーイングは最初から完璧にできるものではありません。
まずは音声の流れについていくこと、リズムやイントネーションを大まかに捉えることを目標にしましょう。細かい発音は、徐々に改善していけばOKです。間違いを恐れず、止めずに続ける勇気を持ちましょう。
失敗3:録音・確認を怠る
対策:自分の発音の癖や弱点は、客観的に聞かないと気づきにくいものです。
録音・確認は「最も効率的な改善プロセス」だと捉え、面倒くさがらずに取り入れましょう。スマホのボイスメモ機能などで手軽に始められます。
失敗4:効果が感じられず、すぐ諦めてしまう
対策:シャドーイングの効果は、すぐには現れないこともあります。
言語学習には時間がかかることを理解し、現実的な期待値を持つことが重要です。小さな進歩(例:前より少し聞き取れるようになった、少しスムーズに言えるようになった)を見つけて自分を褒め、プロセス自体を楽しむようにしましょう。なぜ英語を上達させたいのか、最初の目的を思い出すことも助けになります。
失敗5:ただの「音マネ」になっている
対策:聞こえた音を意味も考えずにただ繰り返すだけでは、リスニング力向上にはつながりにくいです。
単語やフレーズの意味を意識しながらシャドーイングを行いましょう。スクリプトを事前にしっかり読んで内容を理解しておくことが重要です。
失敗6:スクリプトを見すぎている
対策:スクリプトを見ながらのシャドーイングは、視覚情報に頼ってしまい、耳を鍛える効果が薄れます。
慣れてきたら、できるだけスクリプトを見ずに、耳からの情報だけで行う練習を増やしましょう。
継続することが継続の鍵
おかしなことを言っているかもしれませんが、これはある意味本当です。
シャドーイングに限らず多くの場合、失敗や挫折は学習プロセスへの誤解や非現実的な期待から生じます。シャドーイングは魔法ではありませんが、正しい方法で継続すれば、着実に効果が現れるトレーニングです。つまり、継続すれば効果は出る、効果が出れば楽しくて継続しようとする。
継続の道は継続から始まります。
継続けるためのヒント
精神論のようなことを書くだけは不十分だと思うので、シャドーイングを習慣化し、長く続けるためのヒントをいくつかご紹介します。
- 具体的で達成可能な目標を設定する
- 練習時間をスケジュールに組み込む
- 進捗を記録する
- 楽しめる教材を選ぶ
- 学習仲間を見つける(任意)
- 「なぜ」を思い出す
- 第三者のフィードバックを得る
習慣の仕組みを作ろう
意志の力だけに頼るのではなく、習慣化の仕組みを作ることが長期継続の秘訣です。練習のきっかけ(時間や場所)、ルーティン(シャドーイング実践)、そして報酬(達成感、記録による可視化、内容の面白さ)を意識的に設計することで、無理なく続けることができます。
シャドーイングの効果が出るまでの期間
「シャドーイングを始めたけど、いつになったら効果が出るんだろう?」と不安に思う方もいるかもしれません。
効果を実感できるまでの期間は、元の英語力、練習量、集中度、教材の適切さなどによって個人差が大きいですが、一般的な目安となる期間と、その時期に期待できる効果のイメージをご紹介します。
最初の1ヶ月:シャドーイングに慣れる時期
最初の1ヶ月はまずは「続けること」を目標にして取り組みましょう。そうすれば次のような変化が出てきます。
主な変化 | シャドーイングという行為自体に慣れ始めます。最初は口が回らなかったり、音声についていけなかったりしますが、徐々にスムーズさが増してきます。 |
効果の実感 | 人によっては、この段階で「少し聞き取りやすくなったかも?」「前より口が動くようになった」といった 小さな変化を感じ始める ことがあります。しかし、まだ大きな効果を実感できない場合も多いです。 |
ポイント | 完璧を目指さず、毎日短時間でも継続することを最優先しましょう。正しいやり方を意識し、練習を習慣化することが重要です。 |
3ヶ月頃:効果が見え始める時期
3ヶ月目になると明確に変化が出てきます。
具体的には「聞き取れる音が増えた」「口の筋肉が英語に慣れてきた」など、身体にも変化が現れます。
主な変化 | 英語の音(特に音声変化やリズム)に対する認識が向上し、以前より聞き取れる音が増えてきます。発音やイントネーションも、お手本に近づいてくるのを感じられるでしょう。 |
効果の実感 | 多くの人が、この時期に シャドーイングの効果を明確に感じ始める と言われています。TOEICのリスニングスコアが上がったり、簡単な会話なら以前よりスムーズに聞き取れたりする体験をするかもしれません。 |
ポイント | 録音して自分の声を確認し、課題点を意識した練習を続けることで、さらに効果を高められます。モチベーションを維持し、学習を継続しましょう。 |
半年〜1年以降:定着と応用力の向上
主な変化 | リスニング力が安定し、様々なスピードやアクセントの英語に対応できるようになります。スピーキングにおいても、より自然なリズムとイントネーションが身につき、流暢さが増してきます。シャドーイングで繰り返し触れた語彙やフレーズが、実際の会話で 無意識に出てくる ことも期待できます。 |
効果の実感 | 「読んで分かるレベル」と「聞いて分かるレベル」の差が小さくなり、英語でのコミュニケーションに自信が持てるようになります。映画やドラマ、ニュースなど、より幅広い英語コンテンツを楽しめる ようになるでしょう。 |
ポイント | より難しい教材に挑戦したり、シャドーイングだけでなく、実際の英会話練習(アウトプット)の機会を増やしたりすることで、総合的な英語力をさらに伸ばすことができます。 |
シャドーイング学習におすすめのアプリ
ここまでシャドーイングの定義、効果、種類、具体的なやり方、効果が出るまでの期間、そして継続のコツについて解説してきました。
シャドーイングは、基本的には音声とスクリプトがあれば、どんな教材でも実践可能です。
しかし、より効率的に、そして快適にシャドーイング学習を進めるためには、専用のツールやアプリを活用するのが非常におすすめです。
シャドーイングツール・アプリのメリット例
- 音声操作機能が充実している
- スクリプト連動機能
- 録音・比較機能
- 豊富な教材ライブラリ
- 進捗管理機能
そのうち、特に大事な3つを解説します。
音声操作機能が充実している
この機能は必須としてアプリを選びましょう。
聞き取れなかった箇所を簡単にリピート再生したり、再生速度を調整したりできる機能があると、練習が格段にはかどります。
スクリプト連動機能
音声に対応するスクリプトが用意されていることも必須条件です。
更には、音声の再生箇所に合わせてスクリプトが自動でハイライトされる機能があれば、どこを読んでいるか見失うことなく、スムーズに練習できます。
録音・比較機能
改善ポイントは、自分の声を簡単に録音し、お手本音声と比較から見つかります。
自分で音声を聞いてお手本との違いを見つけるのが大変な場合は、AIによる発音評価機能を持つアプリを使うと良いでしょう。
シャドーイングおすすめアプリ紹介
シャドーイングにおすすめのアプリを厳選して紹介する記事をご用意しました!
それぞれのアプリの特徴や選び方のポイントを詳しく解説していますので、ぜひチェックしてみてください。
→【無料あり】おすすめ人気シャドーイングアプリと効率的な学習法
まとめ:シャドーイングで効果的に英語力を鍛えよう
この記事では、英語学習法「シャドーイング」について、その定義から驚きの効果、具体的なやり方、種類、効果が出るまでの期間、そして成功のためのコツや注意点まで、幅広く解説してきました。
この記事のポイント
- シャドーイングはリスニング力とスピーキング力を同時に鍛える効果的な学習法。
- 「音声知覚の自動化」により、脳のリスニング処理能力を高める。
- 正しいやり方(教材選び、内容理解、段階的練習、録音確認)が重要。
- 効果実感には個人差があるが、3ヶ月程度の継続が目安。
- 毎日短時間でも継続することが成功の鍵。
- 目的(音重視か内容重視か)によってシャドーイングの種類を意識する。
- 専用アプリの活用で、学習効率とモチベーションを高められる。
シャドーイングは、決して楽なトレーニングではありませんが、正しい方法で継続すれば、必ず英語力を次のレベルへと引き上げてくれます。最初は難しく感じても、諦めずにコツコツと取り組むことが大切です。

そして、シャドーイング学習をより効果的に、そして楽しく進めるためには、自分に合ったツールを見つけることが近道です。
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